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第六十四話 白虎

はい、続きをどうぞ!



 四神の名を持っている生き物を模った眷属達が四体。眷属融合に成功したヨハンは満足した顔で命令を下す。


「さぁ、塔へ近付かせずに人間達を消しなさい」


 命令を受理した眷属達は咆哮を上げ、塔の周りを固めていた。その咆哮だけでAランクの実力を持っている兵士達であっても恐怖を浮かべてしまう。それだけの魔力を放っていると感じているのだ。その様子を確認したヨハンは眷属達に後を任せて、姿を消していた。


『ッ、待て――――』

「ガァァァァァ――――!!」


 四体の内、白虎が前に出て硬直していた兵士達を蹂躙していく。鋭く尖った爪を伸ばして、臓腑を撒き散らしながら突き進んでいく。

 ただの兵士達では相手にならないと指揮者達は判断して、聖騎士と勇者を前線へ出した。


「舐めるな―――――ごふっ!?」


 力に自身がある聖騎士、豪腕にて爪をはじき返そうと剣を合わせるが――――剣がボキッと折れて胸を貫かれてしまう。


「馬鹿が! 真正面から爪を受け止めるな!! 側面から攻撃を加えろ!!」

「『炎獄』」「貫け! 『空撃突』!!」「『発圧拳』!!」「まず、動きを! 『蔓拘』!」――――


 様々な勇者が側面から攻撃を放っていたが、白虎は思考を持っていなくても本能で危険を察知して上へ逃げていた。標的が消えたことにより、勇者達の攻撃は味方同士で相殺してしまう。


「竜騎士!! 空は動けない筈だ! やれぇぇぇぇぇ!!」


 空に逃げたのは間違いだったと言うように、瞬時で空に待機していた竜騎士へ指示を出していた。見た目から飛べるようには見えない白虎へ攻撃を加えるチャンスだったように見えるが、突然に白虎が自分自身を回転し始めたのだ。


『っ!? 離れろぉぉぉぉぉ!!』

「なっ!?」


 気づいたのはガロだけで、注意を呼びかけるが遅かった。回転し始めた白虎は手足の爪から斬撃を飛ばし始めた。回転していることで、全方向へ斬撃が乱れ撃ちとなって、近くにいた竜騎士達を斬り裂いていく。


「接近戦は駄目だ! 魔法で!!」

「お、おぅ! 魔法を使える者は白虎を狙え!!」


 ガロから離れたリントが指揮者のオーラス殿下の元まで行き、接近戦は危険だと警告していた。『超幸運』のスキルで、白虎は接近戦が得意だと教えてくれていた。わざわざ接近戦という得意なステージでやらせることはないとの判断だ。

 魔法で撃ち込めば、まだ空中にいた白虎は斬撃から外れた魔法を避けることも出来ず、喰らっていた。


「っ、威力が弱い!!」

「もっと強い魔法を撃ちだすんだ!!」


 魔法は身体から漏れ出る魔力によって、防がれていた。漏れ出る魔力を貫くような威力ではないと、ダメージを与えられない。ここで出し惜しみをしている場合ではないと強い魔法を使える勇者達に通達していた。

 強い魔法を構築している間に、白虎は地面へ下りてしまい、疾風のように駆け抜ける。


「うぎゃあっ!!」「は、はやい!!」「痛い、痛いよ」「助けてくれ!!」


 主に被害が大きかったのは、最初から前線へ出ていた兵士達だった。白虎は奥にいる指揮者や勇者達をすぐ狙わずに兵士達を狙っていた。


「数を減らすつもりか!?」

『リント! ここはワシらが出るぞ!!』


 リントも塔へ突入する要員に入っていたが、この強さでは兵士や聖騎士達では相手にならない。下手な勇者を出すよりは戦闘の経験が厚いガロと特殊なスキルを持つリントが出た方がいいと判断した。だが、それを止める者がいた。その人は『放浪の勇者』、ユアンだった。


「ここは私が出よう」

「待って、その刀は接近戦で戦うタイプだろ!? 白虎相手に接近戦は危険だ!!」

「問題は無い。お主こそ、温存しておけ」


 ここはリントとガロではなく、自分が出ると言い放つユアン。本来ならユアンも塔への突入する勇者だが、あの白虎は放っておけないと考えた。


「ここで消耗させるには……」

「いえ、ここは私が出るべきです」


 オーラス殿下も渋っていたが、他にいい相手がいなかったのもあり、ユアンに任せる事にしたようだ。


「白い虎よ、私が相手をしよう」

「ガロォォォォォ!!」


 出てきたユアンに何を感じたのか、狩っていた兵士達を無視して、一直線に走り出していた。爪を伸ばしてユアンの胸を貫こうとしていたが、ユアンは僅か動くだけで、紙一重に避けていた。更に、刀も鞘に収めたまま。


「一之太刀、『両断ロウ』」

「ガァッ!?」


 白虎はその太刀に危険を感じ、身体を横へずらしていた。その判断は正解だったようで、爪を伸ばしていた方の前足が二本の線を残して切られていた。もし、横へずらしていなかったら、前足と頭を斬られていた軌道にいたのだ。

 ユアンはたった一撃だけ、刀を抜いて振っただけなのに、二撃の跡を残していた。それに射距離も長く、威力も段違いだった。勇者達が放った魔法を軽々と防いでいた魔力の鎧も効き目は全く無かった。


「獣の勘ですか? これで終わらせるつもりでしたが……」


 ユアンはこの一撃だけで終わらせるつもりだったのだ。本来の敵である魔王との戦いに備えて、力を蓄えていたかったが、そう簡単に倒れてはくれないようだ。

 白虎もさっきまでの敵とは違うとわかり、さっきのように一直線へ向かうことはしない。眷属は思考をしないで本能のままに動くが、学ばないとは言っていない。斬られた前足は尻尾から補充して回復していた。


「回復は上限があるのですね」


 眷属は元から回復の手段が一つしかない。幽腐鬼のように無限に回復し続けることは出来ず、動くのに必要な部位を破壊されたら、今のように尻尾など重要ではない部位から補充して直すのだ。




「それなら、何回か当てれば動けなくはなるのでしょう」




 周りから見た人達にしたら、ユアンの方が圧倒的だとわかり喜ぶのが多数だったが、まだ敵は白虎だけではなく、あと三体も残っている。それに、兵士達は白虎が暴れたせいで大分減っていたので、融合されていない幽腐鬼の相手をするのが大変になってきている。

 このままでいいのか、悩むオーラス殿下だったが、残りの三体も相応の実力を持つ勇者達を投入しないとこの戦争はこっちが負けると考えていた。

 この戦争はまだ始まったばかりなのだから――――







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