第五十九話 アリスの本気
はい、続きをどうぞ!
アリスは『激狂発作』を発動した。身体能力や魔力量が100倍も上がり、理性が無くなるスキルだが、王者能力『完全無欠』が同時に発動することで、理性を無くす事はなくなった。
暴力的な魔力の増大にベルゼートはさっきまでのアリスとは違うとすぐわかった。危険だと本能が訴えており、すぐ殺さなければならないと、今までより数が増大した鎌を生み出していた。
『さっさと倒れろ!!』
「無駄だ」
アリスはベルゼートが動き出した瞬間に、魔王爪を見えないスピードで動かしていた。ベルゼートは爪が消えたと思えば、一瞬で全ての鎌が細切れになって、落ちていくのを理解するだけが限界だった。
『な、何が――――』
「呆けている暇は無いと思うが?」
その言葉を聞いた時は既にベルゼートはアリスに殴られており、頬を減り込まされていた。ベルゼートはクリスチャス王子の影と繋がっており、この場から吹き飛ばされることはなかった。王座に座っていたクリスチャス王子もアリスの変化とベルゼートがやられていることに眼を大きく見開いていた。
「べ、ベルゼート!? 遊んでいないで、やれよ!!」
「うるさい」
「ごばぁっ!?」
うるさいので、腹へ死なない程度に弱めた手加減の拳を減り込ましていた。アリスの力なら、デコピンをしただけでも人間の身体は弾けることもできるが、出来るだけ苦しませてから殺したいので、手加減をしていた。
殴られたクリスチャス王子は訳がわからないと呆然としていた。ベルゼートがまだ健在なのに、その攻撃が自分に通ったことが不思議で仕方が無いのだろう。
『っ! まさか、力付くで空間を突破するなんて、聞いたことがありませんよ!?』
「特別なスキルはいらなかったな。これぐらいの魔力量があれば、突破するのは難しくはなかった」
『化物が……』
悪魔王であるベルゼートの魔力量は大天使に劣らず、普通の魔王の数十倍もあるのに、アリスはそれさえも超えてきた。そんな存在は今まで生きてきて、同じ悪魔王以外では見た事はなかった。
『私の全てを賭けて、貴方を消して見せる!! 『影宗鎌』!!』
先程の鎌とは違い、更に小さくて強固に出来た鎌が膨大な数で現れた。さっきのように切り落とされないようにと考えてのことだろう。アリスの周囲に展開し、ベルゼートの全てを込めた切り札を発動した。
『『影世界』!!』
膨大な数に脚を止めたアリスを影の世界に引き込むように、脚が沈んでいく。少しでも沈んでしまえば、逃れる事は不可能。そのまま、生き物が生きられない影の世界へ引きずり込むだけだ。
アリスは抵抗することもなく、そのまま影の世界へ沈んでいった――――
「ふ、ふははは!! ベルゼート、よくやった!! 舐めた口で言ってくれやがって!!」
『はぁ、はぁはぁ……』
ベルゼートは今まで使ったことが無い程の膨大な魔力量を使ってでも、アリスを引きずり込む必要があったから、とても疲れていた。でも、引きずり込めた感覚はあったので、こっちが勝ったのは確信していた――――――――のだったが……
「残念でした」
『な、なんで――――なんでだぁぁぁぁぁ――――!?』
アリスはベルゼートの後ろに立っていた。その叫びを最後に、ベルゼートは魔王爪により、一瞬で細切れになった。同時に、クリスチャス王子が持っていた契約した証だったペンダントも壊れた。
それは、ベルゼートがやられて契約を破棄されたのと同様で、もうクリスチャス王子はベルゼートを魔界から呼び出すことが出来なくなった。
「なんでだよ、影の世界に消えたんじゃなかったのか!?」
「簡単なことだ。身代りを使っただけだ」
ベルゼートが引きずり込めた感覚を掴めたのは本当のことだ。それは実体が残っている偽者だったから、すぐ身代りだと見抜けなかったのだ。
「べ、ベルゼート! ベルゼート! ――――くそ!」
「ようやくだな。復讐をさせて貰おう」
「う、うぅぅぅあああぁぁぁぁぁ――――!!!!」
クリスチャス王子は恐怖、痛みから逃げる為に、自分で『狂信者』を自分に掛けた。これで、狂ったことで恐怖と痛みから逃れる事が出来ると思うクリスチャス王子だったが――――
「そう逃がすと思っているのか?」
「はぇ、うえ!? な、なんで、だ!?」
「お前を正気に戻しただけだ」
『完全無欠』は希少スキル立ったころと違い、相手にも適用することも出来たようで、狂気状態になっていたクリスチャス王子を正気に戻したのだ。苦しんで死んでもらいたいのだから、狂気で逃げられては困る。
「さぁ、始めようか」
「うあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――!!」
ここからはクリスチャス王子の処刑が始まった。すぐ殺さずに、身体の骨を半分壊して、手足の爪を全て剥がしたり、歯も全て抜いた。それでも終わらず、地獄のような痛みを延々と与え続けた。
その時間は一時間以上も掛かったのだった――――
「長いなぁ」
「復讐相手だと聞いていますので、拷問でもしているのでしょう」
「あっ、ベランダを見て!!」
「ようやく終わったか」
外で待っていたバトラ達はベルゼートの魔力が消えたことから、アリスが勝ったのは知っていたが、拷問をしていたせいで待ち惚けを食らっていた。ようやく終わったようで、アリスがベランダに現れてきた。――――クリスチャス王子の首を持って。
「クリスチャス王子の首は、この魔王アリスが頂いたぞ!!」
街にいる人間は生きている者がおらず、勇者も王子も消えて――――アリス達の勝利となった。
ついに、復讐を達しました。
これからはどう動くのか、注目になります!




