第五十五話 三人の勇者
ようやく親戚の挨拶回りが終わった……。
続きをどうぞー。
王城前に立っていたのは、三人の勇者。一人が魔術師、二人が聖騎士の姿をしていたが、容姿はヨハンから聞いているので、すぐ勇者だとわかった。
「何故に、クリスチャス王子様を狙う?」
「はん、雑魚に教えることはない。俺は先に行くから、お前達が片付けろ」
「了解しました」
「おう、行ってくると良い」
「任せて下さい!!」
アリスはそう言って、数十の眷属を生み出した。眷属を盾にして王城へ真っ直ぐ向かおうとする。
「なっ! 行かせると思うな!!」
「この私が切り伏せ――――」
「おっと、お前の相手は私がしよう」
「それじゃ、私は男の騎士の方かな」
眷属に紛れて走っていたのはアリスだけではなく、バトラとマキナが眷属の中から現れて、聖騎士の姿をした男女の勇者を相手にする。
「『火炎龍陣』!」
眷属が現れた場所をまとめて、焼き尽くそうとする魔術師の勇者だったが、炎のひと吹きさえも出なかった。
「おっと、貴方の相手は私がしましょう。ヨハンと言いますが、貴方は?」
「貴様、魔法を無理矢理にキャンセルさせるなんて、普通の魔人じゃないな……?」
ヨハンは一瞬の間で他人の魔法に介入して、発動できないように弄っていたのだ。
「普通ではないのはそうでしょうね――――で、貴方の名は?」
「くっ、魔王を行かせてしまったか……仕方がない、片付けた後に向かいましょう。私はユウゴと言う。召喚されてから、もう四十年は経っているから、ただの魔人程度では相手にはならんぞ?」
「そうですか! なら、私が相手にするのは間違ってはいませんでしたね!!」
「それ程の自信があるのだな。なら、その自信を持ったまま、消え去るがいい」
アリスは眷属をどんどんと生み出しながら、王城の中へ無理矢理に入り込んでいる。まだ兵士が残っていたが、眷属の相手にはならず、余裕を持って王の間と呼ばれる部屋に向かえている。そこに濃い魂を持った存在がいるのはわかっていたからだ。おそらくだが、そいつがクリスチャス王子だと検討は付いた。
(しかし、思ったより、濃いな? さっきの勇者より強いってことか??)
魂の濃さ=強さの基準であり、さっきの三人の勇者よりもとても濃いのが見えている。つまり、十歳程度の子供にしては強過ぎるのだ。そいつが勇者であってもだ。
(そう簡単に殺して貰える様な相手じゃないってわけか。――――いいじゃないか、簡単に死んで貰っては困るからな。出来るだけ苦しんで死ぬように殺したいからな―――――!!)
相手が強くても問題はなかった。俺が絶対に勝って殺すのは自分の中では決めていた事だ。それを実行するだけの力は充分あると自信を持っていたからだ。何も出来なかったあの時と違うのだから――――
「ここだな。ようやく、殺せる。クリスチャス王子ぃぃぃよぉぉぉぉぉ!?」
馬鹿でかい扉を蹴破り、王座に座っている人物がクリスチャス王子だとすぐわかった。いつまでも忘れることが出来ない憎い敵がそこにいることに歓喜を浮かべて叫ぶアリス。それに対して、クリスチャス王子は傲慢な態度で敵が現れたことに動揺もなく、悪どい笑みを浮かべて座っていた。
アリスが王の間に着いた頃、バトラ達は――――
「くっ、やっぱり、勇者は強いな」
「見ない種族ですわね。私の一撃を見切ることが出来たのは久しぶりですね。貴方の名前を聞かせて貰ってもいいかしら?」
「……魔森鬼のバトラだ」
「初めて聞く種族でしたね。私はリエミよ」
バトラはリエミと名乗る勇者と相対していたが、少し戦っただけでも実力の差は読み取れていた。確実にあっちの方が強いと。
「はぁ、逃げ出したい気分だけど、アリスのやることには手伝いをしたいとも思っているんだよな……」
「残念ですが、これ以上の敵を中へ向かわせるにはいきませんので――――ここで死んでください」
リエミは自分の身長より長い槍を持って、バトラに向ける。バトラも覚悟を決め、自分で生み出した魔剣を構える――――
「ずるい!!」
「何処がずるいのですか。貴方が光のスキルを使えることに、運が無かっただけです」
マキナは『光臨者』で生み出した光線を勇者に向けたが、さっきと同様に剣を前に差し出されると、光線が剣へ吸収されてしまう。
「光を吸収する魔剣なんて、そんなのアリなの――!?」
「魔剣ではなく、聖剣と言ってください。さて、話す前に戦う事になってしまったが、ここら辺で自己紹介をしてみませんか?」
「敵の名前を聞いて、意味はあるの―? どうぜ、君は死ぬんだから!!」
「やれやれ、まだ子供だな。礼儀ぐらいは学びたまえよ? 俺の名はエイジと言う」
「むー、マキナよ! 冥土の土産になるといい!!」
マキナは光が効かないのなら、もう一つの希少スキルを使えばいいとゴーレムを生み出した。
「ほう、希少スキルだろうか? 二つも持っているのは凄いことだが――――」
エイジと名乗った勇者は、さっきの光線を自分のエネルギーとして、剣へ纏わせて一線すると、マキナが生み出した一体のゴーレムはあっさりと真っ二つになった。
「あぁっ!?」
「マキナと言ったか? 戦闘の経験がまだまだ浅いな?」
「それでも、アリス様のために勝つの!!」
マキナは諦めることはせずに、次の手を考えて、目の前にいる勇者を倒そうとするのだった。
このように、バトラとマキナの戦いは苦戦するのだったが、ヨハンの戦闘が全体の戦場へ影響を与えることになるのは、この数分後のことだった――――
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