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第四十九話 アリスvsアルベルト

はい、続きをどうぞ!




「ここで魔王の種を潰す! 『正義者ヒーロー』!!」




 アルベルトが一つのスキルを発動した。眩しい光がアルベルトを包み込んでいく。その様子を見ているアリスはヨハンとの話を思い出していた。

ヨハンはアリスに魔王の資格があるか、条件を出している。その時に色々と教えてくれた。一つだけ予想してなかったことが起こったが――――









「勇者王の子孫、アルベルトは勇者王カズトが使っていた希少スキルを多数も使える。継承するスキルだったのか、どの子孫も必ず一つ以上の希少スキルを受け継いでいた。だが、アルベルトだけは希少スキルの全てを受け継いでいた」

「な、勇者王の希少スキルを全部!?」


 ヨハンは勇者王のことを調べており、その子孫のこともよく知っていた。バトラは勇者王カズトのことを知っていたのか、希少スキルを全て受け継いでいることに驚いていた。

ナガレはそのことを知っていたのか、驚きはない。だが、その表情は怒りが浮かんでいた。


「ヨハン、貴様はミディ様の言葉に逆らうつもりか!? よりによっても、あの勇者王の子孫を狙うとは!」

「?」


 アリスはどうしてナガレが怒るのか、わからなかった。魔人や魔王は勇者を敵としているのが常識ではなかったのかと疑問を浮かべていた。


「あぁ、逆らう処か、私は魔王ミディの配下ではありませんので関係はないのでは?」

「なっ、ミディ様はおっしゃったのだろう! 無闇に勇者や人間の街を襲って、無駄な諍いを起こすなと!!」

「やれやれ、しばらくは大人しくして下さい。今、貴方を殺すと少々面倒なので」


 ナガレはヨハンから殺気を感じ取ったのか、すぐ転移を発動しようとした。だが、転移は発動せずにナガレは倒れてしまった。


「な、何が―――」

「転移は妨害させて頂きました。魔王ではない、貴方には防げないでしょう?」

「み、ミディさ、ま……」


 その言葉を最後に、ナガレは動かなくなった。アリス達は殺したのかとヨハンを警戒したが、ヨハンはこっちに敵意や殺気を向けなかった。


「すいませんね。魔王ミディと敵対はしていませんが、少々不愉快な約束を勝手にさせられてしまってね」

「人間や勇者と戦うなと?」

「ええ、だからナガレは勇者と戦わせようとしていたことに怒っていたのです。邪魔をされると面倒なので、しばらくは仮死状態になって貰いました」

「一瞬で仮死状態にね……あの紙で?」


 アリスが目に付いたのは、ナガレの足に鶴の折り紙が付いていたことだ。付いているだけで仮死状態にさせるなんて、ふざけた能力だなと思った。


「ええ、私も王者能力キングダムスキルを持っている一人なので。『死紙王プルート』と言い、生と死を司る能力を持っています」

「そうか。ミディに従わないのは、お前も魔王で千年前にいた魔神ゼロの配下だからか?」

「それらは、条件をクリアした後に教えてあげましょう。あの方はとても強かった。私は貴方に期待していますよ?」


 アリスはヨハンの言い方に違和感を感じるが、ヨハンのことをよく知っているわけでもないので、気にするのやめた。


「それはわかったが、ナガレはこのままでいいのか?」

「しばらくはこのままにします。殺さなければ、魂の繋がりも切れることも無く、魔王ミディにもばれる事はありません。気付いていないかもしれませんが、アリスは前から観察されていましたよ? 魔王ミディに」

「なっ?」

「魔王ミディは色々なスキルを持っていて、この場から動かずに対象の観察をすることなんて、朝飯の前ですよ。でも、今は妨害させていますので、悪質な覗きをする者はいません」

「なんで、そこまでしてくれる……と言っても、教えてはくれんだろうな」

「それも条件をクリアした後にて。話が逸れましたね、勇者王の子孫、アルベルトのことを教えてあげましょう――――」






 ヨハンは魔王ミディが定めたことに反感を持っているようだ。アリスも魔王ミディから人間を襲うなと命じられても、断るつもりだった。とにかく、こっちに得があるのでヨハンの条件に乗る事に躊躇はなかった。アルベルトは『正義者ヒーロー』を発動して、身体能力の全体が上がっており、光魔法の威力も格段に高まっている。


「『乱破光線ホーリーブレイカー』!!」


 光魔法の光線が乱射され、アリスが避けていく。兵士訓練場の地面を抉っていき、その残劇に威力の高さが窺える。


「光の速さに着いていけるか」

「俺の事をただの魔人だと思うな。お前はこの程度か?」

「この程度ではない。私の名を名乗っていなかったな。勇者王の子孫、アルベルトだ。正義は悪に平伏せない!」

「はん! 正義か悪だろうが、強い方が勝つ。それだけだ!!」


 アルベルトは光の速さに着いていけるアリスにはさっきのように光線を何発か放っても、当たりはしないだろうと判断した。ゆえに、取った選択は接近戦だった。


「『聖錬剣グランダル』、魔人を切り伏せろ!」


 距離があるのに、構わずに剣を振ろうとしてきた。アリスは斬撃を飛ばしてくると思っていたが、振っても何も飛んでこなかった。疑問が浮かぶアリスだったが、身体は本能で動いていたのか、さっきいた場所から離れていた。だが、少しだけ遅かったようで、左手が斬り落とされていた。


「っ!」

「これも避けるか!」


 再び、剣を振ってきたので今度は本能だけではなく、頭で理解した上で、剣の軌跡から逃げ出した。そしたら、アリスがいた場所には斬られた跡が残っていた。それで一つの推測が思いついた。『聖錬剣グランダル』の能力は――――




「その剣、距離を無視出来るってわけか」

「ほう、よく気付いたな。そうだ、ある魔王の能力を取り込んだ一品だと聞いている。距離を取ったのがお前の最後になる」

「へえ、魔王の能力を取り込んだねぇ……欲しいね。勝ったら、貰う! だから、死ね!!」

「無理だな。お前が死ぬからだ」


 アリスの魔王爪サタン聖錬剣グランダルと激突したが、アルベルトは力に押されることもなく、反対に押されていた。力はスキルで強化されたアルベルトの方が上だった。アリスの魔王爪サタンを止められたが、それでも良かった。アリスにはある能力があるからだ。


「むっ!?」

「いい反応だな。普通の冒険者だったら、今ので死んでいた」


 爪を曲げて、アルベルトに突き刺さろうとしていたが、一瞬で察知されて避けられた。『正義者ヒーロー』は反射神経までも強化されることもわかったので、アリスは本気で迎え撃つことに決めた。


 ――――だが、邪魔が入った。


「アルベルト様! 手助けします!!」

「敵は一人だけか!!」

「お前ら!?」


 二人だけだった兵士訓練場だった所に、現れたのは、どちらも黒髪で黒目の男女だった。つまり、召喚された勇者の可能性が高い。勇者が三人もいては、アリスに不利の場面になってしまうが、魂の色を見たアリスの口元がにやけてしまう。


「実力の差が解らんのか!! お前らはここから離れろぉぉぉぉぉ!!」

「えっ?」


 アルベルトが声を上げた瞬間、アリスは既に女性の勇者前へ移動し終わっていた。さっきの声が最後の言葉になり、アリスは女性の勇者を一瞬で細切れにした。隣にいた勇者は仲間があっさりと死んだことを自覚したが、恐怖を浮かべる前に爪が心臓を貫いていた。


「ごふぅっ!???」

「魔力を頂く!」


 二人の勇者は召喚されたばかりだったのか、実力はアルベルトから遠く離れていた。あっさりと片付けたアリスは殺した勇者から魔力を吸い出した。しかし、制限された力を解放するまでにはまだまだ足りなかったようで、少々残念だと思っていた。


「貴様、まだ未来のある若者を!」

「だから? 今は戦争だ。ここに現れたから、殺した。それだけだ」

「……」


 アリスが言っている事は正論だ。だが、力の差があり過ぎる相手を容赦も無く殺せることに怒りが込み上げている。ここで見逃すことがあれば、あの敵は何処でも人間を殺し続けるだろう。だから、必ず、消しておかなければならないと思った。




「希少スキル、『執行者サバクモノ』、『英雄者タオレムモノ』!!」

「何!?」


 突然にアリスの身体が数十倍の重力を背負ったような感覚を味わうことになった。『英雄者タオレムモノ』は知っていたが、『執行者サバクモノ』は聞いたことも無い。

聞いたことも無いから、勇者王カズトが使っていたスキルではないのは推測出来るが、他の希少スキルを持っていることをヨハンは言っていない。つまり、ヨハンも知らないスキルをアルベルトは持っていたことになる。今のアリスは数十倍の重さを感じていることから、『英雄者タオレヌモノ』でアルベルトの不具合を移されたことになる。


「『執行者サバクモノ』の重責を負って貰った」

「なるほど……」


 どうやら、この重さは『執行者サバクモノ』を発動した時の自分に掛かる不具合だったようだ。それだけの制限を受けてしまうと言う事は、それだけの能力を持つ事になる。




「一瞬で終わらせてやる」




 アルベルトが剣を持ってない手を挙げると、上空から光り輝く物が現れた。眩しくて、すぐそれが何なのかわからなかったが、魂の色がとても濃くてヤバイ物だとだけは理解できた。

 上空に現れたのは、天使だった。普通の天使ではなく、羽が八枚もあり、高貴な覇気を持った上級の天使だった――――







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