第四十六話 次の方針
はい、続きをどうぞ!!
潰した魔物の集落で一日、休んだアリス達は……
「これから反省会をしたいと思います」
「アリス……一体、どうしたの?」
「いや、最近は急展開過ぎたからな。それで、まさかの魔王登場で、死に掛けたじゃないか」
アリスはちょっぴりだけ反省していた。派手に動き過ぎたため、魔王に目を付けられ、殺されかけられた。そこで、ロドムが止めに入らなければ、アリス達は死んでいたのだから。
「では、次からはバレないようにと?」
「いや、もう魔王に目を付けられている。この頃は戦いばかりで、人間の村や街を襲っていたから、その動きが魔王に気に入らないと思われている可能性がある」
「魔王が人間の事を気にするのですね……」
「他の魔王はどうか知らんが、魔王フォネスはゴーレムから街を守ったことから、やり過ぎればまた、邪魔される可能性が高い」
しばらくは街を襲うなど、目立つような行為はしないとアリスは言いたいのだ。なら、今は何をすべきか。自分の目的を達せる為に。
「あ、配下を増やすとか?」
「そうですね、三人だけでは、大量の敵に出会った時は大変ですからね」
「ああ、今は配下を増やしたいと考えている。ついでに、魔王についての情報も欲しい」
「魔王の情報?」
「魔王はどうすれば、なれるか知っておきたい。王者能力がキーになるわけでも無かったからな」
魔王になれば、称号に付くと書物に書いてあった。人間が書いた本だから、本当のことかわからないが、王者能力を手に入れたアリスであっても、魔王になった気がしない。どうしたら、魔王として名乗れるのか、まだわかっていないのだ。
昔に魔王と自称で名乗った魔人もいたが、その魔人は何故か早い時期に消えているのだ。本当の魔王ではなかったから、本物の魔王から消されたか、その実力が無くて、人間に殺されたか。
「なんか、魔王になる為には、何かが必要みたいなんだよな」
「魔王になる為に……?」
「そうだ。前にロドムから今の俺では、不可能だ。そして、可能だとしても、自分に教える必要が無いとか言っていた。つまり、何らかの方法があるってことだ」
「つまり、アリス様は魔王を目指す……で、間違っていませんか?」
「ん、そういえば、今まで一度も言った事も無かったな。そうだ、魔王になれば、色々とやりやすいだろ。人間を殲滅するなら、先に強者を葬ってからにした方が楽だろ?」
アリスは、名を上げる事で人間から危険な魔王だと思ってもらえば、強者が向こうから討伐に来て貰える。そして、それを返り討ちにしていくことを考えていた。少しずつと強者を葬っていけば、最後に纏めて殲滅するのに邪魔が少なくて済む。
(まぁ、あいつがいる国はこっちから攻めて殺してやるけどな)
アリスは計画を建てて、これからの順序に沿っていく予定だ。まず、魔王についての情報を集めながら、仲間を増やしていく。本当なら、ロドムから答えてくれば、楽だったが――――
「さてと、魔王について詳しい奴は知らないか?」
「それは、魔王と魔王の配下にしか知らないのでは?」
「そうだな、そいつらの居場所も不明だ。どうやって、探せばいいかわからん」
「そうか……」
なんとか、魔王の配下でもいいから、見つけないと情報を得る事は難しそうだ。しかし、魔王の配下は突然に現れるロドムしか――――
「あ、いるじゃないか!!」
アリスはもう一人いることを思い出した。ロドム以外で魔王の配下をやっている人が。しかも、居場所はわかっていて、呼び出すことも容易だ。すぐ行動に移すことにする――――
「……それで、お邪魔しに来たわけか」
「おう、ここしか思いつかなかったので!」
ここは、山全体が岩だらけになっており、ゴーレムの魔物が沢山生息している場所。いや、ゴーレムは放っているが正しいだろう。その山の頂上にて、呆れの目で溜息を吐いている男は、前に会ったことがある、ロドムと同じ魔王に仕えている魔人。そう、ナガレだった。
「全く、前と姿が違うな。それに、実力も――……」
ナガレは気付いていた。アリスが前に会った時よりも格段に強くなっている事に。
「俺を呼ぶ為と言え、ここにいるゴーレムを全て破壊する事はなかっただろうが!!」
「えっ、やり過ぎた?」
「やり過ぎだ! 馬鹿者が!!」
アリスは前にゴーレムを沢山狩っていたら、ナガレが現れたのだから、今回もゴーレムを沢山狩れば、また会えると考えていたのだ。アリスがゴーレムを相手に戦ってみると、豆腐でも斬るような感触にあっさりとした手応えに驚いていた。それで殲滅速度が速すぎた為、ナガレが来る前にゴーレムを全て倒してしまったのだ。
アリスはこの世界に転生してから、初めて怒られたことに感慨を思いつつ、謝っていた。
「すまない。聞きたい事があるんだけど、いいかな?」
「ったく、それが用事で呼び出しただろ。言ってみな」
「魔王になりたいんだけど、魔王へなる為には、何が必要なの?」
「何ぃ?」
魔王になりたいと言われて、目を細めていた。ロドムからはそのことは聞いてなかったので、驚いていたのだ。
「実力なら、ある程度はあると思うんだけど、何か足りないような気がするんだよね」
「……はぁ、何故、魔王になりたいんだ?」
「俺には目的があってね、魔王になった方が早く済むと思ったから」
「それだけのことで……」
魔王になれば、目的を達成する時間が短縮するからだとアリスは言っているのだ。それだけのために魔王へなりたいと考えるのは今までには無かった事だ。魔王は、魔王になっただけで敵を大量に増やすことになる。それを知った上で、魔王になりたいと言うとは思えなかったのだ
「――――我が主のミディ様は、力無きの者が魔王になることを嫌う。魔王を自称する者は沢山いたが、ミディ様が全てを消して行った。それでも、魔王になりたいと言うのか?」
「二言は無い。魔王になりたい」
アリスは元より、相手が最強の魔王であっても、敵になるなら逃げることは考えてない。目的を達する為ならば、何でも利用する意思だ。強い瞳でナガレと向き合うと、先に逸らしたのは、ナガレの方だった。
「わかった。方法だけは教えてやる」
「え、いいのか? 最初、ロドムは教えてくれなかったが」
「私と初めて会った頃のアリスだったら、駄目だっただろう。だが――――」
ナガレはジッとアリスを見る。鑑定でアリスのステータスを見ようとしても、弾かれる。つまり、今のアリスは経験を別にしても、実力だけなら自分より強いと言う事だ。それだけわかれば、方法を教えるだけなら、問題は無い。
「教えるが、あっさりと死んでくれるなよ? 爺さんだけではなく、ミディ様も気になっているみたいだし」
「む? 会ってもないのに?」
「ミディ様は特別な魔王ゆえで、普通ではないからな」
ミディに仕えているナガレも普通ではないと認めているのだ。そのミディが気に掛かっているアリスはハテナを浮かべている。
「魔王になる為の方法と言っても、簡単で難しいことだ。何せ―――――――――――――――――魔王を倒せばいいだけだ」
アリスが魔王になる為には、魔王を倒す必要があるのだ。倒せば、魔王になる為に必要なある物を手に入るのだから――――




