第四十五話 来客
はい、続きです。
今回は珍しい客が現れます!!
アリスがフォネスにやられた後のこと。
最強の魔王であるミディは久しぶりに親友と会う予定で、ワクワクしながら椅子に座って待っていた。今、ミディはある人と初めて出会った屋敷にて、豪華な食事を並べて、部下に指示を出している。
「ん~、久しぶりだな~」
「とても楽しみにしておりますね」
「そうだろ、そうだろ。そなたも会いたいのだろう??」
「わ、私は!! え、ええと……そうですね」
ミディのメイドをやっている配下、結界を操る能力を持っており、敵からの攻撃を防ぐ守護的なことをしている。名はノエルと言い、ロドムと同様に千年以上も生きており、ただのメイドではない雰囲気を持っていた。だが、あの方の話になると……
「おっ、これは初めて食べさせた食事じゃないか」
「よく覚えていますね!?」
「千年前のことはある意味の衝撃があった年だったからな。向こうがまだ覚えていたら、いいな? というか、千年も片思いとか、虚しくならんか?」
ノエルは千年前から想いの人が出来ているのだが、あまり会う機会が取れなくて、自分の想いを伝えられていない。千年も片思いをするほどに、純真な魔人である。
「もう!! いい機会が――――……ないんですよ」
「まあ、あいつらはよく世界からいなくなるからな。今回も突然に現れた手紙で来るのを知ったし」
これから会う人は、ミディへ会いに来ることをついさっきに手紙で知らせていたのだ。ミディは久しぶりに会えることを楽しみにしているが、せめて数日前には知らせて欲しかったと思っていた。
「おっ、この気配は……来るな」
食事が準備されている場所を避け、空いている空間にヒビが現れた。ヒビが広がっていき、人が通れる程度の大きさになるとその中から影が見えてくる。
その影は二つあり、男女が並んでゆっくりと歩いてくる。
「いきなりの来客で悪かったな」
「……怒っている?」
「うはははっ!! 久しぶりの再開だ。文句を言うほどに狭量ではないからな。本当に、久しぶりだ、魔神ゼロとレイ(・・)?」
現れたのは、昔に魔神として暴れて世界に恐怖を貶めた人物だった。ゼロと言う男性は髪が随分と長くなっており、腰まで届くほどの長髪になっており、眼は相変わらずのクマが濃く残っていた。レイはゼロの妹……今では、幼馴染になっているが、本人は妹のつもりである。銀色の髪がふわっと揺れており、絶景の美人だと言えるぐらいに美しかった。
「確か、最後にあったのは100年前だったかな?」
「……正確には、112年前だよ」
「そんなになるか! どうだった、他の世界は?」
「今回は当たりだったよ。平和で、その場所で骨を埋めたくなりそうな美しい世界だった」
「……人間がいないし、その世界は動物ばかりの楽園だった」
「そうか、そうか。その話はご飯を食べている時に聞きたいな」
せっかく、食事を準備したのだから、席に着けとミリィが催促する。二人はちょうど腹が減るころだったので、断ることも無く席に着いた。
「全く、お前の能力は便利で羨ましいよ」
「あぁ、ある意味の万能な能力だからな。それに、俺はもう魔神ではない」
今のゼロは魔神だった頃の身体ではなく、人間のと変わらない構造になっている。ただ、能力でレイと共に不老の存在になっている。ゼロの能力はこの世界で考えれば、これ以上のない最強な能力であり、別世界へ渡っていたのも、この能力があってのことだ。
千年前、転生者で魔物として生まれ変わったゼロとレイは魔神の存在だったが、勇者カズトによって悪事を止められて、死んでいた。だが、勇者カズトの転生が出来る剣の力で、ゼロとレイは二度目の転生をしたのだ。
何故か、ゼロは持っていた能力が消えずに元に残ったので、その能力を使って、再びにこの世界へ戻っていた。仲間との約束を守る為に――――
「そっちはどうだ?」
「アレはまだ姿を現していないが、面白い存在を見つけたぞ」
「面白い存在?」
「あぁ、確定ではないが、お前と同じ魔物に転生した転生者だ」
「それは珍しくも無いだろ? 俺以外にもいたしな」
今はもう寿命でいないが、魔物に転生した転生者はゼロ以外にもいた。ミディにも会っており、ゼロの配下だった者だ。
「ソナタか。寿命があるとは思わなかったな」
「悲霊女は霊族の魔物だったから、寿命は無いと思っていたが、長生きするだけだったな。まあ、念の為に不老にするかと聞いてみたが、断られたが」
「いいじゃないか。寿命で死ぬのは自然の摂理だからのう」
「不老の存在が何を言っているんだか」
「我は元より、簡単に死ねるような存在ではないからな」
ミディは不老に最強であり、誰にも殺せるような相手がいないので、千年――――それ以上も生きているのだ。魔神になったゼロよりも。
「おっと、話が逸れたな。面白いといったのは、魔物になった転生者だからだけじゃない。人間を恨んでいて、復讐をしようと力を求めているのだ」
「む?」
「それも、思ったよりの早いスピードでだ」
「……確かに、面白いと言っていいかわからないけど、非常識な存在だね」
「ホホッ! あの子は強いですよ。あの魔王フォネスが片腕を落とされてしまいましたからね」
「いつからいたんだよ……相変わらずだよな。お前は――――って、フォネスが?」
「……フォネスが? 相手は生まれてから何十、何百年も生きているの?」
「いや、おそらくは数ヶ月だろう」
「はあっ!?」
ゼロが珍しく驚いていた。そうだろう、千年も生きているフォネスが、数ヶ月しか生きてもいない相手に片腕を落とされたのだから。フォネスが驕っていても、傷を付けることが出来る敵は限られていると思っていたのだ。
「――――で、アレの気配は?」
「無し。しばらく観察してみたが、珍しい能力を持っているようだったな。なぁ、オジィ?」
「ホホッ、あの右眼がアリスお嬢様を強くしている原因になっているようです。それに、その本人も魔王を敵にしても、怯む事も無く戦っていました」
「…………レイ、予定を変えるか?」
「……うん、数週間で別の世界に行こうと思ったけど、この件は外せないかも」
魔神だったゼロとレイもアリスことは放っておけないと考えたようだ。だが、手は絶対に出さない。この世界に再び戻ってきた時からそう決めていた。自分はこの世界では、もう死んだ存在であり、そうそうと表に出るにはいかないからだ。魔神として迷惑を掛けた、その贖罪として。だが、アレのことは見逃せない。
「俺も観察をする。だが、アレのこと以外には手を出さない」
「そうだな、この世界にいるなら、ここを使うといい。何かがあったら、ノエルに言うと良い」
「は、はい!」
「ノエル、しばらくはよろしくするな」
「い、いえ! 私こそ!!」
ノエルは顔を赤くしていたが、ゼロはそれに気付くこともなかった。隣で座っていたレイは溜息を吐いていたが。
世界の何処かでは、このようなことがあったが、誰にもこの会談があったことを知ることは無かった――――




