第四十四話 ステータスの強化
はい、続きをどうぞ!!
聖アリューゼ皇国はアリス達の攻撃によって、街の所々が焼け焦げており、大災害の様な状況に陥っていた。今回の攻撃で数百人の人間が死んだ。もし、ゴーレムがそのまま倒れていれば、千人以上は亡くなっていたから、まだマシな方かもしれないが、被害者になった人には絶望的なことになっただろう。
遠くから爆発音や戦いの音が響いていたが、聖アリューゼ皇国にいた人達は突然のことに呆然することしか出来ていなかった。火事が燃え上がって苦しむ人の声により、無事だった人は我に返り、救助をしていたため、アリス達に対する対応は何も出来ないまま、時が進んでいた。星神宮に何かが起こったとわかったのは、ほんの一部の人だけで、それも勇者に関する魔道具が壊れたと知られてからだ。
「何故、星神宮に問題が!?」
「あ、あの光は!! 対魔王の為に造って置いた兵器じゃないか!?」
「まさか、何者かに襲われて、兵器を使われた……? そんなことが……」
星神宮の関係者は大慌てだった。雷が落ちた場所から少し離れている所にいた為、被害を受けることはなかったが、勇者に関する魔道具を壊され、対魔王に造られた兵器も使われた。そのことから、誰かに星神宮が襲われたと理解出来た。すぐに、星神宮へ人を送ろうとしたが……
「っ! 街が!!」
「な、なんだ? 空が光ったと思えば、ゴーレムが現れて、燃えたりして……訳が分からない!!」
「――――わかりました! ゴーレムを撃退したのは、魔王です!! 焔を使っていた事から……」
何処かと通信して、情報を得たようだ。焔を使ってゴーレムを撃退していたことも聞いた。
「何だと!? 焔を使っている魔王は一体しかいない! 魔王フォネスか!?」
「でも、何故、ゴーレムを?」
「わからん……」
何故、魔王がゴーレムから街を守ってくれたかわからないが、とにかく今はこの状況を起こした犯人を見つけることだ。
「魔王が出てきたということは、犯人も別の魔王関係者では?」
「可能性はあるな……。対魔王の兵器を奪うため、勇者に関する魔道具の破壊で動いていたと考えれば」
「その魔王が兵器を奪ったとなれば、やばくないですか!? すぐ取り返さないと!!」
腕に自身がある星神宮の関係者が向かおうとしたが、この中で上司である男性が止めた。
「待て、相手が魔王だったら、今の戦力では心許ない。人が集まるまで、星神宮へ向かうのは偵察をする人だけを送るのがいいだろう」
「……わかりました」
「すぐそうするようにと、手配をしろ」
「はっ!」
「残りは、救助だ。行け!!」
動けるものを集めて、瓦礫を退かして怪我人を救助したり、火事になった場所に水を掛けたりと働いていく――――
魔王フォネスにやられたアリス達は、動けるようになってからすぐこの場から離れた。ロドムの言う通りにするのはシャクだが、今は回復に努めたい。中で魔力を使い果たして動けないアリスは、バトラにおんぶされて、落ち込むマキナを連れて、この前に潰した魔物の集落へ移動することになった。
「アリス様、すいません……何も出来なかったです」
「気にするな。俺も殆どは相手にならなかった。だが、今は生きている。それでいいだろ」
「そうだな、生きていればいい。死んだら、全てが終わりだからな」
「……はい」
「何故かわからんが、前より強くなっているんだ。しかも、フォネスが持っていた王者能力も手に入れていたみたいだし」
「えっ!?」
やられて、魔力を吸収も出来ず、進化もキャンセルしたから強くなることはなくなったのに、何故か右眼が勝手に何かを吸収したかと思えば、王者能力を二つも手に入れて、歪だが進化もした。
今のアリスは人間のと変わらない姿をしており、人形だった面影がほぼ無くなっていた。右眼はひび割れた状態ではなく、眼球が黒く光っているだけになっていた。右眼が勝手に何かを吸収したと言ったが、名前だけは頭の中に流れ込んだので、『闇の残滓』というのはわかっている。その影響なのか、進化も魔歪体と言った歪な進化になっていた。
バトラに聞いたが、そんな種族は聞いたことは無いと。
「王者能力を二つも!? 魔王だって、持っている人は少ないと聞いているけど……」
「俺にも詳しくはわからん。勝手に右眼が闇の残滓を吸収したから、生まれたとしか知らん。一つはまだ魔力量が足りないから、制限された状態だがな」
「それでも、凄いことだよ……」
「それよりも、二人ともも強くなっているんだろ? バトラも進化しているだろ?」
「あぁ……その状況で、進化するとは思わなかったよ。魔森鬼って、これも聞いたことが無いんだよ」
「私は進化していませんが、魔力量が増えて、新しい希少スキルが増えていました。今度こそ、アリス様のお隣で……」
アリスが進化した影響で、二人も強化されていた。名を与えた同時に、魔力のコードが二人ともに繋がっており、アリスが進化したことで実力と格が引き上げられたのだ。いきなり進化して強化されて、動揺しているバトラと汚名返上をしようと気合を入れるマキナの姿があった。
(さて、しばらくは回復に努めるか。移動はバトラに任せて、この王者能力の詳細を確認し――――あ、ついでに二人のステータスも見ておくか)
アリスは他の人のステータスが見えるようになったので、戦いが大分楽になってきた。自分のステータス、バトラとマキナの増えた能力は何なのか調べておいた。
ステータス
名称 アリス
種族 魔歪体
称号“絶対不屈者”
スキル
王者能力
『狂凶王』
【暗黒眼・激狂発作・擬人作成・擬人犠牲(身代り、自爆)・空間収納・王者覇気・***・***】
『完全無欠』
【精神統一・超速思考・精神不滅】
希少スキル
『魔王爪』
【蛇曲剣・刺飛剣】
通常スキル
『防水』、『遠視』、『魔力操作』、『超速再生』、『物理大耐性』、『状態異常無効』、『斬撃固定』、『斬撃強化』、『斬撃無効』
随分と能力が増えたなと思いつつ、***と表示されていない所は魔力量が上限に達していないから、まだ使えないのだろう。まず、『狂凶王』にある能力は前からあった能力も含まれており、暗闇眼が暗黒眼に変わっていたようだが、愚焔や愚氷などは使えている。鑑定も人のステータスを許可無しに見えるようになっているし、他のも威力が強くなっているのは想像出来る。激狂操作は理性を無くす代わりに、100倍の力を得ることが出来る。擬人作成、擬人犠牲は人に近付いた人形を作れるようになり、その使い方も増えている。空間収納、王者覇気は言葉通りに受け取っても良いみたいだ。
次に、『完全無欠』は精神に関することで、支配系を無効して、理性を無くすことは無い。精神統一は自分の魔力回復を早めることが出来、魔法を覚えていたら、その威力を高めることが出来るようだ。超速思考は、思考を100倍に延ばすことが出来るので、フォネスに遅れを取る事はないだろう。詳細は試してみないことにはわからないので、あとで考えることにする。次はバトラのステータスについて考えてみた。
ステータス
名称 バトラ
種族 魔森鬼
称号“アリスの配下”
スキル
希少スキル
『識別者』
【鑑定・情報補佐・瞬間記憶】
『魔武創造』
【武器練成・属性付加(土)】
通常スキル
『高速思考』、『魔力操作』、『魔力察知』、『自己再生』、『身体強化Ⅲ』、『武器大強化』、『物理耐性』
バトラは武器練成が強化され、属性を付加することが出来るようになった。まだ属性は一つしか出来ないが、前よりは戦略が広がったのは確かだろう。身体強化Ⅲは10倍も強化させることが出来るみたいだが、魔力の消費も増えているので使い方には要注意だ。
バトラのステータスはそんなところで、次にマキナのステータスを確認した。
ステータス
名称 マキナ
種族 半人半造変異種
称号“アリスの配下”
スキル
希少スキル
『巨兵創造』
【作成・操作・重量変化・巨兵融合】
『光臨者』
【光源吸収・魔光変換・放射・魔光収納】
通常スキル
『高速思考』、『魔力操作』、『物理耐性』、『痛覚耐性』、『身体強化Ⅱ』、『自己再生』
(うん? 光って……)
光魔法に通じるスキルは、勇者しか持たない特別な属性ではなかったのかとマキナを凝視してしまう。凝視されているマキナはビクッとしてオドオドしているが、無視して思考に深まっていた。
(もしかして、マキナは勇者……な訳はないか。書物では、勇者は称号として現れるから違うだろう。もしかして、先祖に勇者がいたとか?)
それだったら、血族の関係で特別な属性を使えると考えられる。マキナは奴隷だったので、両親のことも覚えていなくて、何も知らないで生きてきたので、詳細を知ろうとしても出来ない。
(まぁ、いいか。強そうな力を得たからラッキーだったなと思えばいいや)
光の属性に関しては考えるの止めた。ステータスを見るには、マキナは遠距離攻撃方法を手に入れたのと、元のスキルも強化されていた。これなら、ゴーレムばかりに頼りにせず、自分自身でも戦えるだろう。
(さて、これからはどうっすかぁ……)
アリスはバトラの背中で揺られながら、これから何をして、どう動けばいいか考えるのだった――――




