第四十三話 リディア王国では……
短いですが、この前の勇者が出てきます。
さあ、続きをどうぞ!
アリス達が聖アリューゼ皇国で暴れている時、『太陽の使徒』のパーティである勇者のこと、本田凜人はリディア国で依頼を受注しつつ、様々な魔物と戦って強くなっていた。
依頼を達成して、今はギルド内にある酒場で食事をしていた。そこでそれぞれが集めていた情報を照らし合わせていた。
「『鉄の意志』のパーティが全滅したのは間違いないようですわ」
リントがこの前に依頼のことに気が掛かり、一度は情報を集めることにしたのだ。そして、集めた結果に三人とも驚きの心情になっていた。
「Bランクのパーティが全滅か。こっちの情報のと変わりはないな。ただ、敵の概要は不明で困っているみたいだぞ」
「魔物か魔人のどちらさえも解っていないけど、とっても強いのは間違いないな。魔物でも強いのはドラゴン級ってこと?」
「あぁ、魔物で強いのはドラゴン級か、不死族のリッチ辺りだな。Bランクのパーティが魔物にやられるなら、その辺りが妥当だ」
前に聖騎士として教育を受けていたリュグが召喚されたばかりのリントに説明していた。魔物と魔人の違いは、知能があるかないかの差とギルドが定めた標準以上の実力があること。ドラゴンやリッチは話せそうなイメージがあるが、話せないし実力はイメージよりも魔人より落ちる。ギルドが定めた標準以上の実力とは、一体だけで人間が住まう村や集落を潰すだけの力ということになる。冒険者のランクで言えば、最低でもAランクぐらいだ。
「ええと、もしゴブリンが知能を持っていて、一体でAランクの冒険者を殺したり、村を潰していれば、魔人扱いになるのですか?」
「そうだな、そんなゴブリンがいるとは思えないが、それなら魔人と呼ばれても可笑しくはないな」
「じゃあ、集落を潰し回っている正体不明の魔物を見つけ、ギルドに報告する依頼は……」
「知能はあるかわからないけど、実力だけは魔人には劣らないかも。今のところは、魔物の集落しか潰されていないから、判断は難しいわ。人間が住む村を襲われたなら、話が変わるけど……」
今のところ、人間に被害があったのはBランクの『鉄の意志』だけで村や町から被害があったと情報はない。
「リント、気になるからと情報を集めてやったが、それからはどうしたいんだ?」
「うーん、Bランクの冒険者がやられたのは結構危ない状況じゃないの?」
「判断が難しいな。死体が見つかったのは、オーガの集落があった場所だから、オーガと同時討ちになった可能性もある。しかし、オーガの身体に付いていた傷は爪で斬られたような跡が残っていた情報もあるのもあり、正体不明の魔物が纏めてやったかもしれないという話が持ち上がっているしな」
「Bランクといえ、リディア王国は初心者の冒険者が集まる町で、それほどに強いとは言い難いわね。経験が足らなくて、あっさりとやられたかもしれないわよ?」
「あー、もういいだろ? あの依頼は受ける気は無いから、この話は終わりな!!」
話し合っても、有益な情報は無かったのがわかり、もうこの話はリュグが打ち切った。正体不明の魔物を探せなんて、情報が全くないのに無茶なことは出来ない。だから、この件はこれで終わりにするつもりだったが――――
「大変だ!! ネーム村がやられた!!」
「あ、貴方はネーム村の領主様!? 何があったのですか?」
「化物みたいな魔物から逃げたんだ!! 私達以外は全滅してしまった!! 早く討伐隊を出してくれ!!」
「わ、わかりました! ギルド長がいる部屋に案内をしますので、着いてきてください!!」
身なりが整った男と数人の使用人が慌てた様子で受付嬢に状況を説明して、奥の部屋に案内された。村が潰されたことに、ギルド内は騒がしくなってきた。まだギルドにいたリント達にもその話は耳に届いた。
「……まさかねぇ」
「さっき話していた魔物のことだったら、この件で魔人クラスに昇格だな」
「……どうなるのだろうか。討伐隊を派遣してくれと言っていたけど、聖騎士が行くの?」
「今回は魔物のことがよくわかっていないから、さっきの領主様が見た情報から決まるだろうな。Aランクの冒険者が行くか聖騎士が派遣されるか……」
「しばらくここで待ってみる? 情報が上がるかもしれないし」
「そうね」
今は情報が定まっていないから、いきなり聖騎士が行くとならないだろうが、千体以上などと桁外れな数で責めてきたなら、冒険者には荷が重いだろう。とりあえず、魔物のことで情報が上がるまでここで待つことにすることに決めたのだった……




