第三十八話 九尾族
はい、続きをどうぞ!
亜人の妖狐族ではなく、魔物の九尾族と。尻尾は八本だったり七本とかとバラバラだったが、九本の九尾族がいない。それを表情に出ていたのか、一番前に出ていた八本の女性が説明してくれた。
「九本の尻尾を持った方はここにはいません。いえ、あの方以来から一度も生まれていないというのが正しいでしょうね」
「あの方?」
「はい。千年前の魔神ゼロが生きていた頃、配下であった九本の尻尾を持った九尾族がいました。今は魔王の一人となっていますが、あまり表には出てきません」
「ふーん」
九本を持った九尾族がいないのはどうでもいいので、こちらの話を聞いてもらうことにする。
「俺らは星神宮を探しているのだが、何処にあるかわかるか?」
「星神宮ですか、知っていますが……。一つだけ聞かせてもよろしいでしょうか?」
「好きにしろ」
「では、貴方達は何故、様々な種族の集落を襲うのですか? 普通は集落を襲っても旨味はないのでしょうが……」
魔物が集落を襲うことは多大な被害を出すことを知った上で、何らかの利益を得ることにある。食料、隠された宝など……
だが、アリスたちはただ集落を襲っているだけ。まるで、冒険者のような振る舞いに魔物ではないのかと疑っていたのだ。このままでは、自分達の集落を襲われてしまうのは見えていたので、思い切って、対話に繰り出したのだ。
「なるほど、旨味ならあるさ。俺は死体から魔素を吸い取れるのさ」
「っ!?」
「安心しろ。話が通じるなら別だ。星神宮の居場所を知っていて、案内をしてくれるなら、見逃してやろう」
交渉というより、脅しで星神宮の居場所を教えてもらうようにと頼んでいた。女性はアリスの要求に答えたら見逃してもらえることにホッとし、考える。
別に場所を教えてもいいが、行く目的だけは聞き出して置きたいと考えていた。もし、アリス達が何かをでかして、こっちに火種が飛んでくるのは頂けない。九尾族は平穏に過ごしたいだけだから。
「どうして星神宮に行きたいか教えてもらっても?」
「簡単な理由だ。勇者についての情報が欲しいからな」
余裕があれば、魔剣や魔道具があったら奪っておきたいとも考えていた。だが、そこまでバカ正直に話すことはない。情報が欲しいだけなら、九尾族に迷惑が掛からないと勘違いしてくれるの考えもあるが。
「……わかりました。それなら、私がご案内をしましょう」
「それは助かる」
「いえ、その代わりに九尾族の集落には……」
「わかっている、約束は守るからよ。で、九尾族は全滅した種族だと聞いたことがあるんだが、違ったのか?」
「ああ、昔に全滅したと思ったが……」
バトラは千年前辺りから九尾族は全滅したと思っていた。だが、実際はまだ生き残りがいたようで、驚いていた。
「確かに、その頃は全滅種になりかけていましたが、魔王フォネス様のお陰で増えていっています。まだ他の種族と比べて小数ですが」
「魔王フォネス…? あぁ、九本の尻尾を持つ九尾族の魔王のことか」
最初に話していたことを思い出す。魔神ゼロの配下だった九尾族が魔王になっていることを。同じ九尾族だったら全滅しかけの同族を助けてもおかしくはないからだ。
「はい、私は出会ったことはありませんが、先祖はその方に助けられて、庇護して貰っていた時期があると聞いたことがあります」
「ん? 今は庇護されていないのか?」
「わかりませんが、私が生まれる前に魔王フォネス様は表に出ることは無くなったので、表立って庇護されているとは言い難いと思います」
「それで、自分達が来た時は怯えていたわけか」
魔王から庇護されていたなら、野良の自分達に襲いかかれても大丈夫だったかもしれないが、今は庇護されているかさえもわからない状態だったので、戦うより対話することを選んでいたのだ。
八本の尻尾を持つ女性だけが残り、他は集落へ帰っていった。四人は星神宮があるとされている方向へ向かう。
「それよりも、星神宮のことで何か知っていたら、教えて貰いたいんだが? 勇者に関することで何かがあるとしか知らないからな」
「そうですか」
道中、星神宮についてのことを知っていることを聞きながら歩いていくのだった……




