第二十八話 勇者と魔王について
はい、続きです!
次の村へ向かいたいアリスだったが、バトラとマキナもここ以外の村を知らないと言う。バトラはともかく、マキナはずっと奴隷でリディア国とここの村しか知らないの仕方がないだろう。
「はぁっ、どうするか……」
「役に立てず、すいません……」
「いや、仕方がないよ。知らない物は知らないんだから」
(それは俺のセリフだろうが。バトラは色々な場所に行ったことがあると聞いていたが……)
昔に、バトラは狩りで様々な森や山に行っていたが、見つけた村はここだけだと言う。
つまり、人間の村は少ないということか? 街みたいな大きな場所に住んでいて、少数で集落みたいな形で暮らすことは余り無いのでは?
様々な推測が浮かぶが、村はここだけとはないだろう。
「…………リディア王国から離れるべきだな」
「そうした方がいいと思うよ。ここには街以外で相手になる敵がいないし」
「街に攻め込まないのですか?」
「無理だ。街には勇者と呼ばれる人間の秘密兵器がいるだろう。まだ魔人にもなれてないのに、危険な場所を攻めれるかよ」
アリスは屋敷にあった書物から勇者に関しての情報を手に入れていた。勇者カズトと言う有名な話があることから、勇者という存在は認識していたが、この世界では数十名の勇者が存在するのは予想外であった。
それに対して魔王も数名いて、その筆頭にミディ・クラシス・ローズマリーと言う最強魔王と呼ばれている者がいる。
(こいつがロドムやナガレのボスか?)
名言したわけでもないが、アリスは此奴があの2人のボスだとしか思えなかった。もしかしたら、アリスの勘が間違っていて、他の魔王に仕えているかもしれない。
魔王の情報も少しだけ見つけたが、役に立ちそうな情報は余り無かった。魔王でわかっている名前は2人だけで、最強魔王であるミディ・クラシス・ローズマリーと魔神ゼロの元配下であったヨハンだけである。
千年前では、5人以上の魔王がいたことから、魔王がたった2人だけなのはあり得ないと考えられているようだ。ただ、表舞台に出てないだけで、何処かに潜んでいると…………
「どれも曖昧な情報しか載ってないんだよな」
「持ってきたのか」
「あぁ、数十分で読み終わる量じゃないからな」
アリスは屋敷から気になった書物を収納に詰めて持ってきていた。殆どがこの世界に関する歴史や勇者、魔王のことが書かれている書物だ。
持ってきたのはいいが、どれも詳しいことは書かれておらず、アリスが知りたいことは書かれていなかった。
アリスが一番知りたかったことは、勇者はどうやって生まれるのか? だった。
前世の知識では、勇者召喚と言う物もあったが、もしかしたら生まれた時から勇者だったということもあり得る。
もし、勇者召喚があるなら、それを潰すことが最優先になるから、その情報が欲しかったわけだ。
「あーあ、勇者の数も曖昧でその強さはどのくらいか全くわからねぇや」
「勇者の力を知るなら、戦うのが一番だけど……」
「もし、その勇者が強かったら危ないよ?」
マキナの言う通り、勇者に挑んで負けたら終わりなのだ。命は一つしかないから、慎重に行きたいと考えているがーーーー
「ーーむ?」
「どうしたの?」
「山の向こう側に人が沢山いるんだけど? 村はこの辺りにないと言っていなかったよな?」
「あぁ、村はね」
バトラの言葉に訝しむアリスだったが、見た方が早いと思い、歩く脚を早めーーーー
山の向こう側が見える場所に着き、バトラが村はないと言った理由がわかった。
「ーー成る程。村ではなく、街だったわけか」
目の前に広がるのは村ではなく、街だった。人間も沢山いて、アリス達だけで攻めれるような場所ではなかった。
「あぁ、街を教えても意味はないしな」
「そうだな。勇者がこの街にいなくても、冒険者や騎士などに強い奴がいたら終わりだからな」
こっちはたったの3人だけ。完全に戦力が負けているのは理解している。
「はぁ、獲物が目の前にいるのに、狩れないとはな……」
「諦めて、他の場所に向かう?」
「そうだな。俺達じゃーーーーーーーーーーーーー待てよ。別に俺達が行かなくてもいいじゃないか」
「え?」
街に攻め込むの諦める寸前に、アリスが急にそんなことを呟いていた。バトラとマキナは意味がわからず、首を傾けていたが、アリスは思考の海へ沈んでいった。
「ふむ、これでどうだ? いや、このやり方なら……………………よし!」
「あ、アリス?」
呼びかけにアリスはニヤッと口を歪めて振り返った。そしてーーーー
「この街に攻めるぞ」
アリスは目の前にある街へ攻めると宣言したのだったーーーー
街へ攻めると宣言したアリス。どう攻めるのか、お楽しみにっ!




