第二十六話 繋がれていた少女
はい、続きです!
村を襲い、屋敷まで脚を伸ばすと小さな魔力を地下から感じ取って、地下への扉を見つければーーーー
「予想通りだったが、こういうの好きじゃないな」
「え、人間が嫌いんじゃなかったの?」
「嫌いだよ。だが、嬲るのは趣味じゃねぇだけだ。まぁ、奴だけは別だがな」
奴とは、エリーナを殺したクリスチャス王子のことだ。奴だけは、楽に殺さないと決めている。
だが、他の人間は前世からの憎悪で嫌いなだけで苦しませたいのは違う。ただ、人間がいない世界にしたいと思っている程度だ。
「全く、よく生きているな。コレは」
よく見れば、左腕が肘から無くなっていて右眼も抉られ、中身がなかった。更に身体中に切り傷や鞭跡が大量に付けられていた。
これで死んでないのが驚きだった。
「今から楽にしてやろうじゃなーーーー」
アリスは言葉を止めた。さっきまで虚空を見つめていた少女がアリスに照準を合わせて、何かを訴えているように見えたのだ。
「…………何か言いたいことがあるのか?」
「あ、あぅ……、こ、殺さ、ないで……」
「命乞い? この傷だらけでまだ生きたいのかよ?」
アリスは未だにも生にしがみついて離さないと訴えている少女を見て、少しは根性があるなと関心していた。
だが、何もしなくても1日は持たないとわかるから、これ以上は苦しませないとの配慮で手を掛けようとしたがーーーー
「あ、あいつをーーーー殺す、までは…………、し、死ねない……。わた、しを、無視する、人も……殺す、だから……、た、助け、て……」
「…………成る程な」
アリスは魔爪を発動しようとしていた手を引っ込め、少し考え込んだ。
考えが纏まったのか、アリスは少女の前に立つ。
「聞こう。俺達は魔物だ。それを理解した上で、聞こうじゃないか」
「え、ま、魔物……?」
「む、目も余り見えてないのか? まぁいい、お前は殺したい人間がいるな。私が助ける代わりに全ての人間と敵対する、私の配下になれ。お前の全てを俺に渡すなら、助けて力もくれてやろう!」
魔物と聞いて驚いたが、話を聞いた少女は、覚悟を決めてアリスの前で土下座をして誓った。
「私は、貴方の、配下、になります……。貴方のために、命を、掛けること、に誓います…………」
「よし、少女……いや、お前に名前はあるのか?」
「い、いえ、ありません。ずっと、奴隷だ、ったから……」
「そうか。あとで名をやるから、今は気絶していろ。ずっと我慢していたんだろ?」
「すいません…………」
突然に糸が切れたように、土下座から横へ倒れこむ。そこにアリスが支えていた。
「バトラ、鎖を壊せ」
「はいよ。助けるだけではなく、配下にするなんて珍しいね。って、死に掛けから助ける方法はあるの?」
「まぁ、考えはあるから心配するな」
バトラはふーんと納得して、鎖を粉々にして壊した。配下にすることは異論がないようで、説得を省けたのは助かる。
少女は今にも死にそうなので、すぐ準備に取り掛かる。
「これで良しと、あとは魔素と魔力だな」
少女は綺麗なテーブルの上に乗せて、アリスは外に出た。滅んだ村は死体だらけで生きている者は既に逃げ出しているので、村には3人しかいない。
「お前らの魔素と魔力を貰うぞ」
村中の死体から魔素と魔力を纏めて割れた右眼へ吸い込んでいく。その景色は黒い竜巻が右眼へ向かっているような物だった。
「これで充分にやれるな」
アリスは収納から紅い珠を取り出した。ゴーレムから奪った珠である。それを見たバトラはこれから何をするか大体は理解したようだ。
「さてと、約束通りに力をやってやる。そして、その力を増分に振る舞うが良い」
アリスは自分が使える能力の全てを使っていき、少女が生まれ変わっていくーーーー
次は明日の朝7時になります!




