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第十九話 vs冒険者 後半

本日二話目!

 


「ふっ!」

「うらっ!」


 バトラとダルクがぶつかり合っている。槍と盾の応酬が交わされ、お互いが致命傷を受けることはまだ無かった。


「はぁっ!」


 ダルクは盾の上辺が刃になっており、右手が怪我をしていても攻撃も出来ていた。


「怪我をしているのに、しぶといな! 『身体強化』!!」

「やられてたまるか! 『身体強化』!」


 お互いが一段階の身体強化で力と早さが上がる。お互いが同じスキルを発動したので、力の差は変わらなかった。バトラはキリが無いと思ったが、二段階の強化である『身体強化Ⅱ』を発動したくても、魔力が足りなかった。先程の弟オーガ相手に使ってしまったのが悪かった。本来なら、『身体強化』だけでも、時間を掛ければ勝てたのだ。

 使わなければ良かったと、後悔しても仕方がないので、戦いながら勝ち筋を探すことにする。






 ……あー、これはアリスが勝つまで粘っていた方がいいな。硬すぎるわぁ。


 何度か槍を打ち込んだが、ダルクの防御を崩せる気配がない。負けない自信はあるが、勝てる自信もなかった。決め手がない状態で無理に攻めるよりも、アリスが来るまで粘った方がいいと判断した。

 まさに、人任せであった。


 アリスが負けるとか想像出来ないし、2人程度で化け物を抑えられるとは思えない。


 バトラはアリスのことを化け物と称するぐらいだから、忠誠心などは持ち合わせてないのはわかるだろう。だが、実力だけは信じていた。


「まぁ、今後は何を見せてくれるんだろうか」


 誰にも聞こえない呟きをしつつ、生き残るためだけにダルクへ集中していくーーーー









 両手に魔爪を発動したアリスは、2人相手に押していた。剣で攻撃してきても魔爪で弾き、魔法は斬り裂いていた。


「おらぁっ! いい加減に諦めたらどうだ!?」

「馬鹿言うなよ。こっちは負けるつもりはない!!」

「アズク、少し耐えるんだ!!」


 アズクとゼアクの様子に違和感を感じていた。負けるつもりはないと言いつつ、攻撃してくる回数が減って防御よりになってきていることに気付いていた。だが、何のために?


「何かを待っている……?」


 そして、向こうから爆発音が全く聞こえないのも気になる。あの人形は何をしているんだと思っていたらーーーー




「アズク、下がれ!『烈火豪爆フィアレイザ』!!」




 ゼアクが花火のように、火の礫が上空で爆発しながら落ちてくる魔法を使ってきた。広域に降り注ぎ、逃げ場を無くしつつダメージを与え続けようと考えたかもしれない。だが、広範囲に広げすぎて、避ける隙間が出来てしまっている。アリスはすぐに被害が出ない場所を見切って、そこへ移動していた。


「魔法の使い方が甘いな……む?」


 正面からアズクが突撃してくるのが見えた。見え見えの突撃に呆れていたアリスだったが、それが致命的な隙になってしまった。


「今だ!!」


 アズクがチャンスだと言うように、合図を出していた。誰に合図を出しているんだ? あの盾男かと思っていたらーーーー


「わかったわ、発動!!」

「なっ!?」


 後ろから女性の声が聞こえ、振り返ってみると、逃げていた筈のリンがいた。リンから何かを発動され、地面からアリスを縫い付けるように、大量の鎖が巻きついてきた。

 ここまでされて、冒険者の意図を悟った。気付くのが遅かったが…………


「逃げたのは嘘だったのか! まんまと引っ掛かったぞ!!」


 アリスは力を入れて、鎖から抜け出そうとするが、少しだけヒビが入るだけだった。時間を掛ければ、壊せるのは間違いないが、その時間さえもアズクから取り上げられる。もう目の先にアズクが来ており、剣を横薙ぎにしている最中だった。


「終わりだ! 『身体強化Ⅱ』!!」

「畜生がぁぁぁぁぁ!!」


 剣が更に速くなり、鎖ごとアリスの上半身と下半身を真っ二つに斬り裂いた。その勢いでアリスの上半身が上へ吹き飛び、その様子を見ていたバトラは「まさか!?」と驚愕していた。魔物といえ、人型の魔物の弱点になる胸辺りにある魔石を斬り裂いた上で、上半身と下半身に分かれてしまえば、生きてはいられない。

 アズク達の全員が勝ちを確信していた。




 そう、アリスが普通の魔物であったら、そこで終わっていただろう…………。だが、アリスは普通ではなかった。

 アズクが勝ち鬨をあげようとした。


「やっーーーー「やったと思ったか?」ーーは?」


 吹き飛ばされていたアリスの上半身が動き出し、アズク達は絶句していた。その後、絶句で終わらないぐらいの絶望が繰り出された。

 アリスの上半身と下半身の切り傷が蠢き、小さな人形の手が大量に現れた。その手が上半身と下半身を繋ぐように、お互いが手を繋ぎ合わせて元の姿へ戻っていく。ガシャッと音がしそうな感じでくっ付いていた。




「ふぅ、初めてやってみたが、成功したか」

「な、ななぁ………」


 上半身と下半身がくっ付いた後、『自己再生』で回復させて無傷の姿へ戻っていた。その異様な風景に声を出せなくなるアズク達。

 バトラはやっぱり化け物だなと呟いて、呆れた表情でアリスを見ていた。


「策は良かったが、相手が悪かったな。あの女が逃げたのは、一度は戦いから消える必要があり、森の中へ逃げて戻ってきた。次に、魔術師が放った隙間が大きい広範囲の火魔法はワザとだったんだな。女の魔力を察知されないように、囮の魔法で察知しれにくくさせて、その中で罠を作り出した。そして、俺はまんまと作られた偽の安全な場所へ誘い込まれたわけだ」

「な、なんで! お前はまだ生きているんだよ!? 魔石がある胸辺りを斬り裂いた筈だぁぁぁ!!」

「魔石ね、残念ながら魔石は胸にはないんだよな」

「なっ……」


 アリスの言う通り、魔石は胸には無く、別の場所に埋め込まれている。もちろん、魔石を壊されたらアリスであっても死ぬ。


「さぁて、反撃をさせて貰うよ。まずは、一度は逃げ出した奴に罰を与えないとな」

「うっ!」


 アリスに睨まれ、リンは恐怖を浮かべるがナイフだけは構えていた。ナイフはアリスへ向けられていたが、その行動は無意味になる。


「言っただろ? 森に逃げる奴はーー」


 リンの足にツンツンと感触を感じ、足元を見てみると、2体の白い人形がいた。その口は三日月のように歪められていた。




「ーー爆発させると」




 白い人形が発光し始め、リンは自慢の脚で咄嗟に離れようとしたが、少しだけ遅かった。

 小さな爆発が起き、リンは少しでも離れようと動いたので被害は脚だけで済んだ。脚をもげられて、片方は膝から先が無くなってしまったが、まだリンは生きていた。

 そのことに痛みを味わいながらも、生きていたことに安堵していたがーーーー


「まだもう一体残っているぞ?」

「逃げろぉぉぉぉぉ!!」


 そう、人形はまだ残っていた。森の中へ投げていた、関節が多い人形を。既に後ろへ回っていた関節が多い人形はリンに絡みついた。

 リンは逃げる脚が無くなっている上に、安堵していたせいで周りへの警戒を疎かにしていたため、簡単に巻きつかれてしまった。


「た、助けて……」

「止めろ! や、止めてくれ!!」

「ククッ、魔物が人間の言うことを聞くと思うなよ? 死ね」


 アリスが指パッキンをすると、巻きついていた人形が爆発した。込めた魔力も白い人形より多めだったので、リンは肉片も残らず塵になって…………死んだ。




「貴様ぁぁぁぁぁ!!」

「アハハッ! それで終わらないぞ! 『愚焔』!」


 怒り狂うアズクを無視し、ゼアクに『愚焔』を放っていた。ゼアクは視線から逃げる暇もなく、身体全体が黒い焔に包まれてしまう。


「ゼアク!?」

「な、なんだこれは!? 熱くないが、魔力をーー……」

「『水遁弾ウォタバレッド』!!」


 水魔法を撃ち出し、黒い焔を消した。だが、ゼアクは倒れており、息は既に絶えていた。ゼアクは魔力が少ししか残っていない状態で、強力になった『愚焔』を喰らったのだから、数秒しか持たなかった。


「まだだ」

「ダルク!!」


 次にダルクがいる場所へ視線を向けていた。

 アズクが呼んだため、ダルクは『愚焔』を身体に喰らわず、盾で防ぐことに成功していた。反応して成功したよりも、たまたま振り返ったら攻撃を防げたような感じだったが。


「早く捨てろ!!」

「うわわっ!!」


 身体へ黒い焔が移る前に、盾を捨てることでアリスの攻撃から逃れることが出来たが…………


「馬鹿だね」

「ごふぅっ!」


 戦っている途中だったバトラに後ろから胸を槍で貫かれていた。戦いの途中に、盾を捨てたことでバトラの槍を阻む物がなくなり、胸を貫かれてしまうのだった。




「ダルクゥゥゥゥゥ!!」

「がはっ、すまねぇ、お、前だけでも逃げ……」

「まだ生きていたのですか」


 心臓を貫かれても即死しなかったことで、倒れ伏せながらもリーダーを逃がそうと声を上げていた。だが、バトラはトドメとして、頭を踏み潰していた。


「き、貴様……」


 アズクはすぐにでも、ダルクを殺したバトラを殺したい心情だったが、戦局を見れば勝ち目がないのはわかっていることだ。怒りに任せて無駄に命を散らすよりも、今は自分より強い冒険者に討伐して貰うために、逃げて生き残るのが賢い選択だ。怒りを抑え、逃げるための隙を探し始めたアズクに、バトラはアズクがすることに気付いた。


「まさか、こいつが言っていた通りに逃げるつもり? 怖いから逃げたいなら逃げても構わないよ。死んだ仲間は弱かったし、屑と言う称号にピッタリだな。次は屑ではなく、少しはやれる相手を連れてくれよな?」

「貴様! 俺はともかく、俺の大切な仲間を屑だとほざくな!」

「屑は屑だろう。屑を屑と言って、何が悪いんだ? 屑に生きる価値はないんだよ。むしろ、殺してあげたんだから、私に感謝をして欲しいな。世界の害悪である屑の屑を殺してありがとうございますとーーーー」


 怒りで逃げる選択を捨てたアズクは、挑発をしていたバトラに向かおうとするアズクだったが……


「お前は俺が相手をすると言っていただろ?」


 まんまと挑発に乗ったアズクを止めたのは、アリスだった。アズクはアリスを倒さないとバトラの元に行けないとわかり、魔力欠乏になることを覚悟し、『身体強化Ⅱ』を発動してアリスを倒そうとする。『身体強化Ⅱ』は5倍の力を得ることが出来、アリスと互角以上は戦えるようになっている。3倍に上昇する『身体強化』だけで狂気状態のアリスをなんとか捌いていたことから、互角以上には戦えるとアズクは判断していた。


「見苦しいな。もうお前は終わっていることを知れ。『激昂発作』」

「えっーー」


 アリスが発動した瞬間に、アリスの姿が消えてアズクは見失っていた。更に、胸から痛みを感じて触ってみるがーーーー




 空洞が出来ていた。




「ごふぁっ、は、速すぎるーーーー」

「10倍の力ならこんなものか。相乗しなかったのは残念だが、同時に発動出来るのはいい発見だな」


 アリスは10倍に上昇したスピードでアズクの横を駆け抜け、心臓を抉り取っただけだ。アズクの身体能力ではアリスの姿さえも捉えられなかった。


「みん、な、ごめん……」


 そう残して、最後の冒険者も倒れた。この戦いはアリスの勝利で決まったのだった…………









次は夜9時を予定していますが、それまでに一話を書けなかったら明日の夜12時に延期するかもしれませんので、宜しくお願いします。

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