第4話 ステータスを見せること
俺が拾ってきた薪を兄貴の火魔法を使って暖炉をとる。パチッと薪が乾いて燃えてさらに火は強くなった。
「お前何にも持ってないのな」
俺の持ち物を見て兄貴が呆れて笑った。仕方無いだろう、俺が持っているのは腕時計とジュースを買おうと思った用の小銭くらいだ。それを見たところで何も反応を示さなかった。
時計の針を兄貴から聞いた今の時刻に合わせる。大体7時くらいらしい。兄貴の持ち物から食べ物を受け取って咀嚼しながら軽く話し合った。
「晴彦は何しにこの森にやって来たんだ?」
「ここに来たくて来た訳じゃないんだわ。話を簡単に話すとな、俺は異世界から来た人間らしい」
「ああ、迷い人ってやつか」
「迷い人?」
「なにかしらが要因でこの世界に来てしまった人をそう指して呼ぶんだよ。それで俺を見て人族とか言いやがったのか」
「兄貴が人族じゃなかったとして、何族なの?大体予想は付くけど言ってみ?」
つい先ほどまで殺されかけていた相手に清々しいほど堂々と話している。兄貴と話しているとその辺が気にならないのは、俺の性格ゆえか。
「かつて魔神と呼ばれたものに生み出されたとされる一族。人族と同じ外見だが、肌の色が浅黒いのと魔力が強いことで人族から嫌われるだけの魔人族ってとこだな」
「それで殺されるの?物騒だね」
「過去に魔人族が人族の街を幾度なく滅ぼしている、今だってそんな事をしているから嫌われたままなのさ」
「……そっか、魔人族は基本的に悪い奴ってことで良いのかな?」
「それでいい。お前は迷い人だからその考えでいた方が生きやすいだろう」
「でも兄貴は良い人。つまりは優しい人」
「俺は、人じゃねえって言ってんだろ…」
「俺には、あの集団の方が悪魔に見えるよ。出逢い方が悪かったと考えるしかないだろうね」
先ほどの集団に囮にされた経験が初めての人族に対しての印象なのだ。今更魔人族が人族から嫌われていると言われても、しかもそれを魔人族から聞いてみたとしたらどちらを良く捉えるかは決まっているだろう。この状況に限ればだけど。
「……迷い人はやっぱり変わっているんだな」
「変わってるさ、俺からしたらこの世界が狂ってるからさ」
そんな返事をしたら兄貴は一息ついて言葉を発した。
「ステータス」
そして兄貴は自分のステータスを俺に見せてきた。そこには兄貴の本当の名前と種族、技能、称号が書かれていた。どうしていきなり見せてくれる気になったのだろうか、しかもより鮮明な情報をである。
「これは…」
「お前には見せてもいい。普通はステータスとかは見せないのが基本だ。しかし、いや、だからだ。この世界では自分のステータスを相手に見せることが最上の信用を示した証なんだよ。少なくとも、魔人族は…だがな」
嬉しいことを言ってくれる。ここは素直に「ありがとう」と言っておいた。
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名前【アバン】
種族【魔人族】
技能【魔力Lv.7】【肉体強化】【魔力強化】【剛力】【跳躍】【火魔法】【水魔法】【雷魔法】【風魔法】【土魔法】【魔人族言語】【人族言語】
称号【なし】
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