第2話 ステータス
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名前【御影晴彦】
種族【人族】
技能【魔力Lv.1】【解析】【言語翻訳】
称号【異世界から来た人間】
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名前と種族、技能、称号の項目がある。ステータス画面の項目に触れてみたところ称号の【異世界から来た人間】から派生した画面にヘルプのマークが現れた。それにタッチすると知識が流れるように頭に入ってくる。
『称号は世界で何かを成した時に授かる物で、その称号によってステータスに何らかのボーナスを得ることが出来ます。称号のなかには【???】と表記されないものも存在するため、正しい称号の名前を知るには【解析】の技能を使用する必要があります。』
「異世界から来た人間?これのボーナスがこの技能なんだろうか」と考え見ると頭に解析の文字がぼんやりと浮かび上がってくる。「解析…」と呟くと情報が頭に流れてくるのだった。
「……めっちゃ便利な技能だ」
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【異世界から来た人間】
異世界からこの世界に来た人間には【魔力Lv.1】【解析】【言語翻訳】の三つが与えられる。魔力は魔法を使うと消耗し、使用回数に応じて魔力の量は増大する。次に解析。これは知りたいものに解析と念じるだけで情報を入手できるが、その万能ゆえにこの世界では貴重な扱いを受けている。人前での使用は控えるべきだろう。最後に言語翻訳である。これは理不尽に世界を跨ぐことになったものへの祝福である。これさえあれば会話に困ることはない。
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ステータスを消したいと念じるとやはりこれは消えた。この世界ではこういうものなのだ。どういう理屈かは考えてもキリが無いからバンバン使っていくことにする。
一先ず、「ステータス」のことは置いておこう。
森に進むかどうかだが、ここで無暗矢鱈に歩き回るのは危険だろうから街のある方向に進むことにしよう。そう決めた直後だった。
まだ先の森に何かが落ちてきた。
街に行くと決めたばかりなのに好奇心が勝ってしまった。俺は先に進むことにした。
落ちてきたのは何なのか、危機感も感じずに進むのは愚かしいだろう。相変わらず優柔不断な自分に嫌気を感じながら進みながら思った。
「そういえば、こっちはさっきの集団が歩いていった方向じゃないだろうか」そう思うと、誰かがいると思うだけでちょっぴりの安心感が生まれた。
安心感とともにやってきたのは爆発音だった。
凄まじい轟音と爆風に体が転げ回り傷を負った。そこでちょっぴりの何かは消え去り、この場所にとどまることの恐怖を俺に植え付けた。
「…腰が抜けて、立てないとか」
もう目の前で繰り広げられるさっきの集団と肌の浅黒い人の戦い、まさに殺しあいを見ることしか出来なくなってしまっていた。
大人数に対して浅黒い人を寄ってたかって狙うソレに、この世界の人に恐怖を覚えた。この世界では、殺しあいは常に隣り合いで油断したら俺もああなるのだろうか。怖い、ここ怖すぎるよ。
浅黒い人は魔法を連発して彼らを敬遠しているように見える。どこか怪我をしているのかもしれない。早く逃げてほしかった。赤の他人でも目の前で死なれると気分が悪い。少なくともこの場で出来ることのない俺はとにかく息を潜めるだけ。ああ、身勝手。
「ちっ、敵わねえなっ!」
剣士の男が魔法で近づけないことに苛立ち焦りを見せる。魔法には魔法と少女が応戦しているようだが、手数は部が悪いようだ。盾役はなんとかしようとしているが魔法が意思を持ったように彼を避けて突き進む。
「せっかく手傷をおってんのによ!ここまで強いとは…」
「リーダー、撤退の指示を」
「逃がすと思うか?お前らを逃がすと後が怖いからな」
今気付いたんだが、声が綺麗に聞こえるほど彼らは俺に近づくように戦闘をしていないか。ただの偶然なんだろうけどやばいな、立ち上がろうと手を付いた瞬間、パキ…落ちていた枝を折るように潰してしまった。
大きな音がしている戦闘をしているくせに小さな俺の音を拾い上げた彼らはこれしかないとばかりに叫んだ。
「誰だか知らないが!」
「ええ!分かっております。私達は死ぬわけには行きません。この情報を街に持ち帰らなければなりません」
大義名分のもとに俺を囮にしようというわけか。
「逃がすと思うか?」
魔法の矛先が俺に向けられた。
「彼がいてくれて助かりました。【呪縛魔法】代償は我が血なり」
少女の顔から血の気が失せていく。同時に浅黒い人の体は金縛りにあったように動かなくなった。
「五分ほどで…効果が切れます、急いで……」
少女を抱き上げて彼らは走り去っていく。最後の仕上げとばかりに俺を大男が掴み上げて浅黒い人の方向へ投げ飛ばす。
「はああああ!?この!人でなし共がァァああああ!!!」
俺は誰かの投げた閃光玉に目を潰されながら彼にぶつかるまで叫び倒していた。
ぶつかり動けない彼に覆い被さるように倒れてしまい、その上でのたうち回った。緊張感なんかどうでも良かった、もう死ぬのかと思ったらどうでも良かった。最後くらい笑ってふざけて死のうと思った。せーの!
「目がぁぁぁぁ!め、目がぁぁぁぁ!」
でも、本当に目は痛かった。