3話目 終わり
いつもと変わらず放課後をむかえる。
本当になにも変わらない。
違うとすれば私の感情くらいだろう。
いつもなら学校が終わったことに対する安堵とかだが今日は楽しみだという感情だ。
由希姉さんを呼び、昨日は学校帰りにそのまま図書館へ向かったが今日は老川相談所へ向かう。
その途中で昨日もらったメモに書かれた電話番号にかけてみる。
数コールで繋がる。
「もしもし、老川相談所です」
出てきたのは男の人ではなく女の人だった。
図書館の館長の旦那さんが出てくるとばかり思っていたのたが
「月宮 紗夜と言います。老川 美恵子さんに紹介して頂いたのですが」
「美恵子さんですか?少し待ってて下さい。 雅也さん~ 月宮 紗夜さんという方が美恵子さんの紹介で」
電話の向こうで慌ただしい音が遠くで聞こえてくる。すぐに男の人に代わって出てくる。
「今代わりました。老川相談所、老川 雅也です」
「今からそちらに行ってもいいですか?」
「えぇ、こちらもずっと待っていたので例え用事があっても後にまわします。お待ちしています」
そこまでしなくてもとは思うが優先的に相手をしてくれると言うのなら甘えさせてもらおう。
同じようなことで、くれるというのに遠慮する大人は多いがその方が失礼ではないかと思う。
私はまだ子どもなのだろうか?
着いたところはそれはもう探偵事務所のような建物だった。
外見と中身の歳が違う探偵が出てくるアニメの事務所みたいな感じだ。
窓には名前は書いてないが
階段を上がろうとすると中から人が出てくる。
赤っぽい目が印象的な男の人と可愛らしい女の子の2人
「ありがとよ。雫也によろしく伝えといてくれよ」
「わかった」
女の子は小さく手を振るだけ。
狭い階段で途中ですれ違うのは難しそうなので下で待っていると彼らは急いで階段を降りて私達に悪いなとつげる。
傍に置いてあったバイクにかけていたヘルメットを女の子に被せている彼らを横目に階段を上がると彼らが出てきて開いていた扉を閉めようとして出てきた男の人と目が合う
「お、眼帯のあんたが月宮 紗夜か?」
電話の時の丁寧な口調とは違って親しみやすそうな口調で聞いてくる。
「そうです。あなたが老川 雅也さんですか?」
「おう、そうだ。中に入りな」
と手招きする。
中の内装は外の見た目を裏切らずに探偵事務所みたいになっている。
奥には社長イスとデスクを置き、その上にはノートパソコンがある。その手前には向かい合わせのソファの間に背の低いテーブル。
ただ違うとすれば置物が独特のものばかりだ。
聖杯とかというトロフィーのような形の物や丸い大きな透明の水晶、Tの上に輪がついた十字架のような物。
一番目を引くのは頭蓋骨で頭のところには魔法陣が書かれている。
「なんですか、これ…」
たぶん誰もが思うことだろう。
私の場合は口に出して言ってしまったが。
「老川相談所は普通の相談所ではないんですよ。魔術、呪術に関係したことを専門とする相談所なんです」
と奥からお盆の上にマグカップを4つ置いて持ってきた女の人、多分私と同じか少し上くらいの人だ。
「こいつは俺の助手をやってる。目谷 紗々来だ」
「よろしくね」
と笑顔で言ってくる。
よくもまあ、笑顔を作れるもんだなと思ってしまう。
私にはできないことだ。作り笑いでも引きつってしまう。人前でやることは今のところないが
私もさっきは電話越しだったので自己紹介をと思ったが由希姉さんが先に口を出す。
「こちらは月宮家のお嬢様、月宮 紗夜様です。そして私は使用人の九条 由希です」
その自己紹介に彼らは全く別々の反応をした。
紗々来さんの方は至って普通に、
「使用人っているんですね。でしたら月宮さんって呼ぶより月宮様と呼んだ方がいいですか?」
と聞いてくる。
それに対しての答えは決まっている。
「いえ、普通に月宮とか紗夜と呼んでいいですよ。というかその方が嬉しいです」
一方で雅也さんは普通ではなかった。
「やっぱり月宮の使用人は九条家か、ならもう1人の使用人は操世家なんだろ?」
顎に手を当てて、微笑んでくる。
どうして、予想ができる。
やっぱりとはなんだ?
「九条家なら刻印を使えるのか?」
「それについてはお答えできません」
「そんな答え方だったら答えてるようなもんだぞ」
なぜ、この人はここまで知っている。
私達が雅也さんに対して警戒心を持ったところに紗々来さんが入ってくる。
「雅也さん、またそうやって相談者に警戒心を持たせるような感じで話さない。ごめんなさい。このおっさんはこうやって毎回、相談者に警戒されるような情報を自慢のように話すんです。その情報はおそらく図書館に保存されてる本に書かれていたものだと思いますよ」
そういえば館長も図書館の本を旦那さんはほとんど読んだと言っていた。
最初の印象とはずいぶんと差のある人だ。
親しみやすいということはなさそうだ。
「まぁいいさ。座れよ。あそこで保存してる本を読みに来たってことはそのお嬢さんの眼の呪いを解こうとしてるんだろ?」
向かい合わせのソファの一番奥に座らされた。
その横に由希姉さん、向かいに雅也さんと紗々来さん。
確かここは上座というのだろうか?
上座って何かあったら逃げ遅れそうなところだなと思ってしまう。
「まず、あんた達が調べたことを教えてくれ。俺が知っていることを話すだけだと時間の無駄になってしまう」
私ではなく由希姉さんが私達が調べわかったところまで説明する。
家で見つけた本の話、図書館の本のから得た話、呪いの解き方についてはわかっていないこと
を
その説明を聞いた雅也さんは頷く。
「だろうな。あんた達の家をいくら調べても呪いの解き方なんた出てくることはないだろうな。わかった時点で解かれてしまうからな」
わからないことを必死に調べている子供を見るような大人の目で見てくる。
子供から見れば嘲笑うかのような、大人から見れば暖かく見守っているような
「雅也さんは知っているんですか?」
「あぁ、月宮の呪いの月兎については結構調べたからな。ここは相談所だ。俺らに相談して一緒に悩んで答えを見つけるのが正しい姿勢だが先に俺が調べたかぎりでの答えを教えよう」
息を呑む。
そんな息を呑むなんてことが今までなかった為、この表現がどんなものなのかと思っていたがまさにそのとおりだった。
そして感覚的に時間が遅く感じる。
雅也さんの口の動きが以上に遅く見えてしまう。
早く、早くと思ってしまうではないか。
「その呪いを解く方法はない」
え?
無いだと
私が聞き返そうとする前に由希姉さんが聞き返す。
身を乗り出して聞き返す。
「どういうことですか?お嬢様の眼の呪いは解けないんですか?」
雅也さんは手を前に出してまぁまぁとする。
「理由は簡単だ。解く方法がなくなってしまったんだ。紗々来、用意していた写本を持ってきてくれ」
「わかりました」
紗々来さんが奥のノートパソコンの隣に置いてあった本を手に取る。
「投げていいですか?」
「あほ、大切なもんなんだ。原本ではないとはいってもな」
どうして投げるなんて発想になったんだ。
確かに投げれば早いが…
紗々来さんに写本を渡された雅也さんはその写本で紗々来さんの頭をたたく。
いや、大切な本なのでは?
その写本をめくり、あるページを開いてテーブルに置くと指を指す。
「で、ここだ」
指を指したのは昔の日本語、私は読めないやつだ。
代わりに由希姉さんが読んでくれる。
「この呪いは術者が寿命で死ぬこと完全なものになる。解く方法は術者を殺すこと、またはその子孫を殺すこと。たが術者はこの呪いのために既に去勢し子孫はいない。と…」
確かにそれは解く方法がない。解けてないということは寿命で死んだということだ。
そもそもその人は何年前の人だ。
去勢して子孫もいないとなると本当に打つ手がない。
だが、これは信用できる物か?
「この本は一体どこの物ですか?」
「呪いをかけた張本人が書いたやつだ。他の所を読めば彼しか知らないようなことまで書かれている。呪いをかける瞬間の話とかな」
本を手に取って見ている由希姉さんの方を見るとわかりやすい表情ではないが悔しそうな顔で頷いてくる。
「家で呪いの解き方の本を見つけたそうだな。だけど解けてない。その呪いは暴走したり、異常は起こしてないか?」
「はい、本来は目を合わせると幻覚を見せるものらしいですが今はときおり私がその人を見るだけで見せてしまうことがあります」
「それは呪いを合ってない解き方をした影響だ。呪いというのは解き方を間違えると悪影響を及ぼすことがあるんだ。だから色々と試すというのは危険なことで運が悪ければその眼帯も意味をなくすぞ」
尚更、解けないではないか
正しい方法が潰えた今、私に手を出すことはできない
今ままで色々と調べてきたがそれらは今回ほど奥深くまで眼のことを知ることが出来なかった。
だから何度も調べては方向を変えとやってきたのだ。
流石に今回は違う。
答えに行き着いて行き止まりだ。
抜け出す道があると信じていた目的地には何も無かった。
何も無いどころではない。
次の道も変えれる方向も見えない。
いつかは無くなると思っていたから…
今までこの眼を残してきたのに
「絶望しているところ悪いんだが、一つ聞きたいことがある」
私は自分の思考の中に埋もれてしまっていたみたいだ。
雅也さんの声で現実に浮上してくる。
「なんで、その眼を捨てたいんだ?俺ならそんなもったいないことはできないぞ」
絶望しているところにこの仕打ち
「持っていないからそう言えるんです!!」
私自身が驚くほどに声を大きく出してしまう。
「この眼が無ければ私の生活はもっと明るかったのに… 友達だって出来て部活もやっててもっとちゃんと出来たはずなのに!!」
「その眼を使った言い訳か?」
反論できない。
自分でもわかっていたんだと思う。
この眼を言い訳に使っていることを
「友達とかなんか作ろと思えば作れるだろ。向こうから接してくるのを待っていたんじゃないか?そんなんじゃだめだ。もっと自分で動きやがれ。お嬢様だからといって甘えるな」
雅也さんからの言葉は私の心を深くえぐっていったような気がした。
返しのついた言葉の槍で突き刺し引き抜いていった感じに
「こんなことを言う性分じゃないんだがたまにはいいだろう。相談所らしくてな」
紗々来さんは雅也さんの方を見ながらクスクスと笑う。
「珍しくいいこと言いますね」
「うるせぇ」
由希姉さんは私の隣で頭を下げる。
「ありがとうございます。私達ではあまりそのようなことは言えないので」
雅也さんが冷めたコーヒーを一口飲んでから私の方を見てくる
「で、大きな声を出してスッキリしたか?」
「はい」
たしかにスッキリした。
なんか絶望していたのが過去の出来事で今は前向きに生きていくことができてるみたいな感じだ。
「で、その眼を活用してみないか?」
「え?」
「その眼を使うんだよ。俺のところには魔術、呪術なんかの依頼がくる。今は俺と紗々来が解決してるんだがその眼を使って解決に協力してみないか?」
今までこの眼を使うなんて発想がなかった。
怖いのだ。
相手に恐怖を与える怪物が誘惑する幻が
だから無くなって欲しかった。
だが、それは叶わない願いだった。
無くならないなら無くならないなりの対応をと言ったところか。
人を惑わす、脅す狂気の眼を隠すのではなく使っていく。
それはそれでいいかもしれない。
面白いかもしれない。
「…今すぐには承諾出来ないけど前向きに考えてみる」
「おう、それでいい。ついでに九条のねぇさんもどうだ?」
ついでにとはひどい言い方だ。
「私は紗夜様の使用人です。紗夜様の行くところならついていきます」
「ならいいさ」
というか雅也さんははじめから私に協力してくれと言うつもりだったのだろうか?
月宮の人が来たらここを紹介してくれと言うくらいなのだから。
その日の夜、私は夕食後に書斎に向かった。
この前みたいに使用人の服ではなく普通の服で
今回も3回ノックする
やはり、2回で十分ではないだろうか?
「入っていい?」
「いいぞ」
中でいつも通りの所にお父さんは座っていた。
「なんだ?」
私はここ最近のことをすべて話した。
特にどうと言って欲しかった訳ではない。ただ聞いて欲しかった。
学校であったことを親に話す子供のように要領を得ない話し方だったとは思うが色々と
由希姉さんと一緒に掃除をしたこと、見つけた本について、学校での私の立場について、図書館の本の多さに驚いたこと、私の眼の呪いについて、図書館の館長と仲良くなったこと、老川相談所で雅也さんに言われたこと
そして、老川相談所で自分の眼を使って協力、手伝いをしたいことを
その全てを何言わずに聞いてくれた。
時に頷きながら、時に驚きながら
元々、表情が豊かではない人なのだが全てを聞いた後に大きな声で笑った。
「ありがとう。よかったよ。私はあまり子育てが出来なくてね。子供とどう接してあげればいいのかわからなかったんだよ。でも十分に紗夜も成長してくれてるみたいでよかった。最後の相談所については好きにしなさい。自分でやりたいことがあるならそれに挑戦して行くとこが大切だからね」
「わかった。聞いてくれてありがとう」
再び学校での話
今日は少し早く学校に来た。
いつもと変わらない校門を通り過ぎ、いつもと変わらない玄関で靴を変え、いつもと変わらない廊下を進み、いつもと変わらない教室に入り、いつもと変わらない席につく
何にも変わらず教室にただ一人。
それから5分もたたないうちに一人教室に入ってくる。
隣の席の女子だ。
いつも教室に最初に来ているのか私を見て「えっ?」といった顔をする。
すぐに何も無かったかのように席につくとカバンから本を取り出す。
彼女は活発な方の人間ではなくどちらかというと文学少女でおとなしい方だ。
まぁ、まずは彼女から話しかけてみようか。
どんな顔をされるかはわかっているがめげずに話しかけてみよう。
読んでいただきありがとうございます。
一応、書き終わってこれは番外編の過去編みたいだなと思いました。
そのためこの話は終わりますが続き(これが番外編だとすると本編に当たる部分)を作っていきたいなと思います。
私がこのような話を作るのは絵が描けないための代用な感じで始めました。そのため一部の外見の設定しかありません。
例えば、紗夜の右眼は赤っぽいという程度
私の想像では紗夜はハナヤマタの関谷 成のような髪型、由希は黒いストレートという想像でやっていますが…
そのような部分は皆さんの想像でお願いします。
この話を作って楽しかったので他の話も作っていくつもりですのでもしよかったら見てくださいね。
でわ( ´ ▽ ` )ノ