2話目
これは学校での私の話
高校生になったからといって私の立場は変わることなく中学生の時からあまり変わり映えはしてはいない。
私の立場は少し頭がおかしい厨二病お嬢様というものだ。
最初の印象というのはずいぶんと根強く残こり、今後の周りの評判に影響する。
私を初めて見た者で最初に目を惹かれる物は決まっている。眼帯だ。
眼帯をしている人というのは珍しくとても目を惹いてしまう。
そして眼帯をしている人にどのような人がいるか
病気だろうか?
と考える人は多い。
一方で厨二病か?
と思う人は少なからずいる。
そして噂として広がるのは厨二病の方だ。
話題として「あのクラスには眼の病気の人がいる」と言うより「あのクラスには厨二病の面白いやつがいる」と言う方が盛り上がってしまう。
だが、それだけなら興味本位で話しかけてくる人がいてその人が「あれ?こいつ普通じゃないか?」と思ってくれるならそこで終わる話
ほかに他の人と大きく違うこと、それは使用人の存在。
別に由希姉さんが悪いとは少しも思っていないが学校の送り迎えを由希姉さんに頼んだのが間違えだった。
お金持ちの厨二病のお嬢様となると話しかけて来る人はほとんどいなくなる。
学校で話しかけてくれる人なんていない。
自分から話かけても面倒くさそうな顔をされてしまって躊躇してしまう。
それが学校での私の話。
嫌われてるとかいじめとかでは無くても私が学校に行きたくない理由だ。
クラスという集まりの中に1人でいる私は授業以外にやることなんてない。
部活だってやっていない。
朝、学校に行って夕方にそそくさと帰える。
そんな環境に今は実に感謝する。
帰ってすぐに調べることができる。
仮定でしかないが私の眼に関わる本の搜索ができるというのは実に嬉しい話だ。
もしかしたらこの眼が無くなる日も近いうちにくるかもしれない。
学校が終わりすぐに由希姉さんに迎えに来てくれと連絡する。
校門で待つこと5分で由希姉さんがリムジンとか外車などの高級車ではなく普通の軽自動車で迎えに来てくれた。
前は高級車で来ていたがお嬢様だと思われないようにしたいからやめてくれと言ったからだ。
由希姉さんもいつもの使用人の服ではなく私服だ。それも同じ理由だ。
「いつもありがとう。由希姉さん」
「いいえ。使用人としての務めなので。紗夜様が学校に行っている間にも色々と調べてみたのですがあのような金庫は他にはありませんでした」
なら残りの本はどこにあるのだろうか?
元々、あそこにすべての本が仕舞われていたとしたら今ない理由がわからない。
門外不出なのだから持ち出すことはないだろう。盗まれでもしない限り。
少し違うところから考えてみよう。
なぜ、倉庫に金庫があったのか
どうして倉庫にだけ金庫があったのか
他のところに金庫があった可能性はある。
由希姉さんもそう思って調べてくれたのだ。
もし、他のところにもあったとしたら
倉庫の金庫だけが残されていたのか……
家を改装した時に他の所がなくなってしまったのではないか?
「由希姉さん、家を改装してあの城みたいにしたのはいつ?」
「えーと、私が紗夜様と初めてお会いした時には既にあの家でした。母が働いていた時だとは思いますが。何でしたら、連絡してみてください」
と運転中でもスマホが見れるようにおけるホルダーに入っているスマホを取り、由希姉さんの母親の九条 早苗さんに電話する。
数コールの後に早苗さんが出てくる。
「もしもし」
「あら、もしかして紗夜様ですか?」
「はい、お久しぶりです」
早苗さんは私が12歳になるまで使用人として働いていた。
じつに優しい方で美しい人だった。
時々、家に来てくれるがその優しさと美しさは歳をとっても衰えてはいなかった。
どうすればあんな人になれるのか知りたいところだ。
「どうしたんですか?」
「今の家になる前について教えて欲しくて」
「前とは改装する前のことですね。改装したのは紗夜様の曾祖父です。もともとは和一色でしが洋風の物にとても関心があった為、家もということで改装されたと聞いております」
「ならその前の家の時に置いていた物はどうしたんですか?流石に今の家には合わないだろうし」
「物は別の人に譲ったとか聞いています。譲れないようなものは今も倉庫に保管しているかと」
虎の屏風とかのことだろう。
ならば本も全て倉庫の金庫にあってもいいと思うのだが
「何かお探しなんですか?」
早苗さんは私の考えていることをよく読んだ行動をしてくれる。
昔から何かを頼もうとすると既に終わっていたり準備が出来ていたりする。
「えぇ、本を探していて。その本があると私の眼を治すことができるかもしれないんです」
早苗さんは少し黙る。
考えているのだろう。考えている時は電池が切れたロボットのように動きが止まる人だ。
「紗夜様の曾祖父の奥様が愛読家で様々な本を持っていたと思われます。改装した時に全ての本をしまうしまうことが出来ず、一部の大切な本を図書館に保管していただくことになったはずです。他の本は書斎に置かれている物です」
「ありがとうございます。もしまた何かありましたら電話しますね」
「えぇ、こんなわたくしに出来ることでしたら何でもいたします」
通話を切り、スマホを元の場所に戻す。
「由希姉さん、図書館に行って。そこにあるかもしれない」
「はい、わかりました」
と車の進行方向を変え、図書館へ向かう。
書斎の本が曾祖母の持ち物だったとは知らなかった。しかし、あの統一性の無い本の中に私の眼についての本は無い。
私と父と由希姉さんで1度だけあそこの本を整理した時に一緒にその関連の物も探したがそんなものはなかった。
大切な本というなら門外不出の本もそうだろう。
外に出したくないほど大切な本ということだ。
図書館に着くまであればいいのにという期待となかったら他にあるのかという不安でいっぱいだった。
私は図書館という所には来た事がなかった。
本は読まないし、勉強をするためにここに来ることもない。
中に入ると書斎とは比べ物にならないほどの本の多さに圧倒される。
どこを見ても本、本、本ばかり
本好きの人ならこれほどうれしい所はないのではないかと思う。
私は読まないのでうれしくはないが
「由希姉さん、保管してもらっている本はどこに行けば読めるの?」
「私もあまり利用する機会がありませんのでわかりませんがカウンターに行けば教えてもらえるかと思います」
と言われるがカウンターがどこにあるなんて私にはわからない為、由希姉さんの後に付いていく。
先を歩く由希姉さんを見てこんな時に使用人の服なんて着ていたら目立って仕方ないのだろうなと思った。
由希姉さんがカウンターの人と話をしている間、私はおすすめの本のコーナーに置かれている本を手に取っていた。
本を読まない私でも知っている有名な人の本、表紙を見ただけでは手に取りたいと思うこともない本、世の中のおかしいことついて色々書いてある本
そして私が手に取ったのは[親子の絆]という親子のお話が絵本のように書かれた物だった。
幸せそうな親と子の絵が暖かい色で書かれている。
どうしてこれを手に取ったのかはわからないが読んでみるとずいぶんと偏った考え方の本だった。
親子は幸せでなければいけないとか、親は子を愛さなければならないとか
「バカバカしい」
口に出すつもりはなかったが無意識に声が出てしまったようで周りの人が見てくる。
恥ずかしかったわけではないがすぐに本を戻して由希姉さんのところに向かった。
「由希姉さん、どうだった?」
「今、確認してもらっているところです」
待つこと30秒程でカウンターの人が戻ってきた。
「確かに月宮家の重要書類としていくつかの本を保管させてもらっています。ですがそれらをご覧になるには月宮家であることを確認してからということでしたので身分証明書などはございませんか?」
「学生証ならあります」
学生証は学校に行く時しか持ち歩かないため休みの日とかに着ていたら1度家に帰らなければならなかった。
「はい、大丈夫です。お借りします」
いったい学生証で何がわかるのかと思う
氏名、学校名、住所、生年月日が書かれているだけなのだが私がどこの娘でとかまでわかってしまうのだろうか?
「では、お返しいたします。今、館長をお呼びしましたので」
今度は体感では5分ほど待たされた気がしたが1分ほどで館長が来た。
「お待たせしました。月宮 紗夜様ですね?」
「はい」
「私は館長の老川 美恵子といいます。御案内いたしますのでついてきてください」
私の印象では館長となると髭の生やした丸いおじさん、ちょうど成金の百円札を燃やして明るくなっただろと言っている絵の人みたいなのが出てくるのかと思ったが菫さんと同じくらいかその少し下くらいの女性だった。
その人について行くと本の倉庫の様なところにつれてこられた。
さっきよりも棚と棚の間が狭くより多くの本があるように感じる。
「狭いので気を付けて下さいね」
と注意されるが私はそんなに太くはない。
引っかかる物なんて持っていない。持ち合わせていない。
私の想像していた館長ならお腹が引っかかって通れなくなりそうだが
館長が止まったのは結構奥の方まで来たところだった。
「こちらです」
と指した所には月宮家と書かれており、古い本がいくつか置いてある。
もちろん手に取って読むのは私ではなく由希姉さんだ。
本を手に取らない私を見かねてか館長が話かけてくる
「ここに何冊の本があると思いますか?」
「さぁ、100万冊とか?」
「約81万冊ほどです。その中で私がちゃんと読んだことのあるのは10冊ほどしかないんですよ」
「あまり読まないのに館長をしてるの?」
「本来は私の夫が館長なんです。今は別の仕事をしてますが」
本のことをあまり知らなくても館長になれるというのは面白い話だ。
政治を知らずに政治家をやるのと同じように感じる。たまに選挙に出ている歌手とかが当選したらそんな感じになるのではないかと思う。
「館長をほっぽり出して別の仕事って何をやってるの?」
館長はメモ帳を取り出して何かを書く。
その書いたメモをちぎり、私に渡さしてくる。
そこには電話番号と住所が書かれている
「私の夫はここにいます。もし時間があれば寄ってあげてください。月宮の人が来たら私を紹介してやってくれと言われてましたので」
その住所を調べると「老川相談所」なるものが出てきた。
「相談所?」
「そのようなんですが私もよくわからなくて。普通の相談者は受け付けてないとか」
確かに普通の人は受け付けていません。と書かれている。
少なくとも私は普通ではない。私の眼のことを相談できるのだろうか?
由希姉さんが一通り確認し終わったのは暗くなった頃だった。
それまでずっと館長と話をしていてずいぶんと仲が良くなったと思う
「どうだった?なにかわかった?」
「これが紗夜様がずっと探していた物だったかと聞かれましたら、はいと答えますが流石に頭の回転が追いつきません」
「でしたら休憩室に行ってコーヒーでも飲んで落ち着いて整理してはいかがですか?」
と館長の提案に乗り休憩室へ向かった。
本当は本も持っていきたかったがそれは出来なかった。
私が読めるわけではないが。
コーヒーは館長が奢ってくれた。
私と仲良くなったしるしにと
休憩室には誰もいない。
そもそも図書館自体にほとんど人がほとんどいない。閉館時間も近い、ましてや夕食時だ。
由希姉さんはコーヒーを飲みながらメモ帳に色々と書いて頭のなかを整理している間、本を読んでいる時の様に話をすることはなく見守っていた。
「紗夜様、お話してもよろしいですか?」
由希姉さんが口を開いたのはコーヒーも飲み終わり、閉館時間手前だった。
では、と由希姉さんが話し始めた。
その話は月宮の初代が始まりだ。
その頃は月宮という名前ではなかったが初代が当主としていた家系が大きな権力を持っており、それを奪おうする者達がいた。
ある時、未来に月宮と名乗る家系とそれを反対する家系の二つの家系で大きな争いがあっていたという。
ただの争いであれば良かったのだが少し違う。
相手の家系には呪術師なる者が数名いたそうだ。
その呪術師のうちの一人が内部から崩壊させようと当主に呪いをかける。
呪術というのはあまり成功率が高くないのだがその呪いが成功してしまう。
その呪いが「月兎」
月には狂気の力があるとされ、相手を狂気に陥らせる幻覚を見せる赤い眼を持たせるというものだった。
当主にその呪いをかければ当主の側近から崩壊し始めるだろうというもくろみだったがうまくはいなかった。
逆に勢いに拍車をかけた。
月宮の初代とその側近の人たちは当主に呪いがかけられたとなれば士気が下がってしまうと考え、その呪いを神からの授かりものだということにすることで士気を上げることに成功した。
初代は常に目を瞑り、1人でやってくる敵を前にその呪いの効果を発揮した。
初代の子供、二代目にも同じ眼を持って生まれる。
呪いは血脈に関係し子供にも受け継がれてしまったのだ。しかし、それも呪いではなく神の眼だと言い隠し通した。
その頃から月宮と呼ばれ始めたという。
月は呪いの中にあるように狂気、幻覚を意味するとしてそう呼ばれたという。
呪いの解き方については初代も探したがそれは見つからずにいた。本来は次の世代に受け継がれてしまう呪いのため、解き方の模索も引き継いでもらうべきだったが神の眼として隠していることもあり二代目には告げることなく、初代は死んでしまう。それではこの呪いは永遠だと思った初代の側近は書物として呪いについて残した。
争い自体は二代目が20歳手前で終わる。
その書物を見つけた四代目辺りから呪いに異変が出始めた。
元々は目を合わせなければ効果のなかった眼だったが合わせることなく幻覚を見せてしまい始めた。
そのため四代目は呪いについて徹底的に調べるが呪いを消すことなく死んでしまう。
その徹底的に調べた功績が由希姉さんの読んだ本だという。
「ここまで調べたのにも関わらずになぜ、呪いが解けていないのかは書かれてはいませんでした」
解けない理由があったのか
時間がなかった?物がなかった?
なにが原因だろうか…
何はともあれ、今の私には揃えれない物はあまり無さそうだが…
「あの…私が聞いてもいい話だったのでしょう」
と館長が聞いてくる。
「大丈夫だよ」
別に聞かれても何も無いし構わないだろ。
「解く方法は書いてないの?」
「はい、昨日見つけた本の中にあったものを試したとはありますがどれが効果があったか、あると思われるというのは書かれていませんでした」
ならば私が試していくまでだ。
その効果などを書いた物を私が作ればいい。
と思った時に館長が入ってくる。
「でしたら。私の夫に相談してみてはいかがでしょうか?」
もらったメモを思い出す。
普通では相手がされないという相談所。
月宮の人が来たら紹介してくれというのだから何かはあるのだろう。
人を選んで相手をするような人だ。もしかしたら何か知っているかもしれない。
「そうですね。今日は遅いので明日行います」
「何かあるんですか?紗夜様」
「館長の旦那さんがちょっと変わった相談所をやってるみたいでそこに明日行ってみたいと思ってね」
「ですが、このことで関係ない人はあまり巻き込まない方がいいのでは…」
「それについてはお気になさらず、ここに置かれている本をほとんど読んでいるはずなので呪いについても知っているはずので何かできるかと」
行ってみないことには何があるかはわからない。
どんな人かもわからないのだ。
知らないことを知るのは楽しい。
早く明日が来ないかと遠足の前の日のような気持ちでその日は寝つきも悪かった。
お話を考えるよりあとがきを考える方が難しいです。
連載とは言ってもあと1つ、1話目と同じくらいの長さのがあるだけなので1本にまとめても良かったかもしれませんね。
管理がしにくくなってしまうのでやりませんが…
誤字脱字についてはありましたらどうか教えてください。お願いします。