9話 北極星に導かれて・・。
北極星が輝くときに運命は左右する
ここで..ここで..
待っているよ
強く強く願う
そして、これから微動だにしないあの星のように
ずっと変わらない想いでいてください・・・
少し暗くなり始めた夕暮れの屋上に私は立っている。
まだ、良く見えない北極星・・。
「あれ?北極星ってどれなのカナ?」
私は告白をする以前に北極星がどれなのかわからなかった。
一番星はたいてい金星だって先生がいってたからな・・・
柊先生に・・何回も怒られたっけ。
やばい。
時刻は6時半。
7時までは30分あるけど、逆に言えば30分しかない!
私は図書室に向かうことにした。
図書室には静かな時が流れている。
私の足音だけが響いていて、窓の隅には、
「柊くん。」
「!?」
弟の柊くんがいた。
「なんですか?命さん。」
「えっと、柊くん。私、北極星を探しているんだけど・・」
「あぁ~あの噂ですか?」
見透かされていた。
はぁ、とため息を吐かれた後に彼は奥の棚から宇宙が描かれた本を持ってきた。
「日本人は海の上で遭難したら、この北極星を目印にしたそうですが、これが北極星なんて確実な証拠はありません。何年前かの光がこの地球に届いているだけでもしかしたらその星はないかもしれませんよ?まぁ、夢を壊すほど私も鬼ではありませんよ。」
柊くんはまたもや難しいことばかり言う。
そして、窓を開けると指を空に差す。
「あっちの方角らへんにあると想います。告白したいのならその方向めがけて願ってねばいいんじゃないんですか?」
「あっありがと・・う。」
「もし、椿と運命だとしたら・・私は奪いますよ・・。」
兄への愛を呟かれた。
どんだけ好きなんだろう。
私は柊くんに礼をいって外に出た。
星が綺麗に見えてきた。
グラウンドではキャンプファイヤーをして盛り上がっている。
そして、告白タイムはもう始まっていた。
きっとたいていの女の子がこの噂を信じているに違いない。
時刻は6時55分・・。
近くの木にのしかかる。
「あれかな?」
一つだけ切なげに輝いている星が目についた。
そっと涙がでる。
椿くん・・・。
叶わないかもなのに・・・。
夜になるとこう感情が高まる。
本気で好きなんだな。
改めて確認する想い。
いっつも私の目の前にいるよね・・。
そんな時、私はいつも笑っていた気がした。
『泣き虫』なんてあだ名がつけられてほんとに泣いてばっかりだなって思ってた。
まぁ、実際そうなんだろうケド。
でも、誰にでもニコニコなんてしてない。
誰かには絶対泣き顔見られている。
椿くん。
君の傍ならずっと笑顔でいられそうだよ・・。
恋したせいかな?
おかしいな私。
・・私じゃ駄目かな?
ずっとずっと遠くまで奥深くまで想いがつのってく・・。
『この想いが君に届きますように。』
好きなんです。椿くん。
伝えなくてはいけないんです。椿くん。
「わかってたよ。そんなの。」
木の向こうから聞こえてくる女の声。
あれは、同級生の子だ。
いけないことだけどそっと耳を傾けてしまう。
「ねぇ、椿。私に気なんてないこと知ってるよ・・でもね・・。あたし、椿のこと好きなんだよ。」
「・・ぁりがとな・・」
「なによ!ありがとって、好きじゃないなら優しくしないでよ!気があるって思っちゃうじゃん!椿のばかっ」
『あっ・・・』
声が重なってしまった。
いけない!
でも、女の子は走っていった。
時刻6時57分。
「・・命?」
「・・・ごッごめんなさい。聞くつもりじゃ・・」
「うん。わかっているよ。」
木の裏から出た。
無言の時間が過ぎる。
気まずい。
でも、告白の時間がない。
あと、1分なのに!
「あのっ!」「あの。」
言葉が重なった。
「なっなに。」
「いいよ、そっちからで。」
遠慮の時間が長い!
時間がない。
「もう!」「あぁ!」
<ヵチャ・・>
7時。
『好きなんだけど!』
・・・
・・・・
【告白タイムのとき、告白する人は北極星に向かって『この想いが君に届きますように。』ってお願いするの。相手も願った人のこと好きだった場合、自然と北極星に連れられて告白する人の所にいるんだって。そして、7時丁度に告白すれば2人はずっと愛し合うって話なんだよ・・・。】
これから微動だにしないあの星のように。
ずっと変わらない想いでいてください・・・。
強く強く願います。
北極星に導かれて・・。私たちは愛し合う。