7話 気にしてよ、ばか。
つい言った言葉には
深い意味なんてない
そんなことはないんだよ
溢れ出した言葉なんだよ
もう、私の胸には納まらなかったから出したの
『好き』
そういったらあなたはなにを想うのだろう・・・
季節は秋。
文化祭の季節・・。
あと1週間。
私たちのクラスは『仮装カフェ』を開くことになった。
「ん~後はメーなんだよなぁ」
「泣き虫って何に合うんだろ?虫??」
クラスの皆が悩んでいるのは私の服装について。
なぜかレパートリーが多すぎて決まらないらしい。
・・・
「猫とか犬でも良くない?」
「小さいのがいいだろー。」
なんなんだろ・・。
「小さなお姫様にしたら?」
横から呟くのは王子様役の朝日向椿くんである。
「お姫様・・・いないだろ?」
「あ~いいわぁー。メーの可愛い姿見たいっ!」
ことっちも賛成。
と言うことでなぜか『お姫様』いや『椿王子の子供役』になった。
「椿くんがパパとか萌えるよねぇ~。」
女子の声がすごい・・・
私は料理担当。
料理担当はことっちとそのほかに女の子が3人で計5人で作る。
昼休み。
料理の内容を家庭科室で考え実際作ってみることにした。
「メーって確か料理上手いんだよねぇ?」
「上手かはわからないけど人並みくらいなら・・・」
もじもじそんなことを言うと集まってきて。
「じゃあ、クッキーとかケーキとかスイーツ系を出そうよ!?」
「じゃあ、メー。やるんだぞー!」
えっ?
私が最初に作ることになった。
「・・・うま・・・」
そう呟くのはことっちと女の子3人。
クッキーとショートケーキを作ってみたけど、喜んでもらったらしい。
他にも味を変えたものをざっと10種類は作ってみた。
「これでいく?」
私がそういうと深くうなずく4人。
「メーちゃんってホント料理、上手なんだね。見直しちゃったぁ。」
うれしい言葉に微笑まずにはいられなかった。
でも、一番食べてほしいのはやっぱり椿くん。
椿くんたち男子は看板とかの力仕事だから、準備期間中あまり会うことは出来なくなるけど・・・
その現実が私の心をギュッと締め付ける。
恋ってスイーツみたいに甘いだけじゃないんだな。
それから、私たちは料理の練習をするのだった。
帰り道。
ことっちと2人で帰ることにした。
「ねぇ、メー。しっとる?後夜祭の噂。」
「へ?」
後夜祭の噂。
「告白タイムのとき、告白する人は北極星に向かって『この想いが君に届きますように。』ってお願いするの。相手も願った人のこと好きだった場合、自然と北極星に連れられて告白する人の所にいるんだって。そして、7時丁度に告白すれば2人はずっと愛し合うって話なんだよ!。」
「すごい条件が必要なんだね・・。」
「でも、自然と彼の元に引き寄せられるなんて、ロマンチックでしょっ!」
ことっちはテンションがすごく高い。
もし、私がやったら、きっと叶わないんだろうな・・。
少し泣けてくる。
でも、告白か・・・
「あっ!まってぇ!うち、日直ちゃう?ぎゃーーー」
「えっ!ことっちっ」
ことっちはダッシュで学校へ向かう。
取り残された私も後をついて行く。
校門の前で待っていると、声を掛ける一人の男性。
椿くん。
「あっ桜庭じゃん。あーなんか最近話してないな。」
わかってるよ。
その事実を知って胸がまたぎゅってなった。
でも、会えてよかったな。
通り過ぎようとした彼の足が目の前で止まる。
「あのさ聞きたいことあるんだけどさ。桜庭が熱出したとき・・・。」
「あっ。」
そうだ。記憶がないんだった。
なんか椿くん、動揺してる?
「すきって言ったやつ・・あれ・・。」
「えっえっ!?」
「あっいや・・多分寝ぼけてたんだよな・・・俺、べつに気にしてないから。」
「・・・」
涙がでそう。
寝ぼけてて好きだなんていったのは恥ずかしいけど。
彼にとって、椿くんにとって・・
告白の文字が浮かんでくる。
ちょっとやる気、あったのに・・・
やっぱり好きじゃないんだ。
「やっホント・・その気にしてないから。お前もさ・・あの。」
・・・・ ・・・
「気にしてよ、バカ。」
すごい苛立ち。
記憶がなくても、気にしてないなんていってほしくない。
だってそれ、私のこと思ってないってことじゃん。
私はダッシュでその場から去った。