赤い色のゼラニウム
「見てください、この美しい我がモノを」
彼は澄んだ表情で私に語りかける。その瞳の美しさは荒んだ私の心を潤す泉のようで、私は頬に笑みを浮かべる。
そしては私はこう語りかけるのだ……。
「粗末なモノぶら下げてんじゃないよ露出魔」
聖人のような表情で、生まれたままの姿を晒す男。授業を抜けだした私が出会ったのはそんな奇怪なものだった。
初冬、冷たい風に彼のモノがゆらゆらと揺れる。
「粗末、結構でございますな」
「いや何言ってんだよ理解不能だよ」
「粗末、この場合は品質が良くないことをあらわすのでしょう。ですがそれはけして、けして美しくない汚らわしいとは――限らない」
「限るでしょ」
「何故ですっ、見てくださいこの身体を! 毎日ひと目を忍んで全裸ジョギング、偶には日焼けサロンで肌を焼き鍛え上げだこの肉体!」
カサカサと地を撫でる乾いた落ち葉、それと同じくらいに哀れな存在が無意味にポージングを行なっている。
言うとおり、筋肉は美しいのだろう。黒光りする肌も、バランスのとれた肉体も出る場所に出ればいいんじゃないかと思う。
「でもあんたただの変態だよ、モミアゲ聖人さん」
「変態、そして聖人……どこか美しい響きの言葉をありがとうお嬢さん」
「変態に美しさはないだろう」
「ああ、それにしてもこの鼓動の高鳴り鼓動のうねり! あなたが私の運命のジュリエェーットゥ?」
「ジュリエットと言いたいのか謎単語を言いたいのかはっきりしてください」
「ジュリエットゥ」
「どちらにしろ気色悪いことがわかりました消えてください」
そんな私の言葉に男はため息をつく。彼の私を見る瞳は優しげで、下心など感じさせなかった。父性、労り、まさに聖人のような何かをまとっていた。
「ジュリエットゥ、いやお嬢さん。何か悩みがあるのでしょう?」
「そ、そんなわけないでしょ」
「そんなわけがないわけがない」
彼は背に手を回すと、一輪の花を手に取る。赤いゼラニウム、風に揺れるそれを私へと向ける。
「人は生きる以上悩みを持つものです。それは時に命を危ぶませる、しかし時にはそれを乗り越えることで新たな道を開くものでもある。悩みは美しい、ジキルとハイド、表裏ある道なのですよ」
「……」
「お嬢さん、私に話してはみませんか。美しきあなたの内に渦巻く混沌とした悲しい思考を、私めが解いてみせましょう。さああなたを曝け出・し・て・ぇっ」
その言葉に私は、胸にあてていた手を下ろす。
悩む必要なんて無かった、答えはすぐそばに――――この手の届く場所にあったのに。
「――――もしもし警察ですか?」
完成度が低くてごめんなさい。もちろん文章力の完成度です、他に謝る点は無いはずです。




