序章
これが二度目の投稿作品です。
相変わらずの駄作ですが、読んでいただけるとうれしいです。
「やばい、また遅刻だ!」
こう呟きながら、黒いスーツを身に纏った1人の若い男が全力で町を駆ける。
彼の手には黒色の鞄がしっかりと握られ、その顔には焦りが見え隠れする。
しかしそんな彼を嘲笑うかのように、無情にも彼の目の前には赤色に光り輝く信号機が立ち塞がった。
「くっそ、なんでこんな時に!」
彼は小声で悪態をつきながら、人ごみに紛れて信号が緑になる瞬間を待つ。
そして、信号を待っている間も、
「まだかよ、こっちは急いでるんだよ!」と、呟きながら信号を睨み付ける。
その様子を見る周りの人達は、皆「やれやれ」とため息を付く。
なぜなら、この様子は彼らにとって日常的なものだからである。
ここは日本の首都、東京。 そして、現在の時刻は午前十時十分。
つまり、今東京は通勤ラッシュの真っ只中であった。
信号が警告の赤から、安全の緑に変わる。
そして、同時に流れるどこかで聞き覚えのある信号の音。
その瞬間、人ごみは各々の目的地を目指して動き出す。
その様子は、動物の群れがオアシスを目指して移動するのと似ている。
その共通点はただ1つ。 「生き延びるための移動」だ。
「よしっ」
信号の色が変わった瞬間、彼は人ごみを縫うようにして歩き始めた。
「すいません、ちょっと通ります」
と、周りに話しかけながら。
人ごみを抜けて路地に出た途端、彼は再び走り始めた。
そして、鞄からゼリー飲料を取り出し、そのまま走りながらゼリーを飲む。
これが、彼の“普段”の朝食である。
彼はゼリーを飲み干した後、そのままゼリーの容器をゴミ箱に投げつける。
容器はそのまま、なんの抵抗もなくゴミ箱に入った。
それを確認した後、彼はまた走り出す。
正直もう息は上がっているし、スタミナも尽きかかっている。
しかし、彼は走らなくてはならない。
理由は単純である。
ーーーーーもう、彼は出勤時間に10分も遅れているのだから。
「すいません、遅れましたっ!」
焦りを見せる大声と、勢い良く開く扉。
その先には、息を切らした男が1人。
そして、その男の目の前には、
「……これで20回連続遅刻だ、記録更新だな、大吉?」
やれやれとため息を付く、「大吉」と呼ばれた男の上司が立っていた。
これからも不定期更新になると思いますが、精一杯頑張ります。