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綺麗。

「あ、あのえと……」


 子供のころはよくしていた気がする。

 お互いに頬にキスをして、あははと笑っていたことを覚えている。

 あの頃から私たちは仲が良くて、それでも時間が過ぎると変なプライドみたいなものが出来てきて気恥かしくなって、少し前までは手も繋ぐことがなかった。

 でも今の無防備なアユミを見て、ほんとうについ幼いころと同じように、今は眠っているからとキスをしてしまった。


 そしてそれを彼女に見られてしまった。


「ミコトちゃん、久しぶりだね――」


 キス。


「そ、そうね!」


 思わず動揺して……ああ、自分の柄じゃないのに!

 そう中の自分と葛藤していると、ふと気付く。


「アユミ、汗ぐっしょりじゃない」

「えへへ……そうかも」


 そう照れるように言うアユミはとてつもなく可愛くて。


「良かったら、拭いてあげようか?」

「……いいの?」


 期待を寄せて私をぼんやりとした瞳でアユミは見つめてきて。


「ええ、洗面台借りるわね」

「うん」





 やろうと言ったのは私だけど、今考えると……結構恥ずかしいことよね。

 いくら同姓でも体を拭かれるのは――


 ダメよ。


 あのまま汗が冷えたら風邪がひどくなってしまうもの。

 やらなければいけないのよ。

 私はアユミの家によく訪れていたことで覚えているアユミの家の洗面器を取って水道のレバーを赤色のお湯が出る方に傾けて洗面器に汲んだ。

 そこに白いハンドタオルを浸して……これでいいわね。

 



 

「お待たせ」

「うん……ありがと」


 やはりいつものような元気さはないアユミは、いつも以上に小さく見えて思わず守ってあげたくなる。

 彼女の今は――儚げだった。


「じゃあ、お願い」


 私の方へと背を向けて、少し恥ずかしそうに顔を背けて背中をはだけさせる。


「っ!」


 息をのんだ。その美しさに。。 


「い、いくわよ?」

「……あっ」

「痛かった?」

「ううん、くすぐったかっただけ」


 アユミとっても綺麗よ──

 触れる体の全てが絹のような滑らかさで精巧で緻密に完成された西洋人形のように白く透き通った肌。

 寝間着の前を留めるボタンが外れ露になった背中は優美に反って程よい肉付きながらも引き締まった、風邪の火照りで頬だけでないあちこちが赤み掛かった彼女は艶めかしく、実に妖艶な魅力に満ちていて──


「……ぁあ」


 私はそれに釘付けだった。

 病にかかっている彼女に言うべきではないけれども──いつもと違う可愛らしさと保護欲に掻き立てられ本当に彼女の美しい一面を臨むことが出来て私は幸運なのだと思う。


 そんな触れた途端に消えてしまいそうな儚い彼女の背中を、体温より高い程度のぬるま湯で湿らせたタオルを滑らせた──タオル越しにわかる彼女の感触は柔らかく温かく言い知れない弾力を持っていた。


 手が離せない。目を離すことができない。

 私は風邪に喘ぐ彼女に魅力を抱き虜になってしまった。


「ミコトちゃん、前もお願い──」

「え」


 その要望は限界で押し留めていた理性の大半を切り崩してしまうものだった。

 風邪のせいでこわばった身体は少しのばすだけど痛みが走る──頼まれたことだから、私はするのだ


「こっちを向いて」

「……うん」


 振り返って現れたのは──未だ完全に咲きかけた未熟な花のような小さな膨らみの綺麗な形の胸と胸から腰辺りまでの相も変わらずの美しい白い肌と適度に引き締まった腰辺り、同姓の私から見ればせの完成されたスタイルは羨望の眼差しを向けざるを得ず、そして見とれてしまう。

 羞恥に顔を風邪だけでない赤みが増して、その漂わす魅惑は依然強くなる。


「本当に……いいの?」


 見られて恥ずかしくないの、と。しかし彼女は──


「熱でよくわかんないや。あと、それにね」


 幼い頃を思い出させる舌足らずになった彼女は、



「ミコトちゃんだから、いいの──」


 

 優しい声で、柔らかな笑顔で呟いた。 

 その時私の中で、今の関係に押しとどめていた何かが壊れる音がした――

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