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昼食。

 

 四時限目の授業の終了を告げるチャイムが鳴った。

 そしてこれで午前の授業は終わり、約三十分間の昼休みになる。


「お昼にしよー」

「そうね」


 昼休みと言われているけども実際は昼食の時間よね。

 クラスメイトはそれぞれ机をくっつくけて何人かあとまって昼食をとり始めたり、この学校の学食に向かったり、購買にパンかおにぎりを買いに行ったりとそれぞれ違う。

 それで私達と言えば――


「ミコトちゃん、今日はお弁当だっけ?」

「ええ、そうよ」


 そうして鞄から風呂敷包みの弁当箱を取り出す。あまり食べないのと……それと、とにかく! 

 掌から少しはみ出すほどの小さな弁当。席替えで偶然にも隣で席をあまり動かないで済み、机も隣同士をくっつけて向かい合う。


「アユミは?」

「私もお弁当ー」


 アユミは同じような小さな可愛らしい弁当を広げる。


「ミコトちゃんは今日も美味しそうだね」

「そう?」


 私は基本的に自分で弁当を作る。

 お母さんにあまり手間を取らせたくないのもあるけども、一番は楽しいからかな?


「食べる? 卵焼き」

「いいの? じゃあ私のアスパラと交換で!」

「アユミの苦手なものじゃない……嫌いじゃないからいいけど」


 そうして箸でつまみあげたアスパラを私の口もとの高さまで持ってきてから、


「じゃあ、はいあーん」


 と笑顔で言い、私はというと口を開けて、


「あーん」


 口元をアユミの持つ箸へと持っていく、そしてぱくり。

 口の中にアスパラとバターで炒めたことでの脂っぽくはないのに香ばしい風味が広がる。


「おいしいわ」

「良かったー」


 箸を引っこめてまたとびきりの笑顔……アユミの笑顔もごちそうさまね。


「じゃあ、私のものもね」

 

 私は自分の弁当箱に二つ並ぶ卵焼きの一つを箸に掴むと、


「うん、あーん」

「はいっ」


 アユミの小さな口に卵焼きを入れこんだ。


「はむ……んぅー」


 頬を抑えて食べる彼女の姿は……可愛すぎるのよね。本人の自覚がないのが一番に罪な気がするわ。


「おいしいよミコトちゃん!」

「よかったわ」

「それにしても、食べさせ合いって新婚さんみたいでいいよねー」

「っ!?」


 ご飯を口に運ぼうとした時に、危うく零しそうになった。一度ご飯を戻してから。


「え、っと?」

「あーん、というのが新婚さんみたいだなあって」

「っ」


 …………ちょっと、ねえ。そんなこと考えてもいなかったわよ。

 いつも普通に、子供の頃から癖みたいなもので。でも意識しちゃったら、私たちの行動って――


「ミコトちゃん? 何か辛い物でもあった――」

「赤くなんてないわ!」


 口早に顔を隠して俯いてしまう。  


「……新婚さん」

「っ」


 本当に分かっているんじゃないかしら、この子。

 

「ミコトちゃんって……かわいい」

 

 アユミに言われたくないわ! あなたの方がかわいいわ! 

 ……って何に張りあっているの、私は。

 今までよくよく考えたらこんなに恥ずかしいことをやってたのね……意識しちゃったら、あああああっ!


「早く食べちゃいましょう!」

「うんー」


 いつもの当たり前のことを急に意識し出す。なにか……すごい負けている気分だわ。 

 もしかしたらアユミはそれを知って、私の心境も分かって――


「美味しかったよー、ミコトちゃんの卵焼き」


 狙ってやってるわよねえ!

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