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変化。

「とーちゃーく」


 私たちが学校の教室に着く頃には自分たちのクラスは騒がしくなっていた。

 このクラスは妙にレベルの高い女子が揃う反面、男子が異常に五月蠅い。

 授業こそ始まれば少しは静まってくれるものの、休み時間や朝はいつもこう。


「あーミコトちゃん、今日体育あるね!」

「そうね……今日はバレーだったかしら」

「うんうん! ポスッ、トスッ、シュート!」


 この町唯一の高校なこの学校は、同じ地名が頭に付いた「~中学」からほぼエスカレーター式のようにやってくる。

 中学校も定数で収まり、同じ数がこの高校にやってくるので代わり映えしない面子でもある。

 ……そのおかげでアユミと離れることなく、一緒の学校に通う事が出来ているのだけど。


「アユミ、裾めくれてるわよ」

「あっ、ホントだ」


 この学校の制服は至って普通なセーラー服。

 肩から上胸にかけて紺色の襟で、胸元には真っ赤で大きなリボンに地は真っ白というもの。

 スカート丈は基本的に膝上数センチと少し長めで……なんというか、古臭い。

 テレビで見る同じ女子高生の制服が紺色のブレザーだったりすると、少し羨ましく思う。

 ……私たち含む女子勢にはあまりに人気があるとは言えない。


 ちなみに先程春風に吹かれてなのか、アユミのセーラー服の裾がめくれ……チラりと白い肌が覗いてしまい、それを見ただけで何故かドキドキしてしまったのはアユミには言わないでおこう。

 ……それをわざわざに言ってしまうのはなにか負けた気がするし、というかアユミに結局は弄られてしまう予感がする。


「いや、嫌ではないのだけど……」

「ミコトちゃん?」


 アユミになら、いいかな。って思い始めている一方で、恥ずかしいと思う自分もいたり。

 ……ああああ、私はどうすればいいのかしら!?


「顔赤いけど大丈夫? ……どれどれ」

「っ」


 するとくいっと背伸びしたアユミの顔が近づいてくる。近い! 近いってアユミっ!

 これじゃぶつかっちゃうから!


「熱はないみたい」


 おでことおでこがぴったりとくっついた。目の前には可愛らしいアユミの顔がこれでもかと近づいてきて――


「……でも顔は赤いんだよね。大丈夫、ミコトちゃん?」 

「だ、大丈夫よ。心配しないで」


 アユミのせいよ! アユミが……私の気も知らないで大胆な行動をするんだもの。

 ……あぁ、本当にビックリしたわ。

 でも私が過剰に反応しすぎなのかしら……前まではここまで動揺することもなかったのに。


 私、もしかしてアユミを意識しちゃってる?


「(ないないないないないない!)」


 断ったじゃない! 付き合わなくても一緒にいれるって言ったじゃない!

 そう自分が言ったはずなのに……今思うと何か惜しいこと――なわけないわ!

 あまりにも唐突で、時期尚早――ってそれじゃ私はまるでそのうちにはそういうカンケイになりたいって言ってるようなものじゃないの!

 落ちつきなさいミコト、私はアユミの親友で。親友以下でも、以上でも――本当にないの?

 

「ああ……」


 胸に手を当てているとすぐに感じ取れるほどに鼓動してるし……もう、なんなのよ。

 違うことを考えましょう。そうね……そういえば本屋に行った帰りに「カフェ”ソルト”○月○○日オープン」というチラシの張られた新しいお店があったわね。

 日付通りに開店したなら昨日には開店しているはずだわ。

 

「ア、アユミ。そういえば商店街に新しいカフェが出来たらしいの、良かったら放課後行きましょ?」

「カフェ出来たんだ、いつのまに! うんっ、いこいこ! ミコトちゃんとデートだー」


 デ、デデデデデデデート!? 私がデートに誘ったみたいな構図に!

 いえ、違うわ。私はアユミと新しいカフェに行きたかっただけ……変わらない! それじゃ全く変わらないわ!


「どうしたのミコトちゃん、今日変だよ?」

「そんなことないわぁよ?」


 ……そろそろ本当に落ちつきなさいよ。


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