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ヤミへとなる、そして永遠。

[7]




 時は止まったままだった。


 そしてまた私は繰り返す。





 二〇一〇年三月三十一日 午後十一時四十三分




* *




[1]



 二〇〇九年四月七日



 私はこの日から藍浜高校の生徒になる! 

 今日は入学式、ミコトちゃんと高校ってどんなだろうと話したのがもう数日前なのに、ついさっきのことのよう。


「あっ、ミコトちゃんおはよー!」

「おはよう、アユミ」


 幼稚園からの幼馴染で、小・中とずっと親友だったミコトちゃんとこれからは通学路となる道を歩く。


「緊張してきちゃったよ~」

「中学校の時を思い出すのよ、アユミなら大丈夫」


 ミコトちゃんは私より背も高くて……ちょっと発育もいい、いや言わないけど。

 そして、少し意地っぱりだけど、優しくて、綺麗で、カッコイイ!

 いつからかクールな感じになっちゃったけど、それでも私はミコトちゃんが好きだ。

 いや、違うよ? 友達としてだよ?

 

 しかし我が幼馴染ながらここまで育ったものだ! 

 私は鼻が高いよ!


「ありがと、ミコトちゃん」

「……実は私も緊張してたり」


 そして、時々昔の面影、可愛いなあ。


「手、繋ぐ?」

「いらないわ」


 冗談めかして、会話しながら入学式会場である藍浜高校へと向かう。

 この時には緊張した気持ちなんて忘れていた






 それは入学式から二か月経った、梅雨の日のことだった。


「あのね……相談しにくいんなけど」

「え? ……ふむふむ、えー!」

「しーっ」


 私が驚いた声を出すと、ミコトちゃんに手を口を塞がれた。

 ちょっと苦しいよミコトちゃん。

 今度は小声にして、ミコトちゃんと顔を寄せ合って内緒話のよう。


「まさかミコトちゃんに”好きな人”が出来るとはねー、うんうん」

「ちょっと! 好きな人なところだけ強調しないで!」

「お相手はどちらさまで?」

「…………T君よ」

「T君! なるほどなるほど」

「な、なによ」

「別に~」

「私は真剣なんだから――!」


 ミコトちゃんに彼氏が出来るらしい、友達として誇らしいよ!

 将来独身と独身で居酒屋? とかで愚痴大会とかは嫌だしね!



 そして、私は相談にのって。

 それから数日後、ミコトちゃんには彼氏ができた。





 その後、ミコトちゃんとT君の関係は続いた。

 実際に相性がよかったのか、一緒にデートすることも多いらしい。

 時々私もメールで相談にのったりもした。


 ミコトちゃんは、時折T君の自慢話をしてくれる。

 そして「そのノロケはもうお腹いっぱいだからー」と、返すことが殆ど。

 そうしてT君との仲を親密にしていくと、どうしても……まあ好きな人優先になっちゃうよねー!


 ……親友の門出だ、お祝いしてあげなきゃ。

 でも、一抹の寂しさを覚えちゃう。

 

 ……私って独占欲強いのかなあ?

 ちょっと粘着質なのかなあ?

 それともこういうのって普通?


 私もいい人見つけなきゃね。




 

 私たちは二年生になる、今でもミコトちゃんとの友情は健在!

 でも私は少し遠慮するようになった、知らない女が話し出したら無粋だからね!

 応援するよ、ミコトちゃん幸せにね。

 

 何度か男子から告白を受けるも、ピンとこなかった。

 独り身のままの進級。





 二〇一〇年三月三十一日 午後三時四十三分





* *



[2]



 四月一日



「ふぁあ、眠い」


 春休みの最中、あと数日で始業式だ。


「夢を見ていた気がするけど……?」


 頭が少し痛かったような夢、それしか覚えていなかった。


「今日はミコトちゃんと遊ぼうかな」


 せっかくの春休みだ、遊ぼう……と思ったけれど電話をやめた。

 

「邪魔しちゃいけないよね」


 T君との約束があるかもしれないよね、やめとこう。

 はぁ、と息をついた。


「暇になってしまった」


 春休みは三月中に、一人で服などを買いに行ったりしてしまったので、四月序盤のスケジュールは開けていた。


「うーん」


 なんとなくに携帯のカレンダー機能を立ち上げ、見た。





「んー? ……ん!?」 

 




 画面を二度見した。

 日曜日から土曜日までのカレンダー、日付は四月一日。

 エイプリルフールだった。


 ……いやいやそうじゃなくて!


「二〇〇九年……!?」


 そういうことなのだろう。

 去年が二〇〇九年だったわけで、というより昨日まで二〇一〇年のはずなわけで。


「あれ? あれー」


 おかしいな、と首をひねる。

 

「そっか」


 エイプリルフールだもんね、携帯会社のサプライズなのかも。

 そう勝手に納得して解決した、そして起床。

 お母さんの作る朝ごはんの匂いに釣られて部屋を出る。





「おはよー、おかーさん」

「おはよ、アユミ」


 寝ぼけ眼、パジャマ姿という少しだらしない。


「顔洗ってくる……」

「そうしてきなさい」


 パシャパシャと顔を洗った、意識が覚醒する。


「春休みだからってダラダラしちゃって」

「ごめーん」


 そう、なんとなく受け答えしていた時だった。



「数日後には入学式なんだから、しっかりしてよね」



 食卓テーブルについて、水の入ったコップに口を付けようとした瞬間だった。


「え……?」

「え、じゃないわよ。これから新一年生なのよ? 入学式にぼーっとしてたらダメなんだから」

「いや、そうじゃなくて」

「なによ?」


 お母さんはなにを言っているのだろう。

 入学式は済ませたはずだ、それも一年前に。


 なるほど、これもエイプリルフールなんだね!


「もー、お母さん」

「だからどうしたの?」

「エイプリルフールだからって冗談言っちゃってー、信じちゃったよー」

「エイプリルフール? ああ、今日は四月一日だったわね」

「……え?」

「え?」


 惚けすぎている、そんなはずはない。

 私は焦りを覚え始めた、携帯のカレンダー。

 

「お母さん! 今年って何年!?」

「何年って平成二十一年でしょ? 年度も、そうね」


 平成二十一年……二〇〇九年……!?


「じゃあ私今年新入生なの!?」

「寝ぼけすぎね、もう一度顔洗ってきなさい」





 それから日付を確認した、年度を確認した。

 それらは全て平成二十一年、二〇〇九年だった。


「…………どういうことなの?」


 なんで? えっ、じゃあ二〇一〇年の私はどうなったの?

 じゃああれは夢だったの?

 入学式から、ミコトちゃんがT君と付き合うまで……!


 そんなバカな!




 

 私はミコトちゃんに電話する、彼氏? 

 それはそうだったら申し訳ないけども、確認しないと――


『はい、もしもし。アユミ、おはよう』

「お、おはよう」


 何故か真っ先に挨拶、あっ!


「ごめん!起こしちゃった!?」

『ううん、今一〇秒前に起きたとこ』


 起こしてました! 

 でも時計は八時十七分、起きていてもおかしくない時間だけど。

 たしかに休日だからいくらでも寝ていいのかもしれないけれど。


「聞きたいことがあるんだ」

『うん、なにかしら』


 電話越しは起きた直後の、少し小さめの声。



「T君ってどう思う?」



 ここでT君と最近どう? だと、もしかすると、もしかした場合におかしな質問になる。

 または――


『…………はい?』

「いやだから中学でも同じクラスだったTだよ!」

『……あー、いたかもしれないわね。で? そのTがどうしたの?』

「っ!」


 いたかもしれない、その程度の認識だった。

 内心かなりショックな心を抑え込んで、


「に、入学式緊張してきたよ」


 ここで「何言ってんの? 今度は二年生でしょ」という言葉が欲しかった。

 でも願いと裏腹に――




『入学式……そうね、数日後には私たち藍浜高校の生徒ね』




 そん、な。

 そしてミコトちゃんが嘘を言っている風には聞こえなかった。

 

『気が重い話わ。どうせエスカレーター式みたいなものなのだから、無駄なのに。大体……ちょっとアユミ? 聞いてる? もしもーし』


 …………。

 私は、

 私はタイムスリップしてしまったらしい!?





 それからは手に取るようだった、同じことのやり直し。

 同じ台詞、同じ出来事。

 ミコトちゃんが好きな人が出来たと相談しにくる日、タイミングだというから恐ろしい。



 その時から、私は取り残されたような気持ちになった。

 

 みんなは普通に一年生で、普通に青春もする。

 これからなにがあるか分からない、ドキドキの高校ライフ。

 

 でも私は知っていた、これから起こることを全て覚えている限り。



 誰も賛同者のいない、孤独。

 タイムスリップする前の、ミコトちゃんが付き合いはじめてからしばらく経って、いっしょにいる機会が減って。

 僅かな孤独を感じたけれど、その比じゃなかった。

 私だけしか知らない。他の皆はしらない、それが怖くて仕方なかった



 そして焼き直し一年が過ぎる。



 二〇一〇年三月三十一日 午後十一時四十分







[3]



二〇〇九年四月一日



「……」


 昨日に覚悟していた、そして起きてすぐに携帯のカレンダーを起動する。


「二〇〇九……年」


 また同じ焼き直しのような一年を送るのかと思うと、冷えあがった。

 そんなの嫌だ……。


「なんでこんなことに」


 一年生三年目、この頃から精神が不安定になり始めた。





「ミコトちゃん! いっしょにご飯食べよう!」

「ミコトちゃん! いっしょに帰ろ!」

「ミコトちゃん! 明日いっしょにお出かけしよ!」


 私は未来を変えたかった、そもそもなぜ時は繰り返すのだろう。

 相談相手は誰もいない、未来を変えるなら、焼き直しを回避するなら――


 自分から行動を起こすべきだ!





「ねえアユミ……」

「なに? ミコトちゃん」

「ちょっと言いにくいんだけど……」

「なになに?」 


 私はあれから、ミコトちゃんと沢山話そうとした、沢山いっしょにいようとした。

 T君には悪いけれど、きっと彼氏が出来たら未来は固定されそうだから。


 根拠は何もない、けれどそんな気した。

 きっと間違っていない、これできっと――



「ごめん、アユミ。少し疲れるよ」



 その意図が分かった。

 私といると疲れる……そう言いたいのだろう。


 そしてそれからアユミとの自然な距離が出来始めた。

 

 こんなはずじゃなかったのに、でもミコトちゃんにこれ以上は――

 T君と付き合いこそしなかったが、それからは別々の友人グループにいることが多くなった。



 そうして、辛い一年が過ぎた。


 それでも私がミコトちゃんを嫌いになることはなかった。

 むしろ次こそは、四回目こそはと息巻いていたこともあった。




 二〇一〇年三月三十一日





* *



[4]



 二〇〇九年四月九日



 入学式から数日が経った、私はこれで四年目。

 確かに未来こそ変わったが、それは変える前より辛いものだった。 


 だから、そうはならないようにする。

 T君との付き合いも回避して更には、私が嫌われないように頑張る。


 そうだ、そうしよう。





 私は自室を漁った、するとあることに気が付いた。

 

「……私の机の傷、前回のものが残ってる?」


 時を繰り返す、一〇年から〇九年に変わる際には色々なことがリセットされる。

 記憶に残るのは、本来なら工事が終わった商店街のビルが。

 巻き戻ると再度工事が行われている。

 

 ほかの人の記憶もまた、リセットされるのは以前から知っていた。

 そして今日何気ないことに気付いた。


「そういえばっ――」



 なかった。

 廊下にコーヒーをこぼして、薄らとシミになっていた箇所が綺麗なままだった。


「もしかして……!」


 私の部屋だけはリセットされない……!? 

 他では残っていないキズが、この部屋だけには残る。

 変化したことがなかったことにされない、それを理解した。

  

「なら……っ」



 


 私は壁に紙を貼った、いわゆる学校の時間割の紙だ。

 それで覆うところには、マジックで正の字の四画目まで書かれていた。


「これで忘れない」


 キュっとマジックのフタをしめて、画鋲で四隅時間割表の紙を止めた。

 なにか私にあっても、この世界が何回目だろうかを確認できるように。





 暇だった、思えば四年も一年単位で同じことを繰り返していた。

 授業を受けなくても、頭の中には嫌と言うほど入ってるし、成績も上がった。

 家の中の本を読み漁って、それでも四年で読みつくしてしまい本屋などに走った。


 その頃に何故か気になったのは女性同士の同性愛の小説だった、もちろんそんな過激なもの……ではないはずで。

 一時期はあまり慣れないゲーム屋に寄って「この絵可愛い!」と衝動買いした女性同士の同性愛ゲーム。

 しかし買ったはいいものの、カバンの中にしまいこんで数か月、それを一回目で見つけて……それで?


「ゲームのディスクをパソコンに入れたような入れてないような」 


 どうだったかな……少なくともパソコンの中にはディスクはなく、パッケージも簡単に探したが見つからなかった。

 

 私の部屋・私の部屋の中のモノは変化しないことで、クローゼットには前回買った服、前々回買った服などがある。

 以前服で気付かなかったのは、毎回春夏冬モノでしっかりとタンスにしまったり、または自室から出してしまったり。

 ないものと思いこんdねいた、あるという発想さえなかった。


 この部屋の特殊性をなおさら主張するようで―― 

 



 

 四回目は、平凡に過ごすことが出来た。

 会話内容を変えて、T君との交際も回避しつつ、しつこくし過ぎずに一年が過ぎた。

 

 でもこの時、胸の中にある感情が芽生えていた。

 


 女の子同士ってどうなんだろう?



 いやいや、小説に影響されるものじゃないよね。

 アハハ……。

 それでも意識し始めたのは確かで、次試してみようと考えた。





* *



[5]



 正の字が完成した、時間割表の裏には黒マジックで書かれた”正”の文字がある。



 二〇〇九年四月二十一日



 入学式からだいぶ過ぎた、そして私の中で試したいことがあった。

 というよりも半分冗談、出来るとは思っていないことで。

 

「私は、ミコトちゃんが好きで!」


 小説に倣うように、してみたことだった。


「だからミコトちゃん! 私と付き合ってくださいっ」


 でも実際に私は演技でもあったが、真剣だった。

 ミコトちゃんと付き合ったらどうなるだろう?

 暇な時に読みふける女性同士の小説に感化されすぎてしまった。


 でも、きっとこんなこと通らないのだから。

 現実と空想で――



「ごめん……なさい」



 そうミコトちゃんから返ってきた。

 それはそうだよね。

 当たり前だよ、それを確かめるために――


 でもショックだった、なんでショックなんだろう。

 あのあとこれからも友達でいよう、と言ってくれたのに。


 なぜなんだろう?


 それから意識してしょうがなかった。

 意識しすぎた、それが結果的には――




 

 それは体育の帰りのことで体育の授業が終わり、体操服から着替えるために教室に戻る。

 一年二組の教室は女子専用の行為スペースとされ、女子以外が入ることはない。

 ミコトちゃんはお手洗いで、先に教室に戻った、その時教室では数人の女子が固まって話をしていた。 



「ねー、××ってキモくね?」


 ××……それは私の苗字だった。


「あー、アイツね。思ってた思ってた」

「マジキモい、で△△にくっつすぎなんだよな」

「きしょいっつーか、引くというかさ」

「限度ってもんがねーのかね」

「あんなのされたら△△も迷惑だってーの」

「人の気持ちが分からねえんだな」

「見てるこっちがかわいそうに思えてくるって」

「……アイツ潰しちゃう?」

「いいねえ! 退屈しのぎになるっしょ」

「××から△△を助けてあげる!」

「正義のヒーロー(笑)」

「そこはヒロインにしてよねー」

「マジうけるー」


 ゲラゲラ、そう笑う女子三人を教室の壁越しに聞き続けた。


 そうだ、そうだよね。

 私ってキモいんだよね。

 つきまとってばっかり、ミコトちゃんの気持ちなんて考えないで。


「あ、あれ……」


 どうしてだろう、涙が止まらない。

 そんなに悪いことなのかな……ただ一緒にいたいだけなのに。

 でもそれが気持ち悪くて気色悪いんだよね。


 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい



 その時に、教室から机が転がるような音が聞こえた。



「あんだよてめー」

「こっちは楽しくガールズトークしたてったのにマジKY」

「そうそう、△△さあ? ぶっちゃけ××につきまとわれてキモ――」


 そのあとの声は続かずに、今度は盛大に机椅子に何かがぶつかったような音。


「いい加減にして……っ!」


 怒気を含んだ声、それに反応して私は教室の扉の隙間から覗いた。


「っ……!」


 そこにはミコトちゃんがいた、それも――かなり怒ってる。

 投げ飛ばされたと思しき女子が地面に腰を抜かしていた。


「あんたらには関係ない! 私の親友をバカにするなっ!」

 

 その言葉が嬉しかった、親友と思ってくれたことが嬉しかった、私のことで怒ってくれるのが嬉しかった。


「今度そんなこと言ってみなさいよ……私、あなたたちを許さないから」

「ひぃっ……」「マジかよコイツまじやばい」「こ、こんなことになるなんて聞いてなかった!」


 口々に怖気づいていた、そんなミコトちゃんはカッコよくて――



 ああ、そうなんだ。

 やっと分かった。

 

 私はミコトちゃんのことが好きなんだ。

 親友以上の、恋愛対象。


 好きになってしまったんだ。





 私が想いに気付いた一方で、最悪の展開になった。

 

 投げ飛ばした女子が理事長の娘だった、もちろん暫定的に停学処分。

 今後次第で退学処分もありえる、ということだった。


 理不尽だ、なんて理不尽な世界なんだろう。

 ミコトちゃんは悪くないのに、私が悪いのに。


「私が悪いんです! 私がミコトちゃんにそう仕向けたから……」

「嘘つかないでよアユミ! 私が、自主的にイラっとしたからやったんです」

「私も停学処分ですよ! いや退学かもしれません、だから――」

「いい加減にして、あなたのことなんて一切考えてなかったんだから!」


 嘘が下手だよミコトちゃん。

 私を守ってくれたのに、なんで……なんでミコトちゃんが罰を受けなきゃいけないの?


 そして停学処分、二か月。

 それから学校にも来なくなったミコトちゃんにプリントなどを持って行くも、一度も会ってくれなかった。


 会ってくれないのは仕方ないでも、ミコトちゃんがこんなことになる世界なら。

 こんな世界は終わってしまえ、次こそ、次こそは!






* *



[6]



 それからは容易だった、今までの経験を生かした日常生活。

 告白もして、もちろん断られた。

 そしてイジメに会ったけど我慢した。なんとかミコトちゃんいバレないように出来たよ。


 頑張ったよミコトちゃん。

 でももっと頑張るね。





 イジメぬかれた。

 その拍子に頭を打って出血し病院に搬送された。


 おぼろげだけど覚えている、私をイジめて、前にミコトちゃんを停学にした女子の青ざめた顔。

 最後まで「私じゃない、私そんなことするつもりじゃ……!」と震えあがっているのを見て、ざまあみやがれと思った。


 ミコトちゃん心配かけてゴメンね。

 でも、これでミコトちゃんがイジめられることはないと思うよ。

 私と違って強いから、イジめられることはなかったかもだけど。


 ちょっと卑怯だけど、一足先に次に行くね――

 顔をグシャグシャにして泣き続けるミコトちゃんの顔が一瞬見えた、それが心残りだけd




* *



[7]



 二〇〇九年四月二十一日



「今度こそは間違えない」



 告白、そのあとイジめの標的にされたけど。


『私脅迫されちゃったー、怖いから先生に言っちゃおう』


 私をイジめた時に収録していたボイスレコーダーを再生しながら、こちらから脅迫。

 あっちのぐぬぬって顔は傑作だったなあ。

 その程度で引き下がるヤツらだなんて、かなーり残念な気分だよ。

 こんなヤツらにイジめられて、ミコトちゃんを怒らせるなんて。


 もう眼中にないよ、こんなクズ共。





 そう、この世界ではミコトちゃんと付き合うことが出来た。

 いっしょにお風呂に入れた、身体を拭いてもらったり、そしてキスもできた。

 こんな幸せな世界なんてない。

 心の底から幸せだった、私とミコトちゃんが結ばれることができたのだから。

 今まで計画的に動いていた時あったけれど、キスをし始めてからはもうそんなことはどっかに行ってしまった。

 でもそれが一番幸せなことで、ミコトちゃんが求めてくれるほど嬉しいものは無かった。



 二〇一〇年三月三十一日 午後十一時五十五分



 でも、それももう終わる。

 時は止まったまま、ずっと同じ一年を繰り返すのだろう。



「でも楽しかった、幸せだったー!」



 だってミコトちゃんと確実に一緒にいられるんだよ?

 思えばイジめられててもミコトちゃんがいるから大丈夫だった。

 ミコトちゃんさえいればいい、他には何もいらない。


 次の世界では、もっと色々なことをしよう。

 ちょっとエッチなことでもいいよね。


 だって私はミコトちゃんがだーーーーーーーーい好きなんだから!


 そして私は眠りにつく。

 目が覚めたら新しい世界、こんなに次が楽しみな世界もない。



 おやすみなさい





* *



[?]




????年??月???日




「わざわざ来てくれてありがとう」


「その……私、あなたに言いたいことがあったの」


「……言いたいことなのかしら? どちらかというと、お願い?」


「そうそう、お願いお願い、聞いてくれると嬉しいのよ」





「アユミ、私はあなたが好きです」





「それがお願い。え、どうしてかって?」


「幼稚園の頃からいっしょだったわよね。ずっと遊んでくれてありがとう」


「ずっと前から好きだったけど、言いだせなかったの」


「だって女の子同士よ? 世間が許してくれないと思って、声に出せなかった」


「でも、もういいの。そんな小さいことに悩んでる自分がバカだったわ」





「アユミ、良ければ私と付き合ってください」





「こっちは緊張してるのよ? だって断られたらヘコむもの」


「え? そう? 本当に! 分かったわ」





「これからもよろしくね、アユミ」





「私こういうの初めてだから……アユミもそう? よかったー」


「だから優しくしてね」


「ん……」

 


 二人の唇が重なり合う。

 二人は頬を染めて、二人目をつぶって、求め合った。

 



「これからすっと一緒だよ、アユミ」

「うん、よろしくね……ミコトちゃん」 




 繰り返す世界で二人の物語は続く。




 二〇??年四月七日




 <FIN>

お読みいただきありがとうございました。

このオチについては前々から考えて……いませんでした、ですがクソゲヱリミックスのループ設定を使う考えはありました。

クソゲヱのキャラが登場していますし、あちらにも僅かながら描写がありますね。


なんとキラワケ初の連載終了です、終わらすことって大事ですね。

感想や「こんな展開望んでない!」という怒りをぶつける先に、感想や活動報告へどうぞ、お待ちしております。

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