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おふろ。


 その日は曇り空で、今にも泣きそうなくらいに妖しい空模様だったんだよね。

 私はミコトちゃんと下校しよう、昇降口まできたのでした。


「ミコトちゃん、帰ろっ」

「ええ」


 ミコトちゃんも最近積極的で、靴を履きかえて昇降口を出ようとしたところで照れて頬を赤らめながら手を繋いでくれます。

 こういう些細なことがすごい嬉しいなあ! だって、今までは照れすぎてミコトちゃん小学校以来手繋いでくれなかったのに、だよ!

 ……本当、結ばれたのがウソみたいだよ。頭の中では結ばれないわけないと思う私の反面で、無理かもしれないお思う私もいたんだ。

 

 だから、今本当に幸せなんだ!


「アユミの手は柔らかいのね」

「えー、それって褒めてるの? ミコトちゃんの手はいつもひんやりしてるよね」

「そうなのよね。冷え症なのかもしれないわ」


 でもそんなひんやりとして、スッとしたミコトちゃんの手を繋いでいると不思議なフィット感みたいのがあって心地いいんだよ?

 そうして私とミコトちゃんは手をつなぎながら学校を出たのでした。





「天気怪しいわね」

「うーん、今にも一雨きそう」


 二人空を眺めてみるけども、やっぱり空の灰色は濃くなっていくばかり。空気も湿気を帯び始めているそんな最中のことでした。

 ぱらぱらと水滴が鼻の先に付いたと思うと、気が付くとぽつぽつ降り始めそして――


「ああ! 本当に降ってきたぁ!」

「急ぎましょ!」


 それでも二人の手は離さずに制服を雨に濡らしながらもアスファルトの通学路を駆けて行きました。

 



 そうして私たちの家の近くまで来ました。

 二人の家までは走ればなんとかなると水音を弾かせながら駆けていくも、


「あ……カギ」


 隣のミコトちゃんが落胆するように家につくなりそう呟きます。先ほどから何か鞄や制服のポケットを探っていた「何か忘れ物?」と聞いて「ちょっとね」と答えたばかりでした。 

 もちろんこのまま雨に降られていたら風邪をひいてしまうわけで。


「とりあえず私の家に入ろ!」


 そうして私は特に考えずにミコトちゃんを自分の家へと連れ込むことに、ミコトちゃんもすぐさま頷いて私とミコトちゃんは家に入り玄関戸を閉じました。

 来ていた制服は雨に濡れてビショビショで、水滴が玄関の床にポタポタと垂れていました。

 

「すっかり濡れちゃったわね」

「う、うん。さぶう」


 このままでいるのはマズイお互い身体に悪い、と考えた頃。

 そんな時、私はあることが閃いたんです――



「ミコトちゃんっ、一緒にお風呂入ろっ」



 風邪をひかないための口実、もちろん本音は――


「い、一緒にお風呂?」


 ミコトちゃんは私の提案に躊躇します。中学校の修学旅行以来ですからね、と言っても去年のことだけど。

 二人でお風呂に入ったのは――


「有無言ってちゃダメだよミコトちゃん! 風邪ひいちゃダメなんだから」


 半ば押し切るようにミコトちゃんに詰め寄るように顔を接近させると、ミコトちゃんも照れて顔を真っ赤にしながらも、


「し、しょうがないわよね……緊急事態だものね」

「そそ、緊急事態♪」


 私は先ほどまでの雨に濡れて体温が奪われていく感覚も忘れて、ミコトちゃんとの久しぶりのお風呂に胸を躍らせるのでした。





 脱衣所は私たちふたりが着替えるほどの余裕がありました。

 ミコトちゃんはセーラー服を脱いで、下着姿になります。水色地のレースの模られた上下下着です。


「…………」

「な、なにアユミ?」

「下着の時点でおっきいなあ…………って、思って」


 そんなことないわ、とミコトちゃんは言うけども。おっきいよ! 十分におっきいいよ!

 わ、私はいつまでもたっても申し訳程度のふくらみなのに……幼馴染で、同年齢のミコトちゃんがこの成長はおかしいよ!


「はぁ」


 私は下着を取って、改めて希望的観測も含めて胸を触りますが……そこにはやっぱり小さなふくらみだけ。

 く、くぅ……


「脱いだ衣類は洗濯機でいいのよね?」

「うん。入れておいて、一緒に洗濯しちゃうから……はぁ」


 やっぱりショックだよね、この成長の違いは、うん。





 浴室の暖房を効かせて、お風呂を追い焚きして暖めておく。それまではシャワー一つをミコトちゃんと使うことに。


「はぁ、あったかい~ミコトちゃんもほらほら」

「貰うわね……ふぅ、あたたまる」


 シャワーを流しっぱなしのまま、交代しながら浴びているとお風呂の追い焚きが済んだようで、


「じゃ、お風呂先に入ってるから」

「わかったわ」


 私がお風呂に浸かって、ふうと息を漏らす一方で。ミコトちゃんはシャワーを浴びているのをお風呂越しに眺めます。


「…………わぁ」


 ミコトちゃんの生まれたままの姿。スタイルはイイ、イイ言ってたけど、こうして裸になったミコトちゃんは改めて「抜群のスタイル」だと思える。

 お湯を浴びて艶やかに流れるような黒髪、髪をかき分ける際に覗く白いうなじ、首筋から腰部位まで美麗に沿った背中。

 嫉妬しちゃうほどに、下着越しからはわからないほどにボリューム溢れ、豊満でそれでいて形の整った円錐型の胸。

 ほどほどに出来たくびれと、少し大き目のおしり。柔らかそうでスラリとした太ももと、鹿のようにほっそりと引き締まったふくらはぎから足にかける部位。


 湯気越しに見たミコトちゃんの身体は石膏像のような完成された美しさを持った、何百年にも渡って語り継がれるような芸術品のようでした。


「アユミ、ぼーっとしてどうしたの? もしかして、のぼせて――」

「ううん! 大丈夫っ、じゃあ次は私がシャワー借りるね」


 いくらなんでも率直にミコトちゃんの身体に見惚れていたなんて言えないって、誤魔化すように私はシャワーを浴びました。

 




「ミコトちゃん、一緒にいい?」

「っ! え、ええ……もちろん」


 ミコトちゃんは顔を一気に赤くしてビクッと肩を震わせるけども、私が浴槽入ることを許してくれます。

 ミコトちゃんを体育座りするような姿勢で向き合うように浴槽に浸かりました。


「…………」

「…………」


 やっぱり裸同士と言うのは、気恥ずかしい。私もミコトちゃんも自然に黙ってしまいます。

 時折ぴちゃと音を響かせる水音だけがこの空間にはありました。


「ね、ミコトちゃん」

「ん?」

「いつ以来かな、二人でお風呂入るのって」


 私は何かを紛らわすかのように話題を持ちかけました。


「小学校の……六年ぐらいかしら?」

「うんうん、それまではお母さんも一緒に入っちゃないなさいとか言ってんだよねー」


 それからミコトちゃんはどんどんと大人びて、綺麗になっていった。

 親友の私でさえ羨むほどに、嫉妬しちゃうほどに。私も含めて照れのようなものが入って、一緒にお風呂も一緒に手つなぎもなくなっていったんだよね。


「まさか高校生にもなってアユミと入るとは思わなかったわ」

「いや?」


 私はミコトちゃんに不安げに聞きました。もしかしたらミコトちゃんはお風呂は一人で入りたかったかもしれない。

 仕方なしに今は私と入ってくれるだけで――


「え」


 私の手首をミコトちゃんは何も言わずに取ると、ミコトちゃんは自分の左胸にそれを埋めました。

 手の感触には柔らかで温かい、吸い付いてくるようにもっちりとして、溢れるほどです――そして、とくとくと手から伝わってくる鼓動。


「どきどきしてるのよ……これでも。アユミの……そ、その綺麗な身体を見て、ね」


 言いよどみ、視線を逸らしたり向けたりしながらミコトちゃんは言います。


「アユミとこうして二人とても近い距離と時間を共有できるのが……う、嬉しいのよ」


 か、可愛いすぎでしょミコトちゃん。学校での、最近のクールなミコトちゃんとのギャップがありすぎて萌え死にそうだよ!

 ……こ、こうなるとミコトちゃんをもっとあたふたさせたいというか、ね?


「……え」


 私は仕返しのようにミコトちゃんの手首を取って、私の左胸に押し当てました。


「貧しいからすぐわかるよね、私もどきどきだよ」


 二人それぞれ押し当てるように、それは二人が通じ合うのを鼓動で確認するようでした。


「でーもー、この柔らかさと大きさは反則だよ! なにこれ、本当に同い年なの?」

「あっ……ちょっと、そんなに……揉まないで」

「ふーんだ、勝手に置いてちゃって。こんなのこうだこうだこうだ!」

「あぁ……だめって……あっ、ア、アユミのも綺麗な形してる……のに」

「ふんだふんだふーんだ!」


 文字通り女二人でしたが乳繰り合ってました。正直ミコトちゃんのあの胸の感触は最高すぎます、イライラしますが至高でした。





「ね、ミコトちゃん」

「なに?」

「またお風呂入ろ?」

「……うん」


 二人体勢を崩さぬようにして、瞳を閉じて、声だけで、額と額がコツンと触れ合って。

 そう、私たちの繋がりを確かめるように心地の良い沈黙が続いていくのでした。


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