サイレンは哭くのを忘れる~キャロル~
シロクマさんの言葉に乗せられてこんなん書いちゃいました(*^O^*)
と言うわけで武 頼庵さま主催『すれ違い企画』参加作品になります……が、稚作『サイレンは冬に哭く』を読まないと訳がわからないかも……。
私はヴィジラント・マザー。 治安維持官である。
異端審問官などと揶揄される事もあるがそれがどうしたというのだ。 私は私の職務を全うするだけである。
そう!
魔女には浄化を!
悪魔には滅びを!
疑わしきには死を!
……………………………………。
ん?
私、今何か変な事を言ったか?
部下が妙な目線でこちらを見ているような……?
まあ、気のせいだろう。
さて、今回の任務は『キャロル・ブルックス』と言う少女の身柄の確保だ。
その理由は……魔女との告発があった、と。 それが本当なら由々しき事態だが、本当の魔女など一握りも居はしないだろう。
私とて本物の魔女には会った事がない。
裁判では何時も有罪とされる『魔女』達だが、本物でない事は捕まえた私達自身が知っている。
そもそも本物なら私達に捕まえられるはずもないだろうからな。
まあ、仕事は仕事だ。
捕まえて教会へ引き渡せば報奨金ががっぽがっぽ。 これ程楽な商売もあるまい。
さて、エリザベスとかいう小娘から貰った『キャロル・ブルックス』の特徴は、と。
え~、と。
・金髪……って地毛が金髪の住民、結構多いんだが……?
・蒼い瞳……って、コレもだよ(´・_・`)p。
・年は15……その年代の小娘が一体何人いると思ってるんだ?
・声が綺麗、って主観が違っていたら判らんだろう?
・身長は低目、ってサイズを書け、サイズを!(>_<)
・胸が大きい、ってコレもだ。 サイズは判らんのか!? って違うぞ!? サイズを知りたい訳はなく……っていや、知りたいんだが変な意味じゃない!
こ……この特徴だけで人を探すのか、私は? 先輩……私くじけそうです(´・_・`)
「早く、急いでよジーク、ほらこっちよ」
この辺りではありきたりな金の髪と蒼い瞳の少女が、少年と連れだって小走りで向かってくる。
羨ましいものだ。
私があの年頃の頃は異性と一緒にいる事などなかったなあ……。
しみじみ……(´。`))。
ん?
などとしみじみとしていたら何処かへ行ってしまったが……、まあいい。 何か用事がある訳ではないしな。
結局その日一日街中を歩いていたが『キャロル・ブルックス』を探し出す事は出来なかった。
* * *
次の日も私は街を歩いていた。
まるで見当もつかない探し人である。 部下は一旦解散させ、私はひとりで彷徨う歩く。 って、寂しい言うな!
なんせ部下を連れ歩くとそれだけで給料が発生するからな。 節約せねば。
「ほら。 急いで急いで」
歩く先に昨日も見掛けたふたりが見える。 仲のいい事だ。
うちの嫁なんてもう手を繋ぐ事なんてないからなあ……(´д`) あんのパワフルばばあが……。
「今度はなんだい、キャリー?」
キャリーだと!?
少年の言葉にバッと私はそちらを振り返り、人を射殺すような視線を向ける。
私の眼に映るのは昨日見掛けたふたり組だ。
キャリー……キャリーね。
頭の中で反芻しつつ、懐から逮捕状を取りチラリと中を覗く。
そこにある名は……キャロル・ブルックス。
…………違ったようだな。
結局この日も一日街中を歩いていたが『キャロル・ブルックス』を探し出す事は出来なかった。
一体何処にいるんだ、キャロル・ブルックスは……?
* * *
あれから何度も何日も街の中を歩き、告発者であるエリザベス・ハバードにも会い、その特徴や住所を聞き取ったというのに、キャロル・ブルックスに会う事が適わなかった。
何故だ?
何故こうも会えないのだ!?
彼女の家だというそこに行っても住んでいるのは『パーマー』さん一家だという。 くそっ……、『ブルックス』さん家は何処なんだ!?
だが私は諦めない。
何故ならそれが私の仕事だからだ。
しかし至極簡単と言う事で始めた仕事だが、これで中々難しいものだな。 だがこれも一人前の治安維持官としての初仕事だ!
何とか熟さねば、また見習いへ落とされてしまう! 見習いになんてベテランのアシスタントみたいなモンだからな。 そうなったら折角のリーダーっぽい立ち位置が下っ端へ逆戻りだ。
そうなったら嫁の絶対零度の視線が私を凍てつかせる事だろう(T_T)
何とか独力でキャロル・ブルックスを見つけなくては……!
そんな私は街中で聞き込みを始めた。
冴えてるな、私(o^∀^o)
どんな人間から知らないが、街に住んでいる以上は街での目撃証言は必ずあるはずだ!
「ジーク。 ほら、今日はこっちよ」
「また今日も砂糖菓子かい? 太るよ?」
「乙女に向かって何て事を言うのよ! お菓子は別腹なのよ、ジーク」
「別腹だろうが何だろうが本体は一緒じゃん……」
「ジーク……! それ以上言ったら全国の婦女子を敵に回すわ」
「そ……そうかい? よく解らないけど解ったよ、キャリー」
これはこれは……先日も見掛けたふたりの様だ。
丁度いい。
「キミたち、ちょっといいかな?」
そう、分からなければ訊く。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥である。
そう思えばちょっと尋ねる事に何の躊躇いがあろうか。
「はい? 何でしょうか?」
答えたのは少年。 多少の警戒心は見えるが、こちらは極普通の格好をした一見普通の人なのだ。 無碍には出来まい。
「実は人を探していてね。
キャロル・ブルックスという女性をご存じだろうか?」
問うと少年は目を見開き、少女を見た。 これは……どういう反応なんだろうか?
この少女は何かを知っているのか?
「キャロルは先日ニューヨークに引っ越しましたけど?」
「えっ!? そうなのかい?」
ここ、マサチューセッツ・セイレムからニューヨークまでの距離となると……馬車で2~3週間の旅になるな……。 それも天候に恵まれたらの話だ。 恐らく片道一ヶ月ほどの行程になるだろう。
「はい。 知り合いのインディアンにも会いに行くと言ってましたから、実際にどれくらいの時間で向こうに着くかは分かりませんけど」
知り合いのインディアン!?
そんな知り合いがいるのか、キャロル・ブルックス。 これは本当に魔女なのかも知れないな……。
驚愕する私を心配そうに見つめる少女の瞳はとても綺麗だ。
突飛もない話だが嘘はついていないのだろう。
そう、私ほどにもなるとそれくらいは解るのだ! まあ、まだ見習いから上がったばかりの新米治安維持官だがな!
「そうか。 教えてくれてありがとう。 助かったよ」
「いえ。 どういたしまして」
そして私は翌日、ニューヨークへ旅立ったのだ。
キャロル・ブルックスを捉える為に。
* * *
「キャリー。 なんであんな嘘をついたんだい?」
「いや、あの人絶対怪しいって。 ママが家に来てたって言ってた人だわ、きっと。
あんまり怪しすぎたから、咄嗟に他人の振りをしたって言ってたもん」
「家にまで!?
でもいいのかなあ……。 あの人意味なくニューヨークまで行っちゃったよ」
「いいじゃない。 ニューヨークはこれから発展していく街よ。 あ、その前にインディアンに会いに行くんじゃないかしら?」
「無事に帰って来れたらいいけど……」
その後、ヴィジラント・マザーがふたりの前に現れる事はなく、キャロル・ブルックスはキャロル・パーマーとなり、幸せに暮らしましたとさ。
ちゃんちゃん♪
ヴィジラント 油断のない、警戒を怠らない
マザー マザー家は当時宗教界の頂点にいた家系、とのこと




