第16話/それぞれの未来
全国ツアーの最終日。東京ドームは、ツアー初日と同様に巨大な観客で埋め尽くされていた。しかし今回は、全国を巡ったツアーを経て集まったファンの熱量が、初日以上に充満していた。舞と悠は、会場入り口で手を握り合いながら、「ついにファイナルだね」と互いに微笑む。結婚してから初めてのファイナル参加であり、全国ツアーの集大成を目の当たりにできる特別な日である。
他のファンたちも各所に散らばり、互いの再会を喜びながら、全国各地で得た経験を胸に、秩序ある応援を心がける。田村は前方エリアを確認しつつ、「全国のファンが見本になる日だ」と自らを鼓舞する。京子は舞の隣に座り、ツアーを通じて培われた応援文化がどれだけ浸透したかを確認するように会場を見渡す。
ステージの照明が落ち、巨大スクリーンにBLJメンバーのシルエットが映し出されると、会場全体が息を呑む。歓声が一斉に湧き上がり、ステージと観客席が音と光で一体化していく。舞と悠は手を握り、全国ツアーを経て得た絆と熱狂を噛み締める。
ライブは初日と同じく、新曲からスタート。観客席の手拍子と歓声が一体となり、東京ドーム全体が生き物のように揺れる。舞と悠は互いの手を握り、笑顔を交わす。舞の目には涙が光り、悠も自然と目を潤ませた。「全国のファンが一つになってる…すごいね」舞。
「うん、僕たちも、その一部なんだ」悠。
他のファンたちも、それぞれの立場で歓声を上げ、秩序を守りつつ熱狂する。田村は若いファンたちに目を配り、拍手や手拍子のタイミングを自然に導く。京子は声を出して応援しながら、新しい世代のファンに手本を示す。三浦亮太はカメラを構え、光と歓声、熱狂と秩序が融合した瞬間を映像に残す。佐野健太は記録用のメモ帳を片手に、演出や歓声のタイミングを詳細に書き込む。
ライブ中盤、BLJのヒット曲が続き、観客全員が一体となる。手拍子と歓声、歌声がドーム内で渦を巻き、舞と悠は顔を見合わせ、互いに感動の笑顔を交わす。舞の小さな声が耳元で響く。「やっぱり、音楽は人を繋ぐね」
悠は力強く頷き、「結婚も、全国ツアーも、ファンも…すべてがつながってる」と応える。
クライマックスでは、BLJメンバーがツアー中に得たファンの声援や応援の工夫を反映した特別演出を行う。舞と悠の結婚祝いも再びスクリーンに映し出され、全国ツアーを通じて築かれた秩序ある熱狂と感動が、観客全体に広がる。会場は一斉に拍手と歓声で揺れ、舞と悠は涙を拭いながら、観客と一体になっていることを実感する。
ライブ終了後、観客が退場する中、他のファンたちは控室前で集まり、全国ツアーの成功と熱狂を語り合う。田村は微笑み、「熱意と秩序、友情と音楽…すべてが融合したツアーだった」と満足げに話す。京子も頷き、「これがBLJ文化の成熟なんだ」と感慨深げに言葉を添える。舞と悠は手をつなぎ、全国のファンと共に作り上げた秩序ある熱狂を胸に、静かに誓う。「これからも、音楽も人生も、友情も楽しみ続けよう」
⸻
全国ツアー終了後、BLJの活動は次世代のファンに引き継がれる形で進む。SNSやオンラインコミュニティでは、秩序ある応援文化の共有が活発化し、若い世代のファンが先輩たちの経験を学びながら熱狂を楽しむ。
田村、京子、舞、悠、他のファンたちは、全国ツアーで培った経験を活かし、新しいファン教育や応援マナーの啓蒙を行う。各地の小規模ライブやフェスでも、この文化が自然に浸透し、BLJの音楽とファン文化は単なる熱狂に留まらず、成熟した秩序ある熱狂として定着していく。
こうして、BLJ再始動の全国ツアーは、音楽、友情、秩序、熱意のすべてが交錯する新しい文化の象徴として完結する。舞と悠、他のファン、そして全国の応援者たちは、この体験を胸に刻み、次世代へとつなぐべき物語を確かに作り上げたのだった。
全国ツアーの熱狂が冷めた後、各地のファンたちはそれぞれの日常に戻っていった。しかし、心の中にはかつてない充実感と、新しい価値観が芽生えていた。秩序ある熱狂、仲間との連帯、そして音楽を通して得た多様な経験——それらは日常の些細な瞬間にも影響を与え始める。
舞は、ツアーで感じたファン同士の助け合いや、秩序ある応援の意味を胸に、大学でのゼミ活動や友人との関わり方にも自然と気配りを意識するようになった。「熱意を持つことと、周囲を尊重することは両立できるんだ」と自分自身の言動を見つめ直す日々が始まる。
悠はギターの練習や自身の演奏活動に、ツアーで得た観客との呼吸を反映させる。ステージ上での演出の微細な工夫や、観客席の表情に注目する習慣は、そのまま彼の音楽表現を深めていく。仕事の合間にも、全国のファンから届く感想やSNSの投稿に目を通し、音楽が人々の心に与える影響を改めて実感する。
名古屋や大阪、福岡、札幌で出会ったファンたちも、それぞれの生活の中で新しい挑戦を始める。初参加の学生たちは、手拍子や歓声の意味を理解したことで、学校生活や部活、地域活動でも協力や思いやりを意識するようになる。先輩ファンたちは、自分の経験を次世代に伝える活動を始め、ファンコミュニティの文化を育む役割を担う。
一方、BLJメンバーは全国ツアーで得た手応えを胸に、次の創作やステージの計画に着手する。舞と悠の結婚を祝福した演出は、メンバー全員にとっても新しい生活や表現のモチベーションとなり、音楽と人生がより密接に結びつく瞬間をもたらした。
やがて日常の風景の中で、彼らはふとツアーの光景を思い出す。歓声、拍手、観客の笑顔、手拍子が同期したあの瞬間——それは過去の栄光やノスタルジーではなく、未来に向けての力の源泉だった。小さな町のライブハウス、地方のフェス会場、そして東京ドーム——そのすべてが、これから歩む人生の指針となる。
舞と悠、田村、京子、三浦、佐野、その他のファンたち。それぞれが異なる道を歩みながらも、全国ツアーで築いた経験と絆は胸の奥にしっかりと根を下ろしていた。音楽を通じて育まれた連帯感は、時間や距離を超えて彼らをつなぎ、これからの挑戦や日々の暮らしを支える力となる。
そして誰もが、確かな一歩を踏み出す——自分の夢を追い、愛する人を思い、仲間と共に未来を切り拓くために。全国ツアーという大きな物語は終わったが、その余韻は、これから始まる人生の新たな章へと静かに受け継がれていったのだった。
こうして八人の推し活は未来へと続いていくのだった
田村の書斎には八人と悠達二人の子供が仲睦まじく写っている写真が飾られていた。