幕間 新たなる闇社会の組織
ウィルハース王宮にある大浴場に、金髪の美しい少女が、ひとり悠然と湯船に浸かっていた。
「――レオーネね。どうしたの?」
その少女がひとり言を口にする――いや、違った。彼女の横に突然人影にが現れる。深紅のローブを着たこちらも少女だった。フードを被っているので顔はわからないが、フードの外にこぼれている髪の色はローブのそれと同じだった。
「殿下、ヨハネディクト大司教が亡くなられました」
「――アナタはあの『仮面の男』を追っていたはずでしょ? どういうこと?」
殿下と呼ばれた金髪の少女は、そのような報告を受けても特段表情を変えることもなく、相手にそう質問する。
ローブを着た少女は『仮面の男』を追って大聖堂の中に侵入したところ、あの場面を目撃したのだと言う。
「状況から見て、おそらく、大司教の死は『仮面の男』による殺害――と公表されるでしょう」
「まあ、そうなるでしょうね。まさか、王都の英雄が一転、大司教殺しに凶悪犯と堕ちるなんて、思ってもいなかったでしょうから、滑稽だわ」
金髪の少女は、「フ、フ、フ――」と笑みを浮かべる。
「――殿下はやはり、『仮面の男』は私たちの障害となると考えていらっしゃるのでしょうか?」
「そうね……いずれ、そういうこともあると考えていたわ。だけど、もう大丈夫。彼の弱みを掴んだから」
「彼の弱み――ということは、『仮面の男』が誰かわかったのですか?」
金髪の少女は深紅のローブを着た少女に顔を向けてニッコリとする。
「セルボがうっかり『仮面の男』と接触してしまったおかげでね。彼女が、彼のニオイを覚えていたの。あとは、その時間に村から離れていた男性を特定し、持ち物を《《借用》》して彼女に確認させればイイだけのことよ」
「なるほど。犬人族だからなせる技ですね……まさか、殿下はそのことまで考えてセルボを送ったのですか?」
「私を買い被り過ぎよ。何者かわからない相手に、こちらから接触するような愚行は考えてもいなかったわ。ただ、偶発的な案件も利用しなければ――そう思っただけ。それと、ふたりだけの時は、私のことを殿下でなく、『マダム』と呼びなさい」
「し、失礼しました、マダム――して、仮面の男とは……」
深紅のローブを着た少女がそうたずねると、金髪の少女は「フ、フ、フ……」と含み笑いをしたあと、「昆虫テイマー……」とだけ答える。
「昆虫テイマーですか……」
「いずれにせよ。闇社会では相手に弱みを握られたら負けよ。覚えておきなさい……」
「イエス、マム――」
*
「アンリ? 昨日、履いていたパンツはどこにやったの?」
母ちゃんがオレにそうたずねてきた。
「どこって、いつもの洗濯物入れのカゴに入れたよ」
「入ってなかったわよ」
「――えっ?」
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読者のみなさま
ここまで読んでいただきありがとうございます!
大変申し訳ございませんが、こちらの作品はしばらく休載とさせていただきます。
再開は未定です。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
12月から新作を公開していく予定です。
どうぞ、そちらもよろしくお願いします。




