第四話 王国軍が攻めてきた……はずが、なぜかヘンなやつらもついてきた㉒
ウィルハース王国、王都ハースにある、ハース大聖堂――
聖都ガルチにあるアスタリア聖教の総本山、ガルチ大聖堂には及ばないモノの、その大きさはウィルハース王宮と遜色ないそうだ。
それは、ココが現代人による最初の国家成立の地であること、それだけ重要な地であることに他ならない。
ここの主はヨハネディクト大司教――代々、本国の教皇を輩出してきたヨハネディクト家の当主であり、将来、教皇になられると言われる人物である。
「ほほう……魔人鎮圧に、『仮面の男』なる人物が率いる集団が関わっていたと――」
ヨハネディクトは唯一神、アスタリアの巨大な像の前で、司祭の男と会話していた。先日、このハースで発生した『魔人事件』の調査結果、それについての報告を受けていたのだ。
「はい、大司教。魔人化した市民に『プロポリス』なる塊を飲ませ、元のカラダに戻していったそうです」
司祭の男は、「そんな奇跡が本当に起こるのですね」と少し興奮気味に声を弾ませる。
「奇跡はあってはならないのだよ。この教会の外では……」
ヨハネディクトはそうつぶやく。
「は? 大司教、今なんと?」
「なんでもない――それで、魔人化した市民はその後、どうなったのですか?」
ヨハネディクトの質問に、司祭は「一日から二日、眠り続けたあと、目が覚め、それからはまったく普段通りの生活ができているようです」と応える。
「ほう、それはよかったです」
「はい、本当に素晴らしいことです。市民は、『仮面の人物は王都を救った救世主』だとウワサしております」
アスタリア様が現世に送り出した『救世主』なのかもしれません――そう司祭が言うと、ヨハネディクトは「クスッ」と含み笑いをする。
「調査、ありがとう。では、下がってよい」
司祭が「わかりました」と一礼したあと、大きな礼拝堂から出て行った。
「さて、望みどおりひとりになったぞ。そろそろ現れたらどうだ? 《《かくれんぼ》》は大スキだが、鬼になるのはイヤなのだ」
――えっ? コイツ、オレのことを気づいていたのか?
実は王都にやってきたついでに、大司教とやらと話をしようと考えていた。
そこで、『幻像』のスキルで姿を隠し、ヤツがひとりになったところで話かけようと思っていたのだ。まさか、向こうから声をかけてくるとは――
オレは『幻像』を解除し、ヨハネディクトの前に現れた。




