第四話 王国軍が攻めてきた……はずが、なぜかヘンなやつらもついてきた⑮
村の周りを囲んでいた古代聖教の教徒たちを拘束することに気を取られていたら、いつの間にかロイドが村の人たちに手を出していた。いや、ガチで焦った。
だって、日の入りまで待つという話だっただろ?
こっちだって、やることがいろいろあるんだから、アポイントは約束の時間でお願いしたいんだけど……
――なんて、心の中で不満を言いながら、間一髪、セリーネに手を出される直前、間に合う。
「テ、テメエ、やっと出てきやがっ――」
ロイドが言い終わる前に、オレはヤツにパンチを食らわした。
「ぐふぁっ!」
そのまま、何発もヤツの顔を殴る!
たまらなくなったのか、ロイドは何歩も後退し、オレから離れた。
「コ、コノヤロウ! 人がまだ話しているのに、攻撃しやがって! 卑怯だろ!」
コイツにだけは卑怯だと言われてたくない。
オレはかまわず、相手を再び殴る。はっきり言って、一発で打ちのめせる自信はあったが、それじゃ面白くない。ヤツが躱せない程度に手加減して、殴り続けた。
突然、オレの拳が空振りした。そこにいたはずのロイドのカラダがいなくなっている。
前を見ると、ヤツが五十メートルほど先にいた。
どうやら、『縮地』という武技を使ったようだ。本来、相手との距離を縮めるスキルなのだが、逃げるのにも使えるらしい。
「ゆるせねえ……ぜってえ、ゆるせねえ! 村ごと吹き飛んじまえ!」
ロイドが両手で持った神剣を振り上げると、刃の部分が真っ赤に輝き出し、やがて大きな火の玉が現れる!
「うわぁぁぁぁっ!」と、村の人が逃げ惑う――だからって、逃げてどうなるものでもない。
「くらえっ!」
ロイドが剣を振り下ろした瞬間――
何も起きない……
「えっ……?」
ロイドが呆然とした表情で、自分の手を見ていた。そこにあるはずの神剣、アダマスがない。
「ど、どこにいった?」
慌てて辺りを見回すロイドだが、黒ローブの男――つまり、オレが右腕を上げているのを見て、動きが止まる。その右腕に神剣があったからだ。
「テ、テメエ……いったい、どうやって……」
まあ、空間操作のスキルで奪っただけなのだが……
ヤツが使っている武技は『煉獄剣』だということはわかっている。これは、剣の刃に火属性の魔力を込め、それを放出することで、巨大なファイアボールのような効果があるのだが、剣技であることが前提のため、剣がなくなると、技は空振りになってしまう。
つまり、剣技であるゆえの弱点を突いてみた。
タネ明かしをすると実につまらないのだが、相手の精神的なダメージは絶大だったようで、完全に呆けている。
さて、それじゃあ、最後の仕上げといくかな――
オレはヤツから取り上げた神剣、アダマスを『簡易アイテムボックス』にしまう。それから、空間操作でロイドの前に移動。
「い、いつのま……」
ロイドが言いかけたところに、手にしていたキラービー族特性プロポリスをヤツの口へ突っ込む!
「――!?」
そのまま、ロイドのアゴを押し上げ、ムリヤリ飲み込ませる。ロイドは苦しそうにせき込んだ。
「な、何を飲ませた?」
オレはそれに応えず、ヤツが死なない程度の連続ビンタを食らわせる。
「ぐふぁぁぁぁっ!」
ヤツがもんどりうって苦しがる。イイきみだ。
「コノヤロウ――調子こいているんじゃねえ!」
そう言って、オレに向かってくるがさっきほどのスピードはない。
「な、なんだ? 武技が使えねえ……」
プロポリスの効果で、ヤツの魔力は枯渇している。
この世界の戦闘職は魔力によって強化されている。それを取っ払えば、一般人よりちょっと強いだけだ。
魔力も剣も奪われたロイドはもはや張り子の勇者。オレの高速ビンタを受け止めるだけのサンドバックとなっていた。




