第四話 王国軍が攻めてきた……はずが、なぜかヘンなやつらもついてきた⑩
さて、そのころオレはコンロンの大樹海、それもその最奥地にいた。
このあたりは、瘴気という魔力を含んだ粒子が飛散し、それに順応した植物や崑蟲族しか生存できない場所である。オレは女神と崑蟲王の加護があるので、この場所でも行動できる。それでものどがヒリヒリすので、快適というわけにはいかない。
そんな場所になぜやって来たのか――というと、キラービー族の巣に用事があったからだ。
十階建てのビルにも相当する大きな巣に、オレは入った。この時期は大樹海も寒い。キラービー族の行動力も極端に減り、巣にこもってしまうのである。起源であるミツバチと同じ特性だ。
キラービーが身を寄せ合って眠っているのだが、その中にハニーを見つける。オレは声をかけた。ちなみに、今の彼女は崑蟲の姿をしている。
「うにゃ、うにゃ、これはアンリさまぁ……どうしたのですかぁ?」
眠気眼を擦りながら、彼女はそうたずねてきた。
「起こして悪かった。少しばかり『プロポリス』をもらうけど、イイかな?」
そうお願いすると、「ふぁあい、どうぞ、好きなだけ持っていてくださぁい」とハニーは言う。
それじゃ、遠慮なく……とオレは巣の壁をナイフでゴリゴリと削った。
プロポリスを知らない人のために、ここで説明しておこう。
ミツバチの巣を清潔に保つために、ミツバチは草木の樹脂を蜜蝋や自身の唾液などに加え、それを巣の内壁などに塗る。その物質が『プロポリス』だ。
草木の樹脂には強い抗菌作用があるため、巣内に悪い菌が入り込まないようにそのようなことをしていると考えられている。そうやって、まだ免疫力が充分でない幼虫を守っているのだ。
崑蟲族であるキラービーのプロポリスは、大樹海に生えている植物の樹脂が含まれていた。オレが研究した結果、その成分には強い魔力を含む瘴気を中和するチカラがあるとわかった。キラービー族はその『特性プロポリス』で、まだ瘴気への耐性が弱い幼虫を守っていたのだ。
なぜ、大樹海の植物にはそのような成分を持つのか?
これはオレの仮説なのだが、大樹海の植物は瘴気を取りこみ中和することで含まれる魔力を成長エネルギーに変えている――と思っている。
大樹海の植物は大きいモノで数百メートル。しかも、その成長力は凄まじい。瘴気を活用する能力を得たことによって、それだけのエネルギーを獲得できたのだろう。
まあ、そんなウンチクはどうでもイイのだが――魔力を中和する成分は樹脂の中でも効力を発揮し、それをキラービー族は利用して巣を守っている――という感じだ。
ところで、そんなモノを何に使うのか? だって?
まあ、それはこのあと、すぐにわかる。
オレは採取したばかりのプロポリスを簡易アイテムボックスにしまう。
簡易アイテムボックスとは、最近、オレが発明したモノだ。空間操作スキルを利用して作った小さな結界に、モノを収納するのである。
ラノベで登場するアイテムボックスとは少し機能が違うのだが、モノを保存するという使い方はまったく同じだ。
プロポリスを手に入れたオレは、すぐにトルト村へ戻る。
軍は日の入りまで攻撃を加えないと伝えてきた。信じているわけではないが、まったく反故にして、すぐに攻撃することはしないだろう。その時間で、オレはあることを終わらせようと考えていたのだ。
トルト村に戻るとみんなのいる場所――には向かわず、そのまわりを探索する。
すると、いるわいるわ――灰色のローブを着た怪しい人物が――




