第四話 王国軍が攻めてきた……はずが、なぜかヘンなやつらもついてきた⑨
翌日、バルボア率いる王国軍はトルト村に到着した。
「本日、日の入りまでに勇者パーティを妨害した仮面の人物を引き渡せ。さもなければ、村へ総攻撃を加える」
軍は村人たちに対し、このような要求を突き付けてきた。
「おい、日の入りまでって、もう三時間もないぞ。大丈夫なのか?」
村人のひとりがそう声にする。
「大丈夫よ、みんな、アンリを信じましょ」とセリーネは言うのだが、誰も不安をぬぐい切れない。
「でもさ、もしも――もしもだよ。自分だけ助かりたくて、あんなことを言ったんだとしたら――?」
仮面の人物を呼びに行くと言って、村からひとりで逃げ出したのだとしたら――
「バカッ! アンリがそんなことするはずないでしょ!」とセリーネは怒る。
「だ、だけど、アイツの父親は魔族を前にして逃げ出したんだろ?」
そんなことを言い出す者も現れた。
「お、おい、ちょっと……」と村人が視線をある女性へ向けた。エラ・ファーブル、オレの母ちゃんだ。
彼女はニッコリして、こう応える。
「たしかに、あの子はウソつきで、お調子者で、人の話を聞かないけど――」
か、母ちゃん……それ、ちっともフォローになってないんだけど……
「でもね、あの子はこの村のことをいつも一番に考えている。だから、この村を見捨てるなんてことはしないわ。だから、待ちましょ?」
母ちゃんの言葉に、「そうだ! アイツはオレたちを裏切ることはしねえ!」とみんな言ってくれた。
ありがとう、みんな――
「――だが、日の入りまでに仮面の人を連れて、帰ってこれない可能性もある。その時に、どうやって、軍を引き留めるか――それを考える必要があるだろう」
そう村長が言うので、再び全員が不安な表情を見せるのだった。
その頃、王国軍の本陣では――
「なあ、こんなまだるっこいことをせずに、さっさと村人をたたき斬っちまえばイイじゃんか? そのうち、ヤツも出てくるだろ?」
ロイドはテントの中に設置した長椅子にだらしなく座りながら、父親であるバルボア将軍に提案する。
「陛下からの命令だ。仮面の人物をおとなしく引き渡したら、村人には罰を与えるな――とな」
トルト村は王族の領地である。税収が減るような事態は避けたい。できるだけ大ごとにはしたくないのだ。
「なんだよ。つまらねえ……」
納得がいかない――という顔を見せるロイド。急に何かを思いついたようで、ニヤリとする。すると、新たに手に入れた『神剣』を手にして、立ち上がった。
「おい、何をするつもりだ?」
「村人に手を出さなければイイだろ? まあ、見てろよ」
ロイドは外に出ると、「村のヤツら出て来い!」と大声を出す。
何事かと、村長の家に集まっていた村人が外に出てくると――
「いいか! さっさと仮面のヤロウを差し出さないと、村ごとこうなるからな!」
ロイドは神剣を村人たちに見せる。
『アダマスの神剣』、ハルパ―という湾曲した内側に刃がある片手剣だ。
ロイドはそれを両手で振り上げる。すると、剣先が真っ赤に輝き出した。それがまぶしくて、見ている者は目が開けられなくなる。
「うりゃぁぁぁぁっ!」
ロイドはジュラの森がある方向へそれを振り下ろすと、大きな炎が、轟音を鳴り響かせ、大きな溝を作りながら森へ向かう。森を木々をなぎ倒し、百メートルほど進んだところで、その炎は消えた。だが距離にして一キロ近く、幅は数十メートの範囲で、全てのモノが焼かれてしまったのだ。
「ハ、ハ、ハ! こりゃスゲエぜ! おい、わかっただろ? もはや、逃げ場はもうないぞ! さっさとヤツを連れてこい!」
勝ち誇ったように、ロイドの高笑いが響いた。
あのヤロウ、なんてことをしやがる――オレの大事な森を――
この落とし前、必ずつけさせてやるからな――




