第四話 王国軍が攻めてきた……はずが、なぜかヘンなやつらもついてきた②
勇者パーティが魔族領へ向かうことを諦め、王都へ戻ってきてしまったことについて、どう後始末をするか――バルボアとヨハネディクトの話し合いは続いていた。
「――ですが、勇者パーティが王国に戻ってきたことは、もう多くの者に知られてしまっています。すぐに再出発ならまだしも、聖剣がなければそれもできません。再出発が遅れてしまうと、その理由を説明しなければならない事態になるかもしれません」
そう、バルボアは説明する。だが、ヨハネディクトは――
「別の理由に置き換えればイイのです。さすれば、民も納得するでしょう」
「別の理由?」
「トルト村に現れた仮面の人物――私が思うに、魔族ではないかと――」
「魔族!?」
おいおい。オレ、魔族にされちゃったよ。
「いや、ありえる。あの強さ、尋常じゃなかった。魔族なら納得できる!」
それまで、ふたりの会話をつまらなそうに聞いていたロイドが、いきなり、カラダを起こすと、ヨハネディクトの考えに乗ってくる。
「やはりそうですか。そうなると、村人全員が魔族に洗脳されている可能性はありますね」
ちょっと待て、どうしてそういうことになる?
「ああ、そうだったかもしれない。だから、オレのことを追い出そうとしたんだ」とロイド。いや、それはオマエがクズだからだろ?
しかし、ロイドが味方についたことで、ヨハネディクトはこう提案してきた。
「バルボア将軍。ここは軍を動かすべきです。そして、魔族を差し出すように村人へ要求するのです」
――えっ?
「し、しかし、魔族に洗脳されているとなれば、村人がその要求を素直に飲むとは思えないのですが――」
「ですから、軍を送るのです」
コイツ……何を言っている?
「魔族を匿う村を野放しにするわけにはいきません。魔族はいずれその勢力を広げていくことでしょう。ですから、今のうちに村ごと焼きつくすべきです」
だがら、何を言っているんだ?
「いやしかし、村人は洗脳されているだけなのでしょ? さすがにそれで命までとるのは――」とバルボアでさえ、腰が引き気味だ。
「残念ながら、魔族に洗脳された者たちを助ける手段はありません」
「――えっ?」
「われわれができることは、これ以上、他の村にも魔族の手が広がらないようにすることです。その意志を魔族側に示すためにも、村ひとつの犠牲はやむを得ないことでしょう」
おいおい、メチャクチャなことを言ってやがる。それが聖職者のやることか?
「そ、そうかもしれん――だ、だが、あの村は王族領でもある。国王陛下のお許しがなければ――」
「それは、私にお任せを――陛下を説得します」
そう、ヨハネディクトが言い出す。
「なら、オレも行くぜ! あの仮面のヤロウはオレがぶっ殺す!」
「ロイド、何を言っている? 聖剣がこんなんだから、こうして話し合っているんじゃないか! いったい、どうするつもりだ」
バルボアにそう言われて、ロイドも「くそ、そうだった」と悔しそうな顔を見せる。
するとヨハネディクトがこう提案した。
「ならば、剣はこちらから提供しましょう。実は神盾アイギスと一緒に本国から預かっているモノがあります」
「なんだ? それは?」とロイドがたずねると――
「聖剣ではありませんが、英雄、ペルセウスがアイギスとともに、怪物、メドゥーサ討伐で使用したとされる剣――」
「ま、まさか『アダマスの神剣』のことか?」とバルボアが驚く。
おいおい、アダマスってアイギスとともに、鍛冶神が鍛えたという伝説の剣じゃないか!
おじいさんから話を聞いたことがある。なんでも、金剛石より硬く、高熱にも耐えるとか……
「ハ、ハ、ハ! イイぜ! 大司教様よ、その剣を貸してくれ。それさえあれば、あのヤロウに今度こそ勝ってやる!」
――こりゃあ……想定していたよりも悪い事態になってしまったなあ。




