第三話 クズ勇者にボコボコにされた……はずが、なぜかボコボコにしていた⑳
さて……成り行きで出てきちゃったけど、どうするかな? できれば、穏便に済ませたいのだけど……一応、言ってみるか。
「――このまま、村を出て行くならなにもしない」
「何を言ってやがる? それはこっちのセリフだ。バカにしているのか?」
うーん、やっぱりダメか……
「――なら、仕方ない」
オレはそれらしくポーズをとると、相手に《《おいでおいで》》をする。
「だから、ふざけんじゃねえ!」
そう声にしながら踏み込んできた。さすがに速い!
クズ野郎だが、それでも『勇者』の称号を持つだけのことはある。スピードなら、メイファと同等――大剣を持ってのこの動きだから、身体能力だけを比較したら、メイファ以上だ。
だが、まだ相手の動きが見えている。大丈夫だ。
オレは横に振ってきたヤツの剣を頭を下げて躱す。そのまま、相手の懐に潜り込むと右腕を掴んで投げた。いわゆる一本背負いという技だ。
実は、時間があるときメイファと手合わせをしてもらって、その時に投げ技も教えてもらっていた。
なんとなくできそうなのでやってみたのだが、いやあ、決まると気分がイイ!
「グファッ!」
なさけない声をあげながら、ロゼルはあお向けに倒れる。
「――なんだ、勇者というのは、こんなに手ごたえがないのか」
そんなふうに挑発してみた。
ロゼルは立ち上がると、「このヤロウ……手加減してやれば図に乗りやがって……」と悔しそうにする。
「わかったよ。それじゃ、オレさまの全力を見せてやろうじゃないか」
すると、なにやら詠唱を行い、ロゼルのカラダが二回ほど光る。
ほう? 強化魔法か?
オレはヤツを『鑑定』してみた。
名 前: ロゼル・バルボア
年 齢: 十九歳
種 族: 人間
ジョブ: 剣士/勇者
レベル: 11
H P: 425/425
M P: 72/192
攻撃力: 48 防御力: 32
素早さ: 44 精神力: 38
スキル: 剣技(縮地、波動剣、煉獄剣、四連斬、残像)
魔 法: 強化魔法(反応速度アップ Lv3、筋力アップ Lv3)
状 態: 強化魔法(反応速度アップ Lv3、筋力アップ Lv3)
やはりそうか――それにしても、さすが勇者。かなりのステータスだ。
「フ……オレさまを本気にさせたことを後悔させてやるよ」
そう言って、剣を上向きに構えると、刃が真っ赤に輝き出す。
「ロゼル、やめろ! こんなところで、それを使ったら、辺り一帯、吹き飛ぶぞ!」
そう、純白の軍服を着た大男、ハリスが叫ぶ。
――へっ? 吹き飛ぶ?
「くらえぇぇぇぇっ!」
大剣を振り下ろすと、剣先から巨大な炎の柱が伸びて、オレに向かってきた!
おい、これはヤバいだろ! 避けるのは簡単だが、そんなことをすれば、後ろにいる村人たちが一瞬で蒸発してしまう火力だ!
オレは慌てて空間操作を行い、この火柱全体を受け止めるくらい大きな『結界』を作る。
バァァァァン!!
モノスゴい爆発音とともに、炎が飛び散った!
ひえぇぇっ! これって、人間の出せるエネルギー量なのかぁ? とんでもねぇ!
なんとか、結界を盾代わりにして防いだが、その結界さえ吹っ飛ぶほどの破壊力だ!
しかし、ひと息ついているヒマはなく、ロゼルがオレの目の前に現れ、剣を振り上げる!
『縮地』という武技だ。これが初見だったら躱せなかったかもしれない。
しかし、メイファからその武技を見せてもらっていたので、躱し方を知っていた。
おかげで、間一髪、避けられたのだ。
それにしても、なんてヤロウだ! 大技を繰り出したすぐあとに、いきなり飛び込んでくるとは――このバケモノめ。
「このヤロウ……ぜったいコロス――」
立て続けの大技を躱されて、ロゼルはなおさら怒りまくっている。また、剣先から真っ赤な炎が見えてきた。
もうカンベンしてくれ~。これじゃ、キレた幼稚園児と一緒じゃないか。キリがない。
とにかく、ここには村の人たちがいる。彼らを守りながら、こんな人間爆弾と戦い続けるのはキビシイ。
どうすればイイ?
ああ、挑発なんかしなければよかった。
すると、ロゼルが突然、「うっ……」と唸って前のめりに倒れた。なんだ?
理由はすぐにわかる。ヤツが立っていた場所に、純白の軍服を着た大男がいた。背後からロゼルの後頭部を攻撃して、気を失わせたのだ。
えっ? 仲間割れ?
「はずかしいところを見せた――」
ハリスとか言ったか? 勇者パーティの大男は意識のないロゼルを抱えると、家の中に連れていくのだった。
結局、勇者パーティはその日のうちにトルト村を出て行った。




