第三話 クズ勇者にボコボコにされた……はずが、なぜかボコボコにしていた⑲
トルト村の人たちが集まって、勇者パーティが寝泊まりしている家の前にいる。
「勇者さんたち、この村から出て行ってくれ」
村長がそう声を張り上げた。
しばらくして、普段着に着替えた四人が外に出てくる。
「あんだよ、オマエたち。いちいちうるさいんだよ」
面倒くさそうに頭を掻きながら、ロイドがそう言う。
「も、もう我慢ならないんだよ。何もしないくせに、注文ばかり突きつけやがって」
「そうだ! オレたちのジャマばっかりするくせに! ついには乱暴もはたらきやがって!」
村の男たちがそう言い放つのだが、ロイドが睨むと目を背け、それまでの威勢がどこかに行ってしまう。
「ちっ……ひとりじゃ何もできないクセに、こうやって集まっては、自分たちの都合がイイことばかり主張しやがる――やっぱ、田舎者はクズばっかりだな!」
「クズはオマエだろ!」
村人がロイドに向かって罵倒すると、ロイドの顔色が変わった。
「おい、今、言ったのは誰だ?」
威圧的に睨むロイドに、村人は萎縮する。
「誰だって言ってるんだよ!」
ロイドが怒鳴ると、「ひぃ……」と短い悲鳴が、至るところから漏れた。
「もう頭きた! このまま、黙って出て行くつもりだったが、オレのことをクズ呼ばわりするのは許せねえ!」
ロイドが剣を抜くと、村人は後ずさりし始める。
「こらぁ! さっさと出て来い! でなければ、ここにいるヤツらをひとりずつ斬っていく! これは脅しじゃないぞ!」
そんなことを言い出すので、逃げ出そうとする村人が現れるのだが――
「逃げるな! 逃げたヤツから殺す! 逃げられると思うな!」
そんな脅しに、村人たちの足が止まる。
「さあて、誰からいこうかな?」
ゆっくりと前に出るロイドと村人たちの間に、ひとりの少年が現れた。
「お、オレは剣士だ。みんなを助ける責任がある!」
サムだった。剣を抜き、ロイドに向けるのだが、その剣先が震えているのが誰からでもわかった。
「おうおう、威勢がイイね。さすが剣士クンだよ。だがな、相手を選んで啖呵を切りな。先輩からのチュ・ウ・コ・ク。まあ、もう遅いけどな!」
ロイドは剣を振り上げ、サムへ向けて振り下ろす!
「ひいっ!」
剣で頭をかばいながら、しかし、視線を逸らしてしまうサム。もう、斬られる――誰もがそう思った。
次の瞬間、ロイドの剣が止まった。
突然、姿を現した黒ローブの男が、剣を握ったロイドの腕を掴んで止めたのだ。
その人物、怪しい仮面を被っている――
まあ、要するにオレだ。
さすがに「これはヤバい――」と思って、急いで着替えると、空間操作でロイドの前に現れたのだ。ひやぁ……間一髪だったよ。
村のみんなだけでなく、勇者パーティのヤツらも、「何が起きている?」という表情でオレを見ている。まあ、そうだよな。いかにもあやしい格好の人物が、突然、目の前に現れたのだから――うーん、この注目度、なんかクセになりそう。
「誰だ? テメエ……」
ロイドがドスのきいた声で、そうたずねた。
「――虫ケラ以下の分際に名乗る名前などない」
「はあ? ふざけてんのかぁ?」
ロイドは手をひねり、オレの手を振り払った。
「まあ、誰だってイイか? それじゃ、テメエからだ」
そう言って、剣を構えなおす。




