第三話 クズ勇者にボコボコにされた……はずが、なぜかボコボコにしていた⑱
村人たちに担がれて家まで運ばれたオレは、そのままベッドに寝かせられる。
「おばさん、ごめんなさい。私が悪いんです――」
一息ついたところで、セリーネが母ちゃんに頭を下げていた。そして、昨日の出来事をみんなに話す。
「そう……タイヘンだったね、セリーネちゃん。だけど、自分のせいだと思わないで」
母ちゃんは、セリーネにそう伝える。それでも彼女は頭を下げっぱなしだった。
「そうだ! あのクソ勇者が悪い!」
オレを家まで運んでくれた、ボブがそんなことを言うと、サムやジャックも含め、ここにいる村人みんなが「そうだ! そうだ!」と声を張り上げた。
いつもはオレのことをバカにしているヤツらだけど、さすがにアイツらには頭にきたらしい。
「で、でも……」とセリーネがいつまでも気にしているので――
「さあさあ、ココで騒いでいると、アンリもゆっくり眠れないわ。みんな部屋から出ましょう?」
母ちゃんが言うと、みんなが外に出て行った。
「――さて」
ひとりっきりになったのを確認して、オレはカラダを起こした。
「ヤレヤレ、気を失ったフリをするのも一苦労だな……」
そんなことをつぶやいて、頭を掻く。
さすがに勇者というだけあって、ロゼルの蹴りは痛かった。だが、キラービー族のローヤルゼリーと、ベスパ族のVAAMを飲んで鍛えたカラダは、その程度で、動けなくなるはずがない。だが、そんなことがバレたら、タイヘンなことになる。だから、ヤラれたフリをしたのだ。
「……まあ、せっかくだから、あと二、三日はケガ人になって、母ちゃんに甘えようかな?」なんて考える。
しばらく、誰も来ないだろうから、このタイミングで王都の状況を確認することにした。
『バグロード様、おはようございます』
ローズの視界を通して現れたのは、メイファだった。
「うむ、昨日はいろいろと立て込んでいて、話ができずにすまん。それで、バルボアには会えたのか?」
十年前のフーベル地方奪還作戦で、バルボアがウソを吐いていることをネタにカネを要求していたケーニッヒは死んでいた。
そのため、メイファがケーニッヒの協力者だと偽り、バルボアに接触することにしたのだ。
ちょうど昨日、バルボアと会っていたはずなのだが――
『はい、会ってまいりました。将軍は私のことをケーニッヒの協力者だと疑わなかったようです』
彼の横には金貨千枚が積まれていた。
――なるほど。これで、ケーニッヒを殺害したのはバルボアではないとハッキリする。
そうなると、残る線は……
「他にバルボアと接触しようとした者はいたのか?」
『協力者』という人物がケーニッヒと仲間割れし、ヤツを殺害した可能性だ。もし、そうとなれば、やはりバルボアに接触してくるだろうと考えたのだが――
『いえ、それらしい人物が接触してきた様子もなかったです』
ケーニッヒのいう『協力者』も現れなかった。そうなると、ヤツはやはり殺されたのではなく、疾患によって亡くなった――ということか?
「――いまのところ、十年前のこと言いふらしているヤツもいない……ということだな?」
その質問に、ローズが『はい。街の至るところに配下の者を送って、様子を見てますが、そのような話は出てきていません』と応える。
「――そうか」
残念ながら、これで父ちゃん――ユーリ・ファーブルの手がかりを知る手段が断たれてしまった。だが、ケーニッヒが言っていることが真実であるとすれば、また、機会はあるはずだ。
今回は、バルボアをゆするネタを手に入れただけで満足することにしよう。
「それで、バルボアとは他にどのような話をした?」
『はい。まず、ケーニッヒは身を隠すため、王都を離れた。今後は私が伺うと説明しました。それと、次回は追って連絡する――とだけ言ってあります』
「うむ、ご苦労。それで良い」
まあ、これでバルボアとはつながりができた。残る厄介ごとは……
すると、外がなにやら騒がしい――
近くの虫をテイムして視界を共有すると……
「あちゃ……こりゃ、また面倒なことになっているぞ」




