第三話 クズ勇者にボコボコにされた……はずが、なぜかボコボコにしていた⑮
ロイドたちとちょっとしたトラブルがあったそのあと、村はいったん落ち着きを取り戻す。
だが、これでアイツらがこのまま引き下がるとは思えない。オレは勇者パーティが住む家にテイムした虫を送って、ヤツらの様子をうかがっていた。
「――ったく、ちょっと荒らしたくらいでガタガタ言いやがって。これだから、田舎者は面倒くせえんだよ!」
――と、ロイドはまだハラの虫がおさまらない様子だ。
「仕方ないことです。こんな小さな村では大した収入はないはずですから。ほんの《《はしたカネ》》でも、神経質になってしまうモノなのでしょう」
修道服を着た聖女、ミリアがすました顔でそんなことを言う。
「ねえ、この村に居るの飽きちゃった。だって、なんにもないんだモノ。一度、王都に戻らない?」
自分のクセ毛を気にしながら女魔導士のニグレアがロイドに話しかける。
「はあ? また五日かけて戻るのかよ。面倒くせえ」
ロイドはソファにだらしなく横たわりながら、そう口にした。
「アンタは、ちょっかいを出した女の子たちに付きまとわれるのがイヤだから王都に帰りたくないだけでしょ? だから、ほどほどしなさいと言ったのに」とニグレアは冷たい視線をロイドに送る。
そんな三人の会話をハリスという軍服の大男は別のソファで狸寝入りをしていた。
なんだコイツら? ロイドだけでなく、全員、クズばっかりだな。
勇者パーティが聞いてあきれるぜ。
そんな時に、セリーネが焼いたばかりのシフォンケーキを持って部屋の中に入ってきた。
「セリーネちゃん、ありがとうねぇ」とロイドはソファにだらしなく寄りかかりながら、セリーネに向かって手を振る。彼女は仕方なさそうに愛想笑いをすると、ケーキとお茶をテーブルに乗せて、おじぎをする。その姿をロイドはやらしい笑みを浮かべ見ていた。視線の先はムネやお尻ばかり。さすがにセリーネも気づいたようで、動きが速くなる。
「た、食べ終わったころ、食器は回収に来ますので」
そう言って、部屋を出た。
すると、ロイドはすくっと立ち上がる。そのまま、出口へと向かった。
「ロイド? やめなさいよ」と女魔導士のニグレアは言う。
「ションベンだよ、ショ・ン・ベ・ン」
それだけ言い残し、ロイドは部屋を出た。
小走りで自分の家に戻ってきたセリーネはロイドの視線を思い出して身震いする。ひとつため息をついて、中に入ろうとしたところ、「セリーネちゃん」という声が聞こえた。
「ゆ、勇者さま?」
そう、ロイドが彼女のあとをつけてきたのだ。
「村長さんいる?」
そうたずねてきたので――
「おじいちゃんは今、出ています」とセリーネは応えた。
「そう、ならヨカッタ」
「――えっ?」




