第三話 クズ勇者にボコボコにされた……はずが、なぜかボコボコにしていた⑫
この村に居座ることとなった勇者とそのパーティ。村長が準備した家は、「古い」だの、「カビくさい」だの文句をつけて、村長の家を差し出すように指示される。
結局、村長とセリーネは家を明け渡すはめに……そして今は引っ越しの最中だった。
「アンリありがとう。手伝ってくれて」
オレは、彼女たちの引っ越しの手伝いに駆り出されていたのだ。
「イイてことよ。それより、災難だな」
そう応えると、彼女は「ううん、大丈夫だよ」と強がってみせる。
「パパとママの仇を取ってくれるなら、私はよろこんで勇者様に協力するわ」
セリーネの両親は王国でも結構名の知れた冒険者だったらしい。たまたま、フーベル地方のダンジョン攻略に出かけた際、魔族の侵攻に遭遇。彼らも防衛に加わって戦い、そして魔族軍に殺されたのである。
オレは「――そうか」とだけ応えた。
「ちぇえ、なんでオレたちまで手伝わなければならないんだよ」
そう文句をたれているのは、オレたちと同年代のボブ、サム、ジャックの三人組だった。暇そうにしていたので、手伝うように頼んだのだ。そしたら、彼らの親が「どうぞ使って」と言ってくれた。
「まあまあ、そう言うなよ。おかげで助かっているんだから。さすが戦闘系のスキル持ちだな。体力がやっぱり違うよ!」と、やる気を出させるためにほめてやる。
「ああ、やってられねえ。こんなのは非戦闘系の仕事だろ?」とサムはそれでもブツブツ文句を言っている。手伝いに戦闘系も非戦闘系もないと思うが――
「やっぱり、バックレようぜ?」とジャック。こんなんで、春から学校でやっていけるのか心配になってしまう。
「おおっ! あらかた終わったじゃん! 今日中に引っ越しができなかったら、面倒だな――なんて、思っていたのだけど良かったよ」
勇者のロイドがそんなことを言っている。
コイツら《《ふらっと》》どっか行ってしまって、今ごろになって帰ってきやがった。いったい、誰のためにやっていると思っているんだ? ちょっとは手伝えよ。
すると、ボブ、サム、ジャックはロイドの前に並んで――
「はい! 勇者さまのためにガンバって準備しました!」と媚びを売っている。おいおい、さっきは「やってられねえ」とか言っていただろ!
「あっそ。ご苦労、ご苦労」とロイドが言うので、三人はウレシそうな顔をした。
「あ、あのう、オレたち、春から国立学校で剣術と魔術の勉強をすることになりました!」
ボブが気を良くして、そんなことをロイドに話す。
「へえ、そうなんだぁ。がんばってねぇ」
ロイドがそう応えると、ますますウレシそうに――
「あ、ありがとうございます! 卒業後は勇者さまの下で働けるように、精進します!」と意気込みを伝える――のだが……
「ああ、それムリムリ」
ロイドが手をヒラヒラと振る。
「オレ、魔王討伐したら、王国騎士団長になることが決まってんの」
「で、ですから、騎士団に入れるように――」
「だから、ムリだって言ってんの。わかんねえヤツだなぁ」
ロイドは面倒くさいという顔で、ボブたちにそう言い切る。
「いいかぁ? テメエら村人出身はいくらガンバってもせいぜい、地方の衛兵職止まりなの。身分をわきまえろよ。だから、田舎者は図々しいって言われるんだよ」
「そんなことはない!」




