第三話 クズ勇者にボコボコにされた……はずが、なぜかボコボコにしていた⑪
数日後――
オレはトルト村の広場にやってきていた。というのも――
「おーい、ココの村長は誰だぁ?」
生意気そうな青年がそう声をあげる。金貨数百枚という高価な装甲を身につけ、大剣を背中に背負っていた。
彼の後ろには男性一人に女性二人――
「わ、私が村長のドルトネ・ハリアです。失礼ですが剣士様たち、このトルト村にはどのようなご用件で?」
セリーネの祖父にあたるドルトネがそう声をかけると――
「おいおい、オレたちのことを知らないのか? どんなど田舎だよ。まあ、イイか。オレは勇者、ロイド・バルボアだ」
「えっ? 勇者さま!?」
彼のあと、白銀の軍服を着た剣士、ハリス・スミス。女魔導士、ニグレア・ハスパー、そして、ガルチ聖教国の聖女、ミリア・パウロが次々に名乗った。
オレは「はあ……」と気づかれないようにため息をつく。
そう、勇者パーティがなぜかこの村にやってきたのだ。まあ、オレはメイファからその報告を受けていたので知っていたのだが――やれやれ、面倒なことになった。
「それはそれは、どうも遠いところからありがとうございます。ですが、なにゆえこのようなところに勇者さまご一行がお越しになられたのでしょう?」
勇者なのだから、魔族討伐が目的である。しかし、このあたりに魔族はいない。
「決まっているだろ? あの山を越えて魔族領へ向かうのさ」と勇者ロイドは雪をかぶった山を指差した。
「崑崙山脈を!? それはムリです!」
そう村長は勇者に伝える。
崑崙山脈は王国領と魔族領を隔てる山脈。たしかに魔族領へ最短で向かうにはこの山脈を越えるのが一番である。だけど――
「あの山脈ととても険しく、そのうえ、これからは冬になります。極寒の猛吹雪でとても越えられません。なにより怖いのは、崑蟲族です。途中にあるコンロンの大樹海には、大型の崑蟲族がいて、人間を襲います。崑崙山脈を越えるなどお考えにならないほうがイイです!」
村長の忠告はごもっともだ。魔族でさえ、山脈を迂回して、北東部のフーベル地方から攻めてきたのである。
「はあ? そんな虫ケラなんて、オレたちの敵じゃねえってえの!」と勇者ロイドがいきがる。
おいおい……崑蟲族の中には、一匹で王都を破壊しつくすくらいの天災級がウジャウジャいるってのに……とんだ世間知らずだなあ。
「ええ? 寒いのぉ? アタシ、寒いのはキライ」
そんなことを言うのはニグレアとかいう女魔導士だった。こいつら、ピクニックでもしに来たのか?
「まあ、たしかに寒いのはイヤだな。春になるまで、この村にいるか」
――――――――なんだって?
「おい村長、オレたちのために家をひとつ準備しろ」とロイドはいきなりムチャぶりしてくる。
「で、ですが……春になってからといっても、やはり山脈を越えるのは――」
ていうか、春まで待つくらいなら、先にフーベル地方を奪還しろよ――なんて思うのだが、どうやらそういう考えはないようだ。
「あのなあ、さっきからガタガタとうるさいんだよ。オレが準備しろと言ったら準備しろ! これ以上逆らったら、国家反逆で捕まえるぞ!」
勇者パーティは王国、聖教国から使命を受けて行動している。それを妨げる行為は国家反逆に値するらしい……
うーん、どうやら絵に描いたようなクズ勇者だな。バルボアのヤツ、どういう教育をしてきたんだ?




