第三話 クズ勇者にボコボコにされた……はずが、なぜかボコボコにしていた⑦
放心状態で、バルボアはケーニッヒの話を聞いていた。二重あごに汗が染み込んでいる。
『ま、まさか、そんなはずは……』
『どうです? 信じてもらえましたか?』
ケーニッヒが勝ち誇った表情を見せる。
しばらく呆然としていたバルボアだが、突然、『フ、フ、フ……』と笑い出した。
『それがどうした? ど、どうせオマエの言っていることなんて、誰も信じやしない』
まだ動揺を隠しきれないバルボアだったが、そんなことを相手に言う。だが、ケーニッヒは笑みを絶やさない。
『残念ながら、証拠があるんですよ。決定的な証拠が』
『証拠だと? それはなんだ?』
『まさか、こちらの切り札を言うわけがないでしょ?』とケーニッヒは笑う。
バルボアは『うぐ……』とうなったあと――
『わ、わかった……それでいくら欲しい?』
バルボアがそう言うと、ケーニッヒは『モノわかりが良くて助かります』と気持ち悪い笑い声をあげる。
『金貨、十万枚――いただけますかな?』
――えっ?
『金貨十万枚!? ふざけるな!!』
『おっと、そんな大声を出さないでください。外に聞こえますよ』
ケーニッヒがふざけた言い方をすると、バルボアは『はっ!』とした顔を見せて、慌てて口を塞ぐ。
『もちろん、いっぺんに金貨十万枚よこせ――なんて言いませんよ。そうですね。三日後、また来ます。その時に、金貨千枚をいただけますか?』
バルボアはくちびるを噛みしめていたが、しばらくして『わかった』と応える。
『ああ、そうそう。私を口封じしよう――なんて、考えないでくださいよ。もし、私が殺されたら、協力者が証拠とともに今の話を公表することになっていますから――』
『……協力者とは誰だ?』
『さあて、誰でしょうね? もうこんな時間ですか? 今日は失礼しますよ。これからもよろしくお願いしますね。将軍様』
そんな……
父ちゃん、ユーリ・ファーブルが逃げ出したから、ビルヌーブ団長が死んで、王国軍は敗走した――帰還後、バルボアはそう王都民に言いふらした。それで、今でも父ちゃんは卑怯者として非難され続けている。
しかし、真実は違った。
実際に逃げ出したのはバルボアであり、彼はビルヌーブ団長と父ちゃんを見捨てたのだ!
オレは込み上げる怒りをグッとこらえる。
『バグロード様、会話はここまでのようですが――』
ローズからそう伝えられて、オレはわれに返る。「うん、ありがとう」と彼女に礼を言った後――
「リリアたちはそこにいるか?」
『はい、こちらに』と三人がローズの視界に入る。
『リリア、メイファ、マモ、すまないがケーニッヒという男を見つけ出して、拘束してくれないか? いろいろと聞きたいことがある』




