第三話 クズ勇者にボコボコにされた……はずが、なぜかボコボコにしていた③
ああ……なんか、いやなことを思い出してしまった。
そう、王国将軍ドナルド・バルボアとオレは、こんな因縁があったのだ。
「それにしてもこの貸し付けの証書は、あの聖剣を売ったモノだったとはな……」
勇者の拝命式から帰ってきたオレたちは、例の地下室で、貸し付けの証書を確認していた。
貸付先の名に『ドナルド・バルボア』と書かれた、その証書には『貸付金、金貨千枚』となっている。
つまり、ガイルは聖剣を金貨千枚でバルボアに売りつけたのだ。ヤツはリリアたちから、たった金貨二百枚で奪っておきながら――しかも、彼の屋敷や他の家財も含めて――である。
「ああぁぁぁぁっ! こんなことなら、あの剣を売っておけばよかったぁぁぁぁっ! それで、借金を返済してもおつりが出たじゃないかぁ!」
リリアは頭を抱えて悔やんでいる。
『おいおい……売るって、ご先祖様が魔王を討伐したときのモノだろう? 家宝じゃないか? 売っちゃダメだろ?』
まあ、結局はガイルに騙し取られ、バルボアの手に渡ってしまったのだが……
「いや、家宝というわけじゃないと思うが……」とリリアは微妙な表情を見せる。
えっ? 聖剣が家宝じゃない?
「あれはレプリカなのです」と白髪の女ダークエルフ、メイファが説明する……えっ?
「え、えぇぇぇぇっ!」
オレはそんなふうに叫んでしまった。
彼女らの話だと、ホンモノの聖剣は魔王討伐後、行方不明となっているらしい。アレは勇者アーサーが、魔王討伐の記念に――と聖剣を真似たレプリカを作り、家に残したそうだ。
『はあ……』
なんかドッと疲れが出た。
つまり、ドナルドはニセモノだと知らずに、金貨千枚で買ってしまった――ということだな。
父ちゃんをバカにしたイヤなヤツだが――ちょっと、かわいそうにも思えてしまう。
……ていうか、勇者パーティはニセモノの聖剣を持って、魔族へ立ち向かう――ということか?
それは滑稽を通り過ぎて、無謀にしか思えないのだが……まあ、こちらが気に病むことではないか。
「――それで、聖剣以外は全て戻ってきたんだな?」
リリアたちはガイルに屋敷と家財を騙し取られた。今回の件が成功したら、全て彼女に返す約束をしていたのだ。
「はい! バグロード様のおかげで、屋敷も戻りました。感謝します!」
屋敷は売りに出されていたようだが、買い手がつく前に奪い返すことができたようだ。
「現在、改装中ですので、楽しみにしていてください!」
そうリリアは言う。改装中? なんのこと? まあ、イイか。
「それと、奪った黒薔薇の組織についてですが――」
ローズがそう切り出す。そういえば、ローズにあとを任せていたんだっけな。
「ワインなど嗜好品の販売、奴隷密売、麻薬密売について調査したところ、すべてブラスコが窓口になっていたようで、彼から連絡があるとアクバルたちが動く――そういった状況だったようです」
「――ブラスコ?」
「先代のボス、バストーレの弟で、黒薔薇商店の店主をしている男です」
ああ……と思い出す。王都に行った時、店内で声をかけられたあいつか。ちょび髭で愛想の良さそうな男だったな。
「手広く商品を扱っている割にはずいぶんと雑な仕事ぶりでしたので、これを機に商店と、奴隷密売、麻薬密売をそれぞれ分け、組織立てしたいと思いますが、いかがでしょうか?」
進捗がしっかりと把握できておらず、いろいろとトラブルが出ていたようだ。なので、各部門の責任者を決めたうえで、業務分担を明確にするのだと言う。
ふーん。どうやら、ローズには商才もあるようだ。
「承知した、そのまま進めてくれ」
「かしこまりました。それから――」
「ああ、もう良い。あとは結果だけを連絡すればイイ」
いちいち承認していくのは面倒だ。ていうか、そんなのをやるつもりは毛頭なかったし――
やりたいヤツに任せて、オレは村でのんびりしたいぜ。




