第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑳
オレはリリアたちと王宮前広場にやってきた。ここで、勇者の拝命式が行われるらしい。
大きな広場だが、数万人という市民が押し寄せ、もはや地面は見えない。
「ところでバグロード様、そのお顔は?」
メイファがそう質問してきた。
さすがにこんな観衆の中で仮面を被っていたら怪しまれる。なので、外してきたのだ。
「ああ、これは幻像のスキルで作った。偽りの顔だ」そう応える。
本当は幻像ではなく、オレの顔そのままだ。なので、十五歳の少年のそれである。
幻像で変装してもよかったのだが、面倒だしな。もともと、コイツらにはオレの素性は知られていないので、そう言えば信じるだろうと考えたからだ。そもそも、オレの正体が十五歳の少年だって思わないだろうしな。
「なんだ、幻像なんだ! どうりでマヌケな顔だと思ったよ。まさかバグロード様が、そのようなお姿であるわけないもんな」
と、リリアが笑う。
「ハ、ハ、ハ……まあ、そのとおりだ……」
リリアには今晩、寝床にノミとシラミを贈ってあげることにしよう。
オレたちが到着してから、十数分ほどして、王宮のテラスに人影が現れた。
ひときわ恰幅の良い中年男性が右手の席に座る。オレはこの人物を知っている。ドナルド・バルボア――十年前、オレの父ちゃんを『騎士団長殺し』と罵った男だ。あの頃のイメージは『神経質そうな青年――』という感じだったが、さすがに年齢相応の体つきになったようだ。
その横に、白と黒の聖職服を着て、ミトラという特徴ある帽子を被った男性が座る。
「あの人は?」
そうオレがたずねると、メイファが「ウィルハース聖教会のヨハネディクト大司教です」と応えた。
大司教――ということは、王国でのアスタリア聖教会トップの人物ということか。そのわりにはずいぶんと若い印象だ。見た目でいえば、三十歳前後というところか?
しかし、どうして勇者の拝命式に聖職者が?
それからも、数人の参列者がテラスに現れたあと、最後にフェルマイヤ・ウィルハース国王陛下、マルガリータ王妃殿下が中央の席に着かれた。
「これより、勇者パーティに属する四人を紹介する。まずは、勇者、ロイド・バルボア!」
近衛兵長がそう声をあげると、テラスに青い防具を纏った生意気そうな青年が現れた。歓声の中、両手をあげて応えている。
「ずいぶんと人気だな」
「ええ、彼は今年、王国学校騎士課程を首席で卒業しました――なにより、学内剣術会でかの剣豪、ビルヌーブ元騎士団長以来となる三年連続優勝を成し遂げています」
そうメイファが説明してくれた。
他にも、学外授業で行われたS級ダンジョン攻略も、彼のパーティが制覇した――そんな実績もあるらしい。S級ダンジョンの制覇は大陸全体でみても十年ぶり。学生だけでは史上初だったそうだ。
へえ……勇者を拝命したのは、『親の七光り――』というだけでもないようだな。




