第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑲
オレの前に並べられた羊皮紙。どうやら、貴族にカネを貸し付けた証書らしい。
「――これは、ガイルの仕業か?」
オレの質問に、ローズは「そのようです」と応える。
まあ、『カネが何よりも大好き――』みたいなヤツだったからなあ。しかし、証書があるということは……
「まだ、カネは回収していない……ということだな?」
ローズがアクバルという男の顔を見ると、彼はうなずく。
「はい、貸し付けるばかりで、まだ利子さえ回収していません」
うーん、どういうことだろう。ちょっと気になるが――
「わかった。この件についてもオマエたちに処置は任せる」
面倒なことは誰かにやってもらうのが一番だ。ローズが「承知いたしました」と応える。
「バグロード様、それで、これからいかがするおつもりで?」
ローズの質問に、オレは「うーん」と唸る。実はなにも考えていないんだよなぁ……
それに、あの灰色のローブを着た集団も気になる。ヤツらはガイルを使って何をしようとしていたのだろうか?
単なる資金集め?
だったら、取り立てを厳しくしているはず。でも、その様子はなかったようだし……
もう一度、証書に書かれた借主を確認する。どれも名門と呼ばれる貴族の名前ばかりだ。
――と、いうことは……
「王国を闇社会から支配する――?」
オレはそうつぶやく。
借金を理由に、権力者たちを言いなりにして国の実権を握る――なんてことは、歴史的に見ても良くあることだ。
いずれにせよ、ヤツらが何者かわからないとなあ……
そんなことを考え、ふとわれにかえる。なぜか、ローズを始め、全員が驚いた表情を見せていた。なんで?
「えーと……」
「わかりました。われわれはバグロード様のもとで働けることを誇りに思います」
誰ともなく、そういう言葉を口にすると、全員、頭を垂れた。
――えっ? いきなり、なに?
何がなんだか、よくわからない。
「ハ、ハ、ハ……」
オレは動揺を誤魔化すため、もう一度、証書に目を向ける。すると――
「ドナルド・バルボア――」
この名前に目が留まる。
忘れもしない、オレの父ちゃん、ユーリ・ファーブルの元同僚で、フーベル地方奪還作戦失敗の際に、騎士団長ビルヌーブが死んだのを父ちゃんのせいだと、言いふらした男だ。
それから十年、ヤツはビルヌーブ亡き後の騎士団長となる。三年前には王国軍の将軍を拝命し、王国軍の実質トップとなっていたのだ。
まさか、こんなところでヤツの名前を見るとは……
「バルボア将軍と言えば……」
そう、言葉を発したのはリリア・ガスリーの仲間で、メイファという白髪の女ダークエルフ。今もメイド服を着用したままである。気に入っているのかな?
「本日、勇者の拝命式が行われるとのことです」
勇者の拝命式?
そういえば、いつにも増して、王都がにぎやかだったな……
「その勇者となられる方が、バルボア将軍のご子息なのだそうです」
「――えっ?」




