第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑱
翌朝――
昨日、あんな出来事があったあとだが、オレは何食わぬ顔で起きた。まあ、少し寝不足ではあったが――
すぐにハニーから連絡が入る。
『アンリさまぁ、ヘンなヤツがふたり、アンリさまの家を覗いていたので捕まえましたけど、どうします? 殺してイイですか?』
ああ、どうやらオレを誘拐しにきたヤツらのようだ。
『もう、この村へ来ないように約束させて、離してイイよ』と伝える。
『ええぇ? 本当に殺さなくてイイんですかぁ?』
『むやみな殺生はダメだよ。ほら、一寸の虫にも五分の魂っていうでしょう?』
まあ、本当の意味はちょっと違うんだけど。
『せっしょう――? ごぶ――?』
……ハニーにはもう少し語彙を学ばせる必要があるようだ。
朝の畑仕事が終わり、朝食を食べ終わると、ローズから連絡が入る。このあと、王都へ赴いてほしいとのこと。
あまり乗り気は起きないのだが仕方ない。行っていると――
「崑蟲王様、お越しいただきありがとうございます」
黒薔薇商店地下の部屋に迎え入れられたオレ。ローズとガスリーの他に、アクバルという男もいる。
「うむ、それで用件はなんだ?」
さっそく、話題に振ったのは、全員が片膝をついて頭を垂れているからだ。なんか首もとがこそばゆい。
「その前に、アクバルよりごあいさつを」とローズ。
「お初にお目にかかります。このたびはわれわれを仲間に加えていただき、恐悦至極に存じます」
背の高い男がそうオレに感謝を述べる。
そう。ローズから、『アクバル以下、黒薔薇商店のメンバーをバグロード様のもとで働かせていただきたいといっております』と昨日の夜、連絡があったのだ。
オレのもとで働くって、どういうことだろう……
そうは思ったが、なんとなく面白そうだったので了承してみた。
「うむ、これから励むとよい」
「ありがたきお言葉! バグロード様のために尽力したい所存でございます!」
そんなことを言われ、オレは苦笑いしてしまう。まあ、例によって甲蟲の仮面を被っているから、表情は見えないはずだ。案外、仮面って実用性があるんだな。
「世辞はもうイイ。それで? まさか、それだけのためにオレを呼んだわけではないだろ?」
すると、ローズはオレが座るソファの前にあるテーブルの上に、何枚かの羊皮紙を並べた。
「これは――何かの契約書か?」
どれも金額とサインが記されてある。
「はい、貴族たちへのカネを貸し付けた証書みたいです」
貸し付けの証書?




