第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑰
「はっ! 形勢逆転だな!」
ガイルがそう言うということは、ヤツの仲間か? いったい、ナニモノだ?
「おねがいします! コイツを殺してください!」
すると、灰色のローブを着た九人が一斉に手をこちらに向けた。
「ブファッ!!」
声をあげたのはガイルのほうだった。口から鮮血が噴き出している。
「ど、どうして……」
「オマエはもう用なしだ」と灰色のローブを着た人物が口にする。男の声だ。
「そ、そん……な」
ガイルはそのまま動かなくなった。
これは予想外。コイツら、助けにきたんじゃないのかよ。どうやら、口封じのため、ガイルを始末しにきたようだ。
そうなると――
灰色のローブを着た人物たちは、ゆっくりと、しかし確実に、オレへの距離を縮めている。
「えーと……オレは、たまたまココに居合わせただけで、けっして怪しい者ではなく……」
と、笑って敵意がないことを見せたのだが――
「それで、見逃すと思っていたのか?」
ですよねぇ。
九人は今度も一斉に右手をオレに向けた。おそらく、ガイルに使ったのと同じスキルなのだろう。
「な、なぜだ!? 術が利かない!?」
先ほども言ったように、オレには『女神の加護』がある。まあ、いちいち、それを説明するのも面倒なので――
「それじゃ、今度はオレのターンということで……」
オレは右手を三百六十度、サッと平行に回した。風属性の『ウインドカッター』という魔法である。もっとも素早く発動し、広範囲に攻撃できるので、それを使ってみた。
「「うわっ!」」
九人のうち、ふたりが倒れる。しかし、残りはこの短い時間で、『プロテクト』魔法を発動して防いだようだ。うーん、手加減しながらだと、なかなかムズい。
「退避だ!」
ひとりがそう叫ぶと、オレの攻撃を防いだ七人が一斉に四散し、あっという間に、姿が見えなくなった。反応速度アップの強化魔法だろうか? それとも、『縮地』とかいう武技の一種?
ちょっと、興味をそそる。まあ、ふたりだけでも捕まえられたのだから良しとしよう。
さて、コイツらがいったい何者で、どのようにして『精神支配』を行っていたのが、聞き出すことにするか。
そう考え、ふたりに近づこうとしたところ――
「使徒、セイモン様のために!」
――へっ?
「使徒、セイモン様のために!」
ふたりが突然そう叫ぶと、カラダがいきなり光り出す。これはヤバいぞ!
次の瞬間、爆発音とともに、ふたりのカラダが破裂した!
グオォォォォン!!
四方、数十メートルの木々がなぎ倒され、彼らのいた場所に十メートルほどの穴ができあがる。
うわぁ! なんだこりゃぁ!
爆発の直前、とっさの判断でオレは視界のできるだけ遠くへ『空間移動』し、難を逃れた。一瞬でも遅れていたら、爆発に巻き込まれていただろう。さすがにあの破壊力では、いくら『女神の加護』があっても無傷ではいられなかったはずだ。
アブナイ、アブナイ。
ただ、これでガイルの言っていた『王都の闇組織で起こっている』という手がかりも失った。うーん、いったいヤツらは何だったんだ?
いろいろと腑に落ちないところがあるが、ココは王都からそんなに離れていない森の中。すぐに騒ぎを聞きつけ、誰かがやってくるだろう。
オレは急いで、その場から離れた。




