第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑯
実のところ、オレは今、王都郊外の森の中にいる。
――というのも、ローズたちの活躍はテイムした虫たちの五感から共有していたので、当然、ガイルが逃げるところも見ていたのだ。オレは例によって『スカイフィッシュ』で王都へ飛び、ちょうど、ガイルを捕まえたところだったのである。
「だ、誰なんだ!? キサマは!?」
手足を縛られ、オレの前に横たわっているガイルがそう言う。
「虫ケラ以下の分際に名乗る名前などない」
おっ? これも、なかなかイイんじゃない? よし、採用。
「はあ? ふざけるのはその格好だけにしろ!」
ガイルは黒ローブに甲蟲を仮面代わりにしたオレの姿を侮辱する。やはり、このビジュアルの素晴らしさを理解できる者はこの世界にいないらしい――残念だ。
まあ、それはイイとして、ヤツを『鑑定』してみる。
名 前: ガイル
年 齢: 二十五歳
種 族: 人間
ジョブ: 商人
レベル: 2
H P: 11/11
M P: 8/8
攻撃力: 3 防御力: 3
素早さ: 4 精神力: 4
スキル: 交渉力
商人? スキルは『交渉力』?
「おい、仲間に対して、『精神支配』のスキルを使っていただろ?」
オレの質問に、ガイルは笑う。
「さあてね。オレ様は人望があるから、勝手に服従したんじゃね?」
そんな寝ぼけたことを言うから、ヤツのハラを足蹴りした。
「ブファッ! このヤロウ! よくも!」
「サッサと言え。次はアバラの骨が折れるぞ」
こっちは、オマエのせいで、寝る時間が減って気が立っているんだ。
「ま、待て! それじゃ、取引といこうじゃないか?『精神支配』のカラクリを教える。それどころか、王都の闇社会で起きている、とっておきの情報を教えてやる。その代わり、オレのことは見逃してくれ」
王都の闇社会で起きていること?
なるほど、ちょっと気になる――だけど……
オレはもう一度、ガイルのハラを蹴った。ヤツはまた、なさけない悲鳴をあげる。
「別に取引しなくても、拷問して聞き出せばイイだけだろ?」
「な、なぜだ? なぜ、オレのスキルが利かない?」
スキルが利かない? ああ、交渉力とかいうヤツか?
商人のスキルらしいが、おそらく、むりやり自分の有利な取引に持ち込んだりするのだろう。
それなりに、強力なスキルかもしれないが……
「悪いが、オレは特異体質でな。自分に不利益なモノは受け付けないんだ」
転生するときに、神族からいただいた『女神の加護』というモノらしい。物理的にも、精神的にもある程度、無自覚で防いでくれる。常時発動の『プロテクト』みたいなモノだ。おかげで、オレは今まで病気もしたことがない。
「な、何、わけのわからないことを言ってやがる!」
そう言われてもなあ……だって、そうなんだもん――としか言いようがない。
さて、あと一、二発蹴れば、おとなしく白状してくれるだろう――
そう思った時、それまで感じなかった気配を覚える。それもひとり、ふたりではない。いつの間にか四方を囲まれていた。
暗闇の中に、灰色のローブを着込んだ人物が九人。音もなく現れたのだ。




