表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崑蟲王~外れスキル『昆虫テイマー』のオレはチートスキルでスローライフを満喫する……はずが、なぜか闇社会の実力者になっていた~  作者: テツみン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/83

第一話 アマゾンで楽しい昆虫採集……のはずが、なぜか異世界に転生していた③

「アンリ! 今日はお祈りの日だから、あまり遠くに行かないでね!」

 母親、エラ・ファーブルの声が聞こえた。


「わかっているよ!」

 オレはそう言って、家を飛び出す。


 朝は畑仕事を手伝い、それが終わると、急いで森へ向かうのがオレの日課となっていた。目的は《《虫たちを探す》》ためである。



 ――ということで、あらためて自己紹介。

 オレ、虹川治虫(にじかわおさむ)はこの世界、アスタリア大陸に転生した。こちらでの名前はアンリ・ファーブル。あの大先生と同姓同名なのは、とても光栄な気持ちだ。先週、六歳になったばかり。目下、好奇心旺盛少年である。

 一年前からウィルハース王国北部のトルト村で暮らしていた。



「アンリィ! また、森に行くつもりぃ!?」

 そんな声が聞こえる。振り向くと赤毛で目がくるりとしたカワイイ女の子がオレを追いかけてきた。


「ちぇ、なんだよ、セリーネ。どこに行ったって、オレの勝手だろ?」

 オレは不貞腐れた表情を見せる。

「そんなことを言って! 先週も、アンリがいなくなったと村中が大騒ぎしたばかりでしょ!大人たちが森を探し回って、大変だったんだから!」



 このトルト村に隣接するジュラの森は、広葉樹が生い茂った、比較的に安全な森林である。村人が栗やクルミ、果物などを採取するために普段から入っている。それでも、イノシシやクマなど人を襲う動物もいるので、子供だけで入ると怒られてしまうのだが――


 なにより怖いのは、ジュラの森と隣接して北にはコンロンの大樹海が広がっている――と、いうことだ。

 コンロンの大樹海は、崑崙(こんろん)山脈の(ふもと)にあり、多くの魔物が住んでいる。特に危険なのは崑蟲(こんちゅう)という大型の節足動物たちなのだという。


 なので、子供が森で迷い、誤って大樹海へ入り込まないか心配をしているのだ。


 昔は大型の節足動物が大樹海から出てきて、人里を襲うこともあったらしい。そのときは、たった一匹でも大変な被害だったのだとか。ただし、この四、五十年ほどはそういった被害は発生していないそうだ……


 オレはまだ、《《崑蟲》》を見たことがないのだけど、きっとカッコイイんだろうなあ――なんて、考えている。大きくなったら、いずれ大樹海を探検したい。まあ、まだしばらくあとのことになりそうだが……



「わかっているよ。だから、森の入口で昆虫を探すよ。それならイイだろ?」

「ダメ! どうせそう言って、お祈りをサボろうとしているんでしょ! 今日は行かせないんだから!」


 まるで、オレの保護者みたいなことばかり言うセリーネだけど、オレと同じ六歳である。このトルト村の村長、ドルトネ・ハリアさんのお孫さんだ。

 オレと母ちゃんは一年前、王都ハースからこの村に引っ越してきたのだが、その時、村長と一緒に彼女もいろいろと世話をしてくれた。


 それから、彼女とは一緒に遊ぶ間柄になったのだけど、オレがいろいろと騒ぎを起こすので、いつのまにか彼女が監視役になっていた。


 まだ幼いけど、目鼻立ちが整った顔は、将来、けっこうな美人になるとオレは確信している。これからも仲良くして、幼馴染から恋人――なんていうのも悪くない……なんて、今から目論んでいたりしていた。

 まあ、口うるさいのは玉にキズだけど――ね。



「やーい、ムシ野郎! また、ムシを探しているのか? ムシなんか見て楽しいのかよ!」


 彼女から逃げ出すタイミングを探っていたのに、また別のヤツらに絡まれてしまう。仕方なく振り向くと、同い年のガキたちが目に入った。名前をボブ、サム、ジャックという、いかにもモブらしい三人組だ。


「なに? またアンリをバカにして! いい加減にしなさい!」とセリーネがガキたちをかまうので、オレはヤレヤレと思ってしまう。


「おお、こわっ! 凶暴オンナだぁ!」と三人はガキっぽく、セリーネをからかっていた。ああ、そういえば、オレもそんな子供時代があったなあ。今も子供だけど……


「イイよ、セリーネ。オレは気にしてないから」

 そう言って、彼女を引き留める。そうでもしないと、セリーネはエスカレートして、アイツらと本気で取っ組み合いを始めてしまうのだ。


「なんだぁ? アンリのヤツ、オレたちが怖いんだろ? この弱虫め! ムシが好きなのは、《《よわムシ》》だからかぁ?」

 んー。なんか、ワケのわからない悪口になってきたぞ――まあ、語彙(ごい)の少ないガキじゃ仕方ないか……


「そうだよ、コイツの父さんも弱虫で、魔族から逃げ出したんだってよ」

 そんなことを三バカのひとり、ジャックが言い出す。

「へえ。なんだ、親子で弱虫かよ!」

「おい!」

 オレは思わず声が出てしまった。相手をにらみつける。すると、三人ともビビった表情になった。


「な、なんだよ……や、やろうってのか?」

 三バカがいきがるので、オレはため息をつく。父親の悪口で、ついカッとしてしまった。



 オレの父ちゃん、ユーリ・ファーブルは現在、行方不明である――


 オレは父ちゃんを尊敬していた。彼は村人出身ながら、『魔獣テイム』という強力なスキルを持っていた。そのことで、相棒の『魔獣グリフォン』、アスカとともに王国騎士団へと選ばれたのだ。


 昨年、突如侵攻していた魔族軍が、王国北東部フーベル地方を占領したことで、騎士団と王国軍はフーベル地方奪還のため出兵。しかし、甚災級魔獣、ケルベロスを投入した魔族軍の奇襲により、王国側の要、騎士団長のビルヌーブを失う。それによって、王国軍の統率が崩れ敗走することとなってしまった。


 王都帰還後、騎士団のドナルド・バルボア副団長はこう言いふらした――「ビルヌーブの死はユーリ・ファーブルが裏切ったせいだ!」と……


 もちろん、オレはそんなことを信じない。父ちゃんは誰よりも騎士団の一員であることを誇りに思っていたし、ビルヌーブ騎士団長のことをとても尊敬していたからだ。

 だが、それ以来、父ちゃんが行方不明であることも事実だった。



 ガキの言っていることにいちいち反応してはいけない。なにせ、肉体的にはガキだけど、精神的には立派な大人である。


「そうだな、弱虫だな」と、オレはヘラヘラ笑った。

「な、なんだよ……つまらないヤツ! おい、行こうぜ」

 そう言いながら、三人は離れて行った。ガキの相手も疲れる。


「まったくもう……」とセリーネがヤツらに気を取られているこのチャンスを見逃すわけにはいかない。「それじゃ、ちょっと行ってくる」と、オレは森へ向かって駆け出していた。


「ああ! もう! お祈りには一緒に行くんだからね! 絶対に森の奥に入っちゃダメよ!」

セリーネの声が聞こえたので、「わかっている!」と、とりあえず応える。


 ふう、やっとひとりになれた。さて、今日はどんな《《虫》》に会えるかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ