第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑮
ローズを王都へ送り込んだ二日後の夜。
『バグロード様、敵アジトの制圧に成功しました』
そんな、彼女の思念が送られてきた。
うーん、制圧まで指示はしていなかったのだけど……まあ、イイか。
それにしても、実に呆気なかったなあ。いくら、彼女たちでも、相手の人数から考えて、多少手こずると思ったのだけど――
『どうやら組織はガイルという男に精神支配され、逆らえなかったようです』
へえ、精神支配ね。ガイルという男――あんな横暴なヤツにどうしてみんな従っているんだろう……なんて思っていたのだけど、なるほど、そういうことか。
ローズ――つまり、ベスパ族の女王蜂は『魅了』という能力を持っている。それで、オス蜂だけでなく、他種族のオスも魅了するらしい。いったい、何のためにそんなアビリティを手に入れたのか、気になるところだが――これも精神支配の一種のようだ。だが、それはとても強力で、他の精神異常を全て解除してしまうほどである。
その『魅了』を発動したことで、アクバルたちの支配を奪った。それにより、相手の抵抗がおさまったらしい。
『アクバルという男から聞いた話では、彼らはもともと、バストーレという人物の下で、働いていたようです』
最初はワインの買い付け、販売をするキャラバンだったが、その後、麻薬の密売や、奴隷売買にも手を出し、今では百人ほどの組織になっていたという。
奴隷売買と聞くと物騒だが、酒やギャンブルで借金を作った人物が、自ら望んで奴隷になるのである。そんな相手に奴隷商人を紹介し、仲介料を取る――という商売だ。
魔薬も、貴族や富豪が『嗜好品』として求める場合のみ販売していた。
半年前、王都のチンピラだったガイルが一味に加わると、バストーレが突然倒れ亡くなる。そして、ガイルがその全権を手にした。
『すると、ガイルの指示で孤児や田舎から仕事を求めやってきた身寄りのない少年少女を騙し、奴隷商人に売ったりするようになったようです』
近頃はそれでも飽き足らず、王都や郊外に住む、オンナ子供を攫ってくるなど、卑劣さは増していたようだ。
『攫われた者はバグロード様の指示どおり、すでに解放しております』
『わかった――』と、オレは短く応える。
『ただ……』とローズは言いづらそうだったので、「イイよ。責めないから、正直に話して」とオレが伝えると――
『実は、ガイルを取り逃がしてしまいました』
カネ目のモノも一部、持ち逃げされたらしい。
『大変申し訳ありません。本当なら、どのようにして精神支配のスキルを手に入れたか聞き出したかったのですが……』
「気にすることはないよ。キミたちはよくやった。そうそう、あとの処理も任せちゃってイイかな?」
はっきり言って、面倒だし……
『ありがとうございます! バグロード様の期待に添えるように対応いたします!』
――と、ローズはやる気満々のようだった。
まあ、別に、オレはカネさえもらえればイイからね。
さて、ローズからの報告はいったん、ここまでとして――
「それじゃあ、話を聞かせてもらおうか。ガイルとやら」
オレは目の前で震えているガイルに、そう声をかけた。




