第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑬
あれから、ツインテールの女の子と女ダークエルフも意識を取り戻し、同じように土下座する。
今、オレの前には三人の娘か地面に額を押し付けていた。
「え、えーと。とりあえず、顔を上げてもらえる?」
「それでは、オレたちを仲間に!?」
「いや、その前に話を聞かせて――」
なんか落胆している彼女らに、オレはため息をつく。
「――それで、キミたちは誰なの?」
金髪の少女はリリア・ガスリーと名乗る。ツインテールの女の子はマモ。そして、白髪の女ダークエルフがメイファとそれぞれ名乗った。
まあ、『鑑定』でそれは知っていたのだけど――
先代のガスリー伯が三年前に亡くなり、孫のリリアが成人するまで爵位は空席のまま。それからは家計は火の車となってしまい、メイファとマモを残し、他の使用人を全て解雇。今年、リリアが国立学校を卒業すると、騎士団の入団試験を受け、見事合格。
これで、なんとか生活できる――と考えたのだが、わずか一カ月でリリアが問題を起こし、退団させられてしまう。
生活するために、彼女たちは職を探したのだが、なかなか見つからない。
そんな時に、水産業を行っているという行商がとある商談を持ちかけた。「サバ漁を始めたいので、漁船のオーナーになってくれないか?」という誘いだった。
すでに漁を行う人は雇っており、船さえあればすぐにでも漁に出かけられるのだという。
漁船のオーナーとなってくれれば、翌月から毎月金貨十枚の報酬を約束すると行商が言うので、リリアはそれを信じてしまった。
屋敷と家財を担保に、金貨二百枚を調達すると、その行商に渡した。泣いて喜んでくれた行商だったのだが、その数日後、彼との連絡が取れなくなる。
仕方なく、購入した漁船があるとされる漁港へ向かったのだが、誰もそんな行商は知らないと言う。購入したはずの漁船もない――そこで、初めて騙されたことに気づいたのだ。
残ったのは、金貨二百枚の借用書のみ。当然、支払える見込みはなく、屋敷と家財は取りあげられてしまった。
それらを取り戻すべく、最初は冒険者で稼ごうと考えたらしいのだが、高ピーなギルドマスターに頭きて、リリアがそいつをボコボコにしてしまった。それで、ギルドは出禁に――
今度は祖父の古い知り合いという伯爵を頼ったところ、三人とも住み込みの使用人として雇ってもらう。しかし、度重なるトラブルで、堪忍の尾が切れてしまったメイド長に三人とも追い出されてしまった。それが三日前のことらしい……
それで、リリアもメイド服なのか……
「あとはもう山賊になるしかない……ということになって……」
今に至るのだとか――
「はあ……」とオレは気の抜けた返事をする。
どうやらこの三人、戦闘力は長けているが、頭はちょっと……のようだ。
「お願いします! どうか、オレたちをアナタの下で働かせてください!」
そう言われてもなあ……
オレのことを正義の騎士とでも思ったのだろうか?
この際、本当のことを言ってあきらめてもらうか――
いや、待てよ。コイツら使えないか?
オレには完敗だったが、並みの冒険者では歯が立たないほど強いことはわかった。
なら、王都に送って、ガイルたちのやっていることを探らせるのにイイのでは?
ついでにオレと母ちゃんに手を出そうなんて二度と思わないように、思いっきり懲らしめてもらえばイイ。
オレは「フ、フ、フ――」と含み笑いをしてしまう。
「ど、どうしたのですか?」
いきなり、オレの様子が変わったので心配したようだ。
「なあに、たいしたことではない。そうだな……それなら、キミらに試練をあたえよう。それを達成することができたならば、仲間にすることも考えなくもない」
「ま、まことですか!」
三人がとても喜んでいる。うーん、そこまで喜ばれるとなんか気が引けるけど――
「それで、その試練とは?」
「うむ。王都の裏社会で卑劣な行いをしている組織がある。ヤツらが悪事で稼いだカネを奪って来い」
すると、三人は目を丸くしてオレを見ている。
あれ? さすがに、荷が重かった?
「――す」
「――えっ?」
「すばらしい!」
……はい?
なんか、三人が感動しているんですけど?
「そういうことを一度、やってみたかったんだ! なあ? そうだろ?」
「はい、お嬢様!」
あ、そうですか……
「そ、それで、その組織は女子供を攫っては、売りさばいているらしい」
「なるほど、それはあくどいヤツだ。して、その組織の名は?」
えーと……なんだっけ? そうそう――
「――黒薔薇商店だ」
そう言うと、三人が怪訝な表情になる。
「――いかがした?」
「い、いや、その店、オレに金貨二百枚を融資したところです」
なんだって?
そういうことか――
「どうやら、キミらも黒薔薇商店にダマされたようだな?」
「と、言いますと?」
「漁船オーナーの話を持ち掛けて、金貨二百枚を持ち逃げした男と、黒薔薇商店はグルだったのだ」
「な、なんだとぉ!」
金髪の少女、リリアが驚くと、今度は怒りの表情になる。
「つまり、オレの屋敷を奪うためにそんな芝居を仕掛けてきた――ということか――」
「そうだな。もしくは、家財になにかほしいモノがあったとか……」
まあ、そんなことはどうでもイイが――
「わかりました。さっそく、黒薔薇商店をぶっ壊してきます!」
そう言って、三人は立ち上がる。
おいおい、どうして、こうも単細胞なヤツらなんだ?
「待つんだ。正面から押し入ったりして、騒ぎを大きくしたら衛兵がやってくるだろう? それではカネを奪うどころではない」
「なるほど! そうだな――では、どのように」
うーん、まだ考えてなかった。
とにかく、コイツらだけに任せるのは不安だな――だからって、オレもそんなに暇じゃなし……お? 適任者を思いついたぞ。
「王都に向かってもらうが、その前にある人物と合流してもらう。そいつの指示にしたがえ」
「わかりました。そういたします。それで、アナタ様のことをこれからどのように呼べばイイでしょう?」
ん? そうだな……
黒ローブをなびかせて、右手を真横に広げると、オレはこう声にした。
「吾の名を覚えるがイイ! 吾は『崑蟲王』!」




