第二話 ハチミツの儲けを取り返す……はずが、なぜか組織ごと乗っ取っていた⑫
「なるほど……その動き、名うての武術家とお見受けした」
白髪の女性が立ち上がると、ファイティングポーズをとる。
ごめんなさい。ただの村人です。
白髪だが肌は浅黒く、そしてかなり若く見える。特徴ある耳の形から、彼女がダークエルフなんだと気づいた。
彼女のステータスを確認――
名 前: メイファ
年 齢: 二百六十五歳
種 族: ダークエルフ
ジョブ: 闘士
レベル: 10
H P: 225/225
M P: 92/92
攻撃力: 38 防御力: 32
素早さ: 33 精神力: 43
スキル: 拳技(連撃、チャクラ、旋風脚、縮地、波動拳、爆裂波)
魔 法: 強化魔法(筋力アップ Lv3)
レベル十! 上級冒険者でも達人クラスのステータスだ。これはスゴい!
拳技? 筋力アップ?
いったい、どういうモノだ?
「いざ、勝負!」
その合図とともに、彼女の手刀が向かってきた。身のこなしからして空手に近い。
そして、さっきのふたりより断然速かった!
一瞬でも気を抜いたらやられてしまうかもしれない。
間合いが狭まると、相手は手刀を何度も繰り出す!
「アタタタタタタッ!」
エルフ族は長生きだと聞くけど、二百歳超えは人間だと何歳くらいなのだろう?
その動きはとてもそんな年齢に思えない。そして、女性としては背丈もあり、リーチがあるから、より速さを感じる。
それだけではない。的確に急所を狙ってきている。それを躱していくうちに、なんか楽しくなってきた。
うん、イイ! 練習相手には最適だ。
「おぬし、どうして攻撃してこない?」
女ダークエルフに言われて、「あっ――」とつぶやいてしまう。
躱すことに夢中となっていたので、攻撃することを忘れていた。まあ、仕方ないよね。今まで対人で闘ったことないし……
「余裕かね? まあイイ。さて、どこまで耐えられるかな?」
そんなふうに声をかけてくるので、「そちらこそ、まだ、本気ではないよね?」と煽ってみる。
「ほう……良かろう」
それまで、手剣だけの攻撃だった彼女がくるっと回転するとスカートが翻る。それに気を取られていると、今度は鋭い蹴りがオレの顔に向かって飛んできた。のけ反って回避する。
「ならば、私の全力を受けてみなさい!」
いきなり「うぉぉぉぉっ!」と叫ぶと、彼女のカラダが淡く輝き出す。その豊満な胸部がいくぶん膨れたようにも見えた。
「奥義! 爆裂波!!」
「――へっ?」
両手を合わせて前に突き出したと思ったら、そこから巨大な炎が噴き出した!
ゴォォォォっ!
激しい音と光が通過すると、そこにはなにも残っていなかった。
「やった――のか?」
倒れたまま、闘いを見ていた金髪の少女がそう声に出す。
「あ、それ言っちゃダメなヤツだって」
「むっ――」
白髪の女ダークエルフはオレの気配を感じ取ったようで、顔だけ後方に向けた。
「いやぁ、今のはさすがに危なかった。ねえ、それって魔法? あ、拳技というヤツかな?」
へえ。人間って、こんなエネルギー塊も出せるんだぁ。この世界の達人はスゴいなぁ。
「おぬし、どうやって躱した?」
驚愕の表情でオレを見る。いや、オレの質問は?
まあ、オレも彼の質問に答えないのだけど――というか、どう説明してイイのかわからなかった。
使ったスキルは『空間操作』。崑蟲王のおじいさんが、オレを森へ返した時に使っていた――あの技だ。おじいさんは遠い距離までこのスキルを利用して、オレを送ってくれたのだけど――
自分でも試してみたのだが、どうやっても、自分の視界以外の場所には移動できなかった。なので、移動手段としては使い物にならなかったのだが、このように相手の攻撃を躱す方法として有効だと気づいた。
もし、空間操作で回避していなかったら――あれだけのエネルギー塊である。死なないまでも、かなりのダメージを食らっていたはずだ。いやあ、助かった。
オレはダークエルフの首に腕を巻き込み、ヘッドロックのやり方で絞める。
彼女は、「ぐぐぐ……」と唸ったあと、ぐったりした。そのまま、地面に崩れ落ちる。
「く、くそ……」
そうつぶやきながら、金髪の少女がよろけながら立ち上がる。そのままこちらに向かってきた。
おいおい、もう勝負はついているぞ。まさか、まだヤルつもりじゃないよな?
だが、彼女は思ってもいない行動に出た。
剣を地べたに落とすと、いきなり土下座をするのだ!
「おみそれしました! どうか、われわれを仲間に加えてください!」
「――へっ?」




